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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第二章 幸福屋での日々
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友達から地獄が始まった

『PiPiPiPi』


スマホに手を伸ばし、アラームを止める。


……本日も、相変わらず背後から俺を羽交い締めしている男がいる。


ただ、あの日──五道桜子さんが来て以来、生活にひとつ“重大な変化”があった。


桜子さんは有言実行タイプらしく、翌日の朝いちばんに 釣書(=身上書) を持って現れた。そしてキラキラした目で改めて交際を申し込まれたのだ。


初めてあそこまでグイグイ来られた俺が戸惑っていると、


「じゃあ、とりあえず《友達》からでもどうかしら?」


と言われ、つい


「友達なら……」


と答えてしまったのが運の尽き。


それ以来──

空也の“俺への執着”が、加速度的におかしくなった。


今までは背後から羽交い締めして寝ているだけだったので、マキちゃんを呼び出せば強制解除できた。だが、桜子さんと友達になると決まった翌日から、こいつは本気を出してきた。


何処に行くにも、


「どこ行く?」

「何時に帰る?」


と聞いてくるし、ひどいときにはついて来ようとする。


(お前は“重い彼女”か!)


我慢できず文句を言ったら──


「はぁ? 桜子と《友達》から付き合うんだろう?

お前の選択肢は二つだ。

俺の相棒になって自由に動くか、桜子と結婚して五道家に監禁されるか。」


などと言い出した。


「五道家も空也も関係なく、自由がいいかなぁ……」


とぼそりと呟くと、


「はぁ!? 桜子と《友達》から付き合うんだろうが!

お前の選択肢は、俺の相棒になるか五道家に幽閉されるかの二択だ!」


と、謎の圧を上書きされて頭を抱えた。


正直、桜子さんは美人だしスタイルも良い。

男としては、あんな完璧な女性と付き合えるのは名誉なのかもしれない。


……が、俺には無理だ。


あんな“完璧オブ完璧”な美女の隣を歩くなんて、凡人以下の俺にはハードルが高すぎる。


「えぇ! 俺、“付き合う”なんて言ってないよ!」


「《友達から》始めましょうって言われてただろうが!」


そう言われ、確かに「友達なら」とは答えたが……

絶対に“恋人”とは言っていない。


「はぁ? そんな理屈、五道家に通用するわけねーだろ?

いい加減、五道家の思考回路を学べよな」


呆れ顔で言われても、ついこの間まで普通の社会人だった俺にどうしろというのか。


陽の気質を持つとか、人を幸せに導く力とか……

正直いまだに信じられない。


「はぁ……」


深いため息を落とした瞬間、リビングでタマがテレビを観ている後ろ姿が見えた。


「え? 猫もテレビ観るんだ……」


つぶやくと、


「タマ? タマは昨日見逃したテレビ、録画で観てるみたいね」


と、姫華ちゃんが味噌汁とご飯を運んできてくれた。


「へぇ〜。そんなにお気に入りの番組があるんだ」


そう言いながら味噌汁を口にした瞬間──

テレビから聞こえてきた。


『は~い』

『わぁ、い◯らちゃんです~』


毎週日曜18:30の、あの国民的アニメの声。


ブッッ!!


盛大に味噌汁を噴き出し──

真正面に座っていた空也の顔面に、直撃した。


「……おい」


低い声が震えている。


「ご、ご、ご、ご、ごめん!!」


俺が慌てて謝ると、姫華ちゃんが急いでタオルを渡していた。


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