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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第一章 出会いは一匹の猫からだった
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運命の相手が“男”と言われた日

『あなたは……人を幸せにする力を持っています』


 それは、ある日ふいに街角の胡散臭い占い師に呼び止められて言われた言葉だった。

以来、人生の節目になると決まって“胡散臭い占い師”に捕まり、そのたびに同じことを告げられる。


 そして今。俺はまたしても占い師のババアに腕を掴まれていた。


「無料で見てやるよ」


 一方的にそう言われ、半ば強制的に占われている最中である。


 よりによって、人生最大の不幸の真っ只中に。


 新卒で入った会社はブラックで、毎日が残業地獄。

同期に『お前の部署に飛ばされたら辞めるわ』と言われるほどの激務部署に配属され、息つく暇もなかった。

嫌気がさして転職すること三回。なぜか毎回“その会社で一番忙しい部署”に配属され、気付けばいつも社畜ポジションに就いていた。


 しかも不思議なことに、俺が入社すると会社の業績が急に伸びる。

最後の会社なんてテレビ取材が来るまでになったほどだ。


(……だから俺の仕事量も増えるわけだけど)


 そんな最悪続きの日々の中、親友が店を始めることになり、手伝いを頼まれた。

仕事終わりに顔を出したり、チラシ作りやHP開設を手伝ったり、俺なりに出来る限り協力した。


 店は順調に伸び、開店一ヶ月であちこちのメディアで取り上げられるほどになった。


 ──が。

売上が伸びるほど、親友の俺への態度は冷たく変わっていった。


 そして決定的だったのは、珍しく早上がりできた日に彼女の家へ行った時だ。

扉を開けた俺が目にしたのは……親友と彼女の“真っ最中”の姿。


 後日、その彼女は俺にこう告げた。


「あんたよりスペックの高い男と付き合いたいの。今、モテ期でさ~。あんたみたいなうだつの上がらない男より、結婚相手にふさわしい男が良いのよ」


 その一言で、俺は彼女と、親友と、職を同時に失うことになった。


 いつもそうだ。

俺と関わった連中は、決まって急に運気が上がり、俺を置いて去っていく。

彼女らに至っては、みんな口を揃えて「モテ期が来た」と言って俺を捨てた。


 ──捨てられるのは、いつだって俺だ。


 そんな最低最悪の日に、俺は例の占い師ババアに捕まっていた。


『ほら、この線が俗に言う“アゲマン線”だよ。あんた男だからアゲチンか』


 セクハラを華麗にスルーしていると、ババアは続ける。


『あんたが店に入ると、客が急に押し寄せるだろう?』


 思わず考える。

だが、不味い店に客が増えたことはない。

美味い店でたまたま客足が悪い日に行くと、確かにその直後に客が増えることはあるが……偶然だ。


『いいかい。あんたは人を幸せにする力を持ってる。だけどね、不味い店みたいに“幸せを生まない場所”までは救わないよ』


心を読まれたみたいで背筋が伸びる。


『ただし、あんたの力で幸せになったなんて、誰も気付かない。みんな“自分の力”だと思いたいからね。そこで、その人の本性が現れるのさ』


「本性?」


『そうさ。幸運の絶頂期にこそ、その人間が分かるもんだよ。あんたに変わらず接する人が、本当にあんたを大切にしてる人だろうね』


 ババアはしみじみと俺を見て、ぽつりと告げた。


『あぁ……あんた、もうじき“運命の出会い”ってやつをするね』


「運命の出会い!?」


 思わず前のめりになる俺。しかし──


『あんたの運命を変えてくれる男だよ』


「男……」


(可愛い女性じゃないのかよ……)


 落胆する俺に、ババアは笑って言った。


『運命の相手ってのはね、結婚相手とは限らない。人生を大きく変える人間のことさ』


 俺は肩を竦めて席を立った。


(運命の出会い、ねぇ……)


 胡散臭すぎる占いを終え、俺は雑踏の中へ消えていった。


おはようございます。

『銀子』とはまた違う雰囲気の、新しい物語のスタートです。

楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。


次回更新は 20時 を予定しています。

ぜひお付き合いください。


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