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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第二章 幸福屋での日々
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マキちゃん暴走と五道家の闇

呆れ顔の俺を完全にスルーして、マキちゃんはハンカチを取り出し、


「神様って、どこまでもアタシに意地悪なのよ!」


と言いながら泣き始めた。


「えっと……?」


どうしていいか分からず固まっていると、姫華ちゃんが顔色ひとつ変えずに、


「パパの話をすると、マキちゃんはいつもこうなるの。気にしないで」


と、お茶をすすりながら言う。


「マキ、泣いてねぇで話を進めろ!」


俺の背後から空也の声が飛ぶと、


「雪夜だったら、もっと優しく言ってくれたのに……」


と、マキちゃんは嗚咽まじりに訴える。

空也は『うっぜぇ』という顔を隠しもしない。


「マキちゃんは、その雪夜さんって人が……大切だったんだね」


ほんの少し慰めたつもりのこの一言が──命取りだった。


「あっ……バカ……」


小さく呟く姫華ちゃんと空也の声が聞こえた次の瞬間、俺は地獄を見ることになった。


そこからの一時間。


どれほど雪夜という男が素晴らしく、

どれほどマキちゃんが彼を愛していたか──

延々と続く 雪夜大講義 が開幕したのだ。


途中で姫華ちゃんはお菓子を持ってきてくれたり、

空也に至っては俺たちの後ろで寝落ちしていた。


……まぁ、おかげで

五道家にとって雪夜さんがどれほど重要な存在だったかは理解できた。


ただ、不思議なのは──


二人の「母親」の話がまったく出てこないことだった。


どんな事情があろうと、普通なら少しは触れるはずだ。

しかもマキちゃんの語り口からすると、“意図的に避けている” でもなさそうだ。


雪夜語りを一通り終えて満足したマキちゃんへ、俺は恐る恐る手を上げた。


「あの……ひとつ質問しても?」


「え? なに? もっとアタシと雪夜の切なく悲しい恋の話、聞きたいの?」


目を輝かせるマキちゃん。


「いや、それはもう充分……じゃなくて。

話したくないならいいんだけど……二人の母親って、会ったことないの?」


その瞬間、マキちゃんはぴたりと動きを止め──氷のように固まった。


(あ、絶対触れちゃダメなやつだっただろこれ)


「やっぱり今の無し──」


言いかけた俺の言葉を遮って、空也がぽつりと言う。


「こんだけ親父の話を聞かされたら、そりゃ疑問も出るよな」


そして淡々と続けた。


「五道家の人間は、“お袋”に会ったことがなかったんだ」


「会ったことが……ない?」


「ああ。桜子がお前に飛びつきかけた反応、見たよな?

五道家は“陽の気質”に飢えてる。

そんな相手が現れたら、奪い合いになって血の雨が降るレベルだ」


内容は重いのに、空也の口調はいつも通り淡々としている。


「能力が強い者ほど、陽の気質を必要とする。

だから親父は、お袋と出会って結婚するまで──その存在を徹底的に隠していた」


そして、ふっと遠くを見るような目で続けた。


「……まあ、結局。

マキの兄貴である五道哲真が、親父とお袋の居場所を突き止めちまったんだけどな」

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