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88、秒速340メートル

 この砂漠都市には、冒険者があまり来ない。そしてここに住む者も、外へ旅立つ者はほとんどいない。そしてここでは、「子供にはより良い能力を遺伝させる」という意識が残っている。だから、ある物事において能力が群を抜く場合、婚約を申し込まれやすいのだ。より優れた能力を備えた子供は、いつか名家と結ばれるかもしれない。そうすれば、自分の立場も上がる。そんな考えだ。

 外をあまり知らない彼らにとって、冒険者は貴重な存在。ここまでたどり着いただけで複数人の目に留まるだろう。最近は冒険者が増加傾向にあり、基準も上がっているらしいが。


「へえ…。」

「だから俺と…!」

「無理です。」

 私がそう言うと、また別の人が話しかけてくる。流石に疲れてきたなと思っていると、アレンが近くの店に連れて行ってくれた。

 入り口はなく、中はツルツルとした石の床で、最近、新しく張り替えたようだ。一休みすることに。店員さんのおすすめのマンゴーフロートとパンケーキを待つ。カウンターでは店主が料理を始めている。黒く日焼けした、朗らかな人だ。

「お嬢ちゃんたちは、冒険者かい?」

「はい!」

「その格好、暑くないか?隣の店で借りられるぞ。」

「そうなんですか!?」

「ああ。たまに来る冒険者用にな。」

 行ってみたい。着てみたい。実は少し気になっていたのだ。ラルクの顔を伺ってみると、快く許可が出た。料理を待つ間、隣の店へ移動する。

 こちらはカラフルな店内で、男性服も女性服も扱っている様だった。お金はかかるが、店内のどれでも借りていいらしい。ちなみにその店の店員にもラルクは懐かれていた。

「勇者様でしたら、こちらがおすすめかと…ああ、でも待って。最近の流行からすると…。」

「ラルク、この色似合うんじゃない?」

「そうだねモニカ!」

「即答かよ。じゃあ俺はこれで。」

 

 肩が隠れるような白いトップスに、薄水色のロングスカート。スカート自体いつも履かないので、なんだか少し落ち着かない。全体的に生地が薄く、借りた靴もサンダルだ。そして、胸下から上腹部辺りが空いている。恥ずかしいような気もしたが、こんなもんかと言い聞かせた。

「どうかな〜。」

「…スカートだ。ウエストほっそ…。俺はもっと肉があった方が好みかな。」

「好みは聞いてないの。」

「モニカ、なんか露出度高くない?大丈夫?」

「お前は父親か。たかだか8センチだろ。」

 その8センチが怖いんだよ、と異論を唱えるラルクを後にしてレジへ。もしかしてこれを着ていれば、そんなに目立たないのでは…!?と思っていると、店の外からこちらを覗き込む人混みが。そんなことは起きないようだ。

 店を出ると再び暑さが襲うが、前の服よりは平気だ。荷物は預かりシステムもあったが、アレンが自分たちで持っていた方がいいと言って、宿が見つかるまで持つことに。

「やっぱ布が薄いんじゃ…。」

「ざっと見積もって Bだな。」

孤月(こげつ)!」

「冗談だって!」

「そういえばさ、さっきの話聞いてずっと疑問だったんだけど、赤ちゃんって結婚しないとできないんじゃないの?コウノトリがピューっと運んで…みたいな。」

「はぁ?世界中のコウノトリが過労死するだろ。」

「あ、そっか。え?じゃあどうやって…。ラルク知ってる?」

「どうだろうね…。」

「お前、そんなことも知らねえのか?子供だな。」

「じゃあアレンは知ってるの?知らないんじゃないの〜?」

 けどアレンの態度は変わらず、どうやら本当に知っているようだ。せっかくだし素直に聞いてみると、なぜか声のトーンが少し落ちる。


 そして10分後、パンケーキの到着と共にアレンの話は終わり。私はひとりで混乱していた。信じられない。けど、それなら納得できる。けど信じられない!

「…ラルク、カイたちと会う少し前に言ったこと、覚えてる?」

「うん、残念ながら。」

「あぁ…恥ずかしさで死にそう…。」

「パンケーキ俺が全部食べるぞー。」

 パンケーキなんて食べている場合じゃない。恥ずかしさに溺れながら、私は机でジタバタともがいていた。キュニーだけが、なにひとつ構わず、アレンから受け取ったパンケーキのかけらに夢中になっていた。

キュニー 「キュ〜。」

モニカ 「死にそう…。」

ラルク 「頑張って〜。」

アレン 「今なら勝てるんじゃ…!?」

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― 新着の感想 ―
砂漠の街は極限環境なのもあってか、強い冒険者がモテモテなようですね。 モニカが人気になってしまうとラルクは嫉妬するのでしょうが、 ラルクが人気になっても、モニカは嫉妬してくれなそうですね。 アレンが、…
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