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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第二章 幸福屋での日々
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語られざる母の真実と、五道家の闇

俺はその言葉を聞いて、喉まで出かかった

「じゃあ、お前たちの気持ちはどうなるんだよ!」

という一言を飲み込んだ。


 それは──部外者の俺が軽々しく言ってはいけない気がしたからだ。


 黙っていると、マキちゃんがぽつりと呟いた。


「まぁさ、あの桜子の父親ってだけはあるわよね~」


 唐突な一言に、俺は思わず目を丸くした。


「え?」


「あ、ごめん。言ってなかったわよね。桜子って、兄さんの“前の奥さん”との子なのよ。

兄さんの子供は二人いて、一人が桜子。もう一人が──空也たちとは異父兄弟の龍真」


 情報量が多すぎて、俺の脳は一瞬でパンクした。


「え……?」


 混乱している俺をよそに、マキちゃんは続ける。


「勘違いしないでね。桜子の母親とは、桜子を産んで間もなく離婚してるの。

別に陽菜さんと出会ったから別れたわけじゃないのよ」


 そして、ため息まじりに言った。


「桜子の母親、ものすごい美人だったんだけど……性格が最悪でさ。自己中で派手で、金遣いも荒くてね。

兄さんと結婚したのも、結局は“お金目当て”だったのよ」


「……そうなんですね」


 うなずきながらも、なんとも言えない気持ちになる。


「だからむしろ、陽菜さんが来てからの方が、桜子は幸せそうよ」


 マキちゃんはそう言ったが、それがどれほど複雑な事情による幸せなのか、俺にはまだ分からなかった。


「俺たちは別に、母親が居なくて不幸だとは思ってないぞ。

ここでの生活も気に入ってるしな」


 空也は淡々とそう言った。


 その言葉をどう受け止めればいいのか迷っていると、姫華ちゃんが静かに続けた。


「ママはね、パパと一緒にいた頃より、今の方が幸せそうなの。

パパがいつか死んじゃうんじゃないかって、ずっと泣いてたから……」


 その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。


「でも……雪夜は陽菜さんを失って、正気を失ったのよ。

あれだけ強くても、心は……そんなに強くなかったの」


 大きな力を持つほど、孤独は深くなる──そう言われているように感じた。


「そんな中で、空也と姫華ちゃんはどうしてたの?」


 俺がそう聞くと、空也は淡々と答えた。


「五道家は広い屋敷でさ。お手伝いさんもいたから、生活自体は困らなかった。

……むしろ、色々あった後で、屋敷から離れられて良かったと思ってる」


 その表情は感情が読めない。

 だけど──その無表情が、逆に痛かった。


「そうね、私も今の暮らしのほうが好き。

近くにマキちゃんがいて、お兄がいて……そして今は、青ちゃんもいる」


 姫華ちゃんはぱっと笑って、俺の背中をバシバシ叩いた。


「だから、そんな悲しい顔しないで」


 優しい笑顔だった。


 そして俺は気付いてしまった。


──五道家で“陽の気質”がどれほど貴重で、危険なものなのか。


 そして同時に、ふと思う。


(……マキちゃんが女として生きてる理由って、もしかして)


 争いを避けるためなんじゃないだろうか。


 陽の気質の男性で、それも直系の家族だったなら……

狙われるのは容易に想像できる。


 そう考えた瞬間、背筋がひやりとした。


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