77、こんなつもりじゃなかったんですよぉ?
「…モニカ、大丈夫かな。」
「ラルク、それ1分前に聞いたぞ。」
「だって心配じゃん。」
「お前は理由分かったのか?」
「…なんとなく。」
「なになにー?」
結局1番の理由は、心配。あんな環境に毎日さらされているミミが不安で、いつかいなくなるのが怖くて、目を合わせられない。そして腹黒い女性のイメージがこびりついているから、モニカにも目を合わせられない。
「お前…つくづくいいやつだな。」
「ありがとうございます…?」
「メノウも優しいよ!」
「はいはい。」
ギャーギャーと騒ぐ2人を引き連れて、中央街を進んでいく。
「お兄さんたち、ちょっとうちの店寄っていかない?」
「すみません、興味がないので。」
「俺らもパスで。」
やっぱりモニカがいないだけで勧誘の量が一気に増える。このためにもモニカは一緒にいてほしかった。
「レアルスにはエマがいるもんね。」
「そうそう…ってなんで知ってんだよ!」
「あ、本当にそうだったんだ。」
「お前…!」
ギャーギャー騒ぐのが1人増えたところで勧誘は止まらず、むしろかえって目立っているようだった。
モニカ、大丈夫かな。
♢♢♢
「大丈夫なわけないよぉ!だってこんなの…初めて持ったし…!」
そう言ってミミちゃんは杖を持ち上げる。先ほど私が魔法店で買ってきたのだ。と言っても、至ってシンプルな安いやつ。
「はいはい。それじゃあ、目を閉じて…。」
「うん…。」
手を重ね、意識を潜り込ませる。ミミちゃんの中へ。胸あたりにピカピカと光る箱がある。そこを私が開けると、中からキラキラと何かがこぼれ落ちた。
「はい、リピートアフターミー。満ちる玉桂。」
「満ちる玉桂。」
…なにが起きているか分からないな。だが、部屋の明かりを消すと、それは確かに存在していた。
「明るい…。」
まあるい光の玉が浮いている。思ったより大きいな。そして明るさも強い。
「ミミちゃん。あなたは魔物に狙われやすいタイプだ!」
「そう。だからよく迷惑かけちゃって…。ここは安全なんだけどねぇ〜。」
これなら魔力を育てる必要はないな。あとは魔力切れを起こさないように管理できれば…。
するといきなり扉が開かれる。支配人さんだ。
「おい、もう閉場時間は過ぎてるぞ!」
「すみませんっ!舞台の練習をしていて…。」
「あの!今度の舞台でミミちゃんを出させてください!」
「新入りがなにを言っているんだ。」
「もし稼げなかった場合は、私をどうぞ好きに使って構いません。」
「モニカちゃん!?」
「…ほう。ならいいだろう。ただし明日だ。明日までに仕上げろ。」
「はい!」
「えぇ…?」
ここまで言わないと、きっとこの人は動かない。これでいい。支配人さんの背中が小さくなった頃、ミミちゃんが私に詰め寄った。
「モニカちゃん、なにを言ったか分かってるの?ここはそんなに甘くない。なにをされるか」
「けど、そのくらいミミちゃんを信じているの。」
「…なにそれ…私頼みじゃん。ほら、次はなにするの?早く覚えないと。」
「…で、なんで俺らがこんな状況になってんだ!?」
夜中の1時、劇場のバックヤードではレアルスがパーツ片手に叫んでいた。
「仕方ないでしょ。明日なんだもん。ほら頑張って〜。」
レアルスとソウは接着剤でパーツ作り。カイとメノウは髪飾りパーツの色塗り。私とラルクは衣装の修繕を行っていた。ちなみにミミちゃんは舞台で練習中。
「できたー!」
「おー!…なんかリアルだね。」
「本物があるからな。」
「じゃあ寝る!おやすみー!」
爆速でメノウが寝たところで、手が暇になったカイにレアルスたちのパーツを渡す。案外地道な作業も好きなのかもしれない。
私とラルクの修繕作業も終盤に差し掛かっていた。私はお父さんに。ラルクは引き取られた家の人に裁縫を教えてもらったのだ。
段々と、公演時間が近づく。
レアルス 「メノウ、寝るの早すぎだろ。」
ラルク 「カイに似たね。」
カイ 「あぁ?」
ソウ 「治安悪くないですか…?」
モニカ 「通常運転でーす。」




