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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第三章 五道家
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五道本家へ──出会ってしまった、空也たちの“母”

幸福屋から車で走ること一時間。

たどり着いたのは、都内の一等地に建つ、立派な平屋造りの日本家屋だった。


車を降りた瞬間、思わず口が開く。


(……旅館かよ、ここ)


広い敷地。手入れの行き届いた庭。

ただ者ではない雰囲気が漂っている。


「──あ、ごめん。ちょっと良いかな?」


五道哲真がそう言うと、俺の頭の上・肩・腰・足元に指を鳴らす。


「よし、これで空也の張った結界が消えた。……さぁ、入りたまえ」


そう言って、旅館のような大きな玄関を開いた。


パタパタと軽い足音が奥から響き、ひとりの綺麗な女性が姿を見せた。


「哲真さん、おかえりなさい」


「あぁ、ただいま。陽菜」


女性は五道哲真の上着を丁寧に脱がせ、そのまま腕に抱える。

その仕草も声も、驚くほど柔らかい。


俺は思わず顔を見つめた。


色白で細身。線の細い、儚げなほど綺麗な女性。

とても三人の子供を産んだ母親には見えない。

というより、芸能人より綺麗じゃないか。


(……さすが、あの空也と姫華ちゃんの母親)


ガン見してしまった俺に気付いたのか、彼女は微笑み、


「あら? お客様?」


問いかけると、哲真を見上げる。


「あぁ。例の──桜子が失恋した相手だ」


「まぁ、あの噂の?」


陽菜さんは驚いたように俺を見つめ、


「まぁまぁ、本当に可愛らしいお方ですわね」


と、手を口元に添えて微笑んだ。


「初めまして。私は桜子の母、陽菜と申します」


上品で、柔らかくて──

空也と姫華ちゃんが「これでいいんだ」と言っていた理由が、なんとなく分かった。


記憶がどうであれ、この女性は“今”哲真を心から愛している。

見つめ合う目も、並んで立つ姿も、仲睦まじい夫婦そのものだ。


(……この姿、あの二人はどんな気持ちで見てきたんだろう)


胸が少し痛む。


その時、奥から少年が現れた。

どことなく空也に似た、好青年といった雰囲気の少年だ。


「父様、おかえりなさいませ。……朝からお客様ですか?」


学生服姿。ちょうど通学前らしい。


「あぁ。彼は小林青夜君だ。お前の兄になるかもしれない人だよ」


「えぇ!?」


思わず叫んでしまった俺とは対照的に、少年は柔らかく微笑んだ。


「やはりそうでしたか。桜子姉様の好みの方だと思っておりました。それに──とても素晴らしい“陽の気質”をお持ちですね」


さらりと言い、軽く会釈した。


「小林様。桜子姉様をよろしくお願いいたします。

それでは、僕は学校がありますので……またお会いできたら嬉しいです」


にっこり笑った顔は、どこか姫華ちゃんにも似ている。


(……彼が龍真か)


そんなことを思いながら少年を見送ると、


「青夜君、こっちだよ」


と、哲真が再び歩き出した。


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