逆プロポーズは突然に。しかも本家の美女から。
俺が苦笑いしていると、桜子さんは空也の胸ぐらを掴んだまま、
「まだ、あんたの相棒になったわけじゃないのよね?」
と言い、深呼吸してから俺の前に来て——
「私のお婿さんに来て下さい!」
と、手を差し出してきた。
(えぇ!! 初対面で逆プロポーズ!?)
目を丸くして固まる俺。その背後から、いつの間にか空也が近付き、俺の身体を抱き寄せると、桜子さんの手を弾き落として叫んだ。
「断る! こいつは俺の相棒だ!」
(は? 相棒? テレビドラマの話??
いや見てたけどさ、なんだよこの展開!!)
俺が混乱している間にも、二人の言い争いは続く。
「ちょっと! 空也には聞いてないわよ!」
「はぁ? 俺の相棒にちょっかい出すなって言ってるんだよ!」
「あんたじゃ“番”になれないじゃない! だったら私にもワンチャンあるでしょ!」
「ねぇよ!」
……なんなんだ? この人たちは。
俺の意思は? 無視??
と思っていたその時。
「こいつは俺の相棒なんだ! 俺以外なんてあり得ない!」
そう叫ぶ空也に、桜子さんは眉を吊り上げて反論した。
「空也! それを決めるのは彼でしょう!」
ようやく俺の順番が回ってきたらしい。
俺はおそるおそる右手を挙げて、
「あの……あなたのような綺麗な人に言って頂けるのは嬉しいんですが、今日出会ったばかりですし……」
と呟くと、桜子さんは一瞬だけ目を見開き——真剣な顔で頷いた。
「……わかりました。確かにそうですね。私は大丈夫でも、あなたには心の準備が必要ですものね。
では、私の“釣書”を持参します」
「え?」
状況を飲み込めない俺を置き去りにして、桜子さんは立ち上がる。
「そうと決まったら時間が勿体ないわ。明日また来るから」
そう言うと、俺の手をぎゅっと握ってから、
「では、明日」
と去っていった。本当に嵐のように。
呆然と立ち尽くしている俺に——
「ちょっと! 青ちゃんどうするつもり!?」
マキちゃんが顔を近付けてきた。顔圧が近い。怖い。
「な、何が?」
「明日のことよ! 桜子、あの様子だと本気で釣書を持って来るわよ!」
「釣書?」
聞き馴染みのない言葉に首を傾げる俺へ、マキちゃんは信じられないものを見る目で言った。
「あんた……釣書知らないの?
お見合いで相手に渡す“結婚用の身上書”よ!」
「へぇ〜……」
と頷いてから、三秒後に理解が追いついた。
「えぇぇぇ!!?」
叫ぶ俺に、マキちゃんは肩をすくめて言う。
「だから言ったでしょ。あんた、五道家の血筋に好かれるタイプなのよ」
その言葉を聞いて、俺は空也と姫華ちゃんの顔を見る。
「え? でも空也や姫華ちゃんは“五道家”じゃないんだろ?」
するとマキちゃんは「あ!」と声を上げ、
手で口元を隠しながらおばさんみたいに手をパタパタさせた。
「そうだった! 青ちゃん、私達のこと何も説明してなかったんだった!
あんた、すぐ馴染むから前から居たみたいな感じなのよね〜」
そう言うと、
「どうせ明日、桜子が来たら全部バレちゃうんだし、その前に本家や裏稼業のこと、全部話しておくわね」
マキちゃんは姫華ちゃんにお茶を頼み、
俺たちはテーブルにつくことになった。




