五道家の宿命と“相棒”の意味
「そ……そうなんだ」
俺が微妙な顔で相槌を打つと、マキちゃんは真剣な目で身を乗り出してきた。
「この話はね、青ちゃんにも関わる大事なことなの。
恥ずかしがらずに、ちゃんと聞いて」
その圧に、思わず背筋が伸びる。
「私たち五道家の一族には、生まれながらに“運命の番“という存在がいるの。
一生に一度出会えるかどうかで、出会った瞬間に分かる相手……らしいわ。
まぁ、私は出会えなかった側なんだけどね」
マキちゃんは冗談めかして笑ったが、その笑みはどこか寂しげだった。
「能力が強ければ強いほど、運命の番は分かりやすいの。
だから空也は、青ちゃんを見た瞬間“自分の相棒だ”と気付いたのよ」
「え、俺……?」
「男同士の場合は“番”じゃなくて“相棒”ね。
運命の番はね、そばにいるだけで自然と“陰の気質の穢れ”を浄化するの。
昔は男女の番が多かったけど、陽の気質が減った影響で、番の在り方も変化していったみたいね」
その説明は不思議だったけれど、腑に落ちるところもあった。
マキちゃんは、姫華ちゃんが淹れたお茶をひと口飲んで続ける。
「アタシは五道家では珍しい“陽の気質”。
当時の相棒だった人はね、五道家でも群を抜く強い能力を持っていて……
私なんか必要ないくらい、なんでも一人でこなしてしまう人だったわ」
語る声は懐かしさと痛みが入り混じっていた。
「次期当主になるはずの人だったのに……
彼は“運命の番”に出会ってしまったの。
その相手と生きるために五道家を捨てて、私とのコンビも解消して……
そのまま姿を消した」
言葉は淡々としていたけれど、その奥に深い感情があった。
「再会した時には……もう冷たくなっていたわ」
静かに落とされた一言は胸に刺さった。
「だからね。彼の忘れ形見である空也と姫華に会った時、
“この子たちを育てよう”って……母親になろうって決めたの」
強く握った拳とは対照的に、目元はどこか優しかった。
その流れで、俺はつい口を滑らせた。
「え? そこは父親じゃないの?」
するとマキちゃんはテーブルをドンッと叩き、
「はぁ!? 雪夜の代わりなんて、アタシにできるわけないでしょう!
私は雪夜の“番”になりたかったのよ!
だから母親なの!」
力説してくる。
……うん、分かるような分からないような。
「だから、その日から“女”として生きるって決めたのよ」
その言葉は妙に誇らしげで、まっすぐだった。
俺がしんみりしていると──
「ただ……まさか空也が雪夜そっくりに育つなんてね……」
マキちゃんは嘆きのため息を落とした。
「そりゃ親子だし、似るのは分かるわよ?
でもさ、生き写しレベルってある?
それなのに性格は真逆なの! ひどくない!?
空也も雪夜みたいにアタシに優しくするべきだと思うの!
なんなら恋人になってくれても良いのに!」
……真顔で言われても困る。
ここまで胸が痛くなった俺の感情、返して欲しいんだけど。




