76、おかえりくださいませぇ〜
ミミちゃんは不思議。すごく可愛くて、どんな話にもリアクションして、サンドイッチもとても美味しそうに食べる。けど、なんだか壁がある。私たちとミミちゃんは、それによって隔たれている気がしてならない。なんとかして近づきたい。ソウの女性克服もそうだけど、私はミミちゃんと仲良くしてみたい。
「ミミちゃんは、このあと予定ある?」
「はい。劇場で、いろいろと…。」
「そっか。私もついて行っていい?」
「…え?」
「モニカ!?」
「なに言ってんだ。」
「また突拍子もない言動が出たぞ〜。」
「メノウも行くー!」
「メノウちゃんには早いかと…。」
仲良くするには、まずは相手を知るところから。まずは一緒に働いてみるのがいいだろう。そうすればソウの原因も分かるかもしれないし。
少し考えてから、ミミちゃんは了承してくれた。あとはこちら側だけ。特にラルクだ。
「ねえ、ラルク。おねがい!ダメかなぁ…?」
「…許したいけど、でもなー…。」
「ミミちゃんとずっと一緒にいるようにするから!」
この構図、まるで母と子。メノウってこんな気持ちだったのかなと考えながら、レアルスやソウに視線を送る。できるだけ鋭く。
「ミミちゃんがいるなら、大丈夫かと思いますけどね…?」
「俺もそう思うぜ!」
うわずりながらも応援する声が。ラルクも悩んだ末、分かったと言ってくれた。感謝しながら手を握ってやると、強く握り返される。このくらいで喜んでくれるなんて、いくらでも握ってやろうかな。
「ってことだから、よろしくねっ!」
「はい。」
「敬語やめてよ!たぶんミミちゃんの方が年上だし。」
「…分かったぁ。」
そして私たちは、劇場のバックヤードへ向かうのだった。
「ミミちゃんの紹介で、お世話になります!モニカです!」
まずは色々なところで挨拶。ほとんど誰にも相手にされない。これも日常なのかな。
「お仕事は、自分から探しにいくんだよぉ〜。ほら。」
「そこの雑用さん。新しいタオル。」
「あ、はい!」
「これに水入れといて。」
「私も!」
「私もおねがい。」
「はい!」
一気に大量のボトルが。カゴに詰めて、水道へ持っていく。いつもこれを1人でミミちゃんは行ってるのかな。水を入れている間にも、仕事は止まらない。掃除をして、道具を運んで、器具のメンテナンスをして…。
そして、私が器具を運び終わり、ミミちゃんに合流しようとした時だ。ミミちゃんは衣装の整理や洗濯を行っていたはず。笑い声が聞こえ、ドアの隙間から覗いてみると、そこにはずぶ濡れになったミミちゃんがいた。手には衣装が。きっと、整理の途中だったんだ。
「ちょっと舞台出たからって、調子乗んないでよ!」
「…乗ってないですよぉ。」
「あんたのその態度が気に食わないって言ってんの。」
「そうですかぁ。」
「もういいよ。髪でも切れば目が覚めるんじゃない?」
そう言って、誰かがハサミを取り出した。ミミちゃんが危ない。飛び出そうとした、が。
「えぇ〜ありがとうございますぅ。最近お客さんに、ショートカットも似合うんじゃないって言われててぇ〜。」
「…なにそれ。面白くない子。」
「努力しまぁーす。」
結局、何もされずに3人組は去っていった。少し隠れて様子を伺ったあと、部屋に入ると、ミミちゃんは何食わぬ顔で作業を続けている。
「ミミちゃん…。」
「いいの、慣れてるから。いつかあの人たちよりも売れて、見返してやるんだぁ〜。」
救ってあげたい。きっと今まで、たくさん悲しい想いをしてきたはず。なんとなく、ソウの理由が見えてきた。
「私が、あなたを主役にしてあげる!」
このままじゃ、終われない。
「モニカちゃん、舞台経験ないんでしょぉ〜?」
「でも、一度だけ私を信じて。」
タオルを渡し、赤い瞳が向くのを待つ。少し時間が経って、タオルは受け取られた。
「…話だけ聞いてあげる。」
ミミ (変な子。どうせ変わらないのに。)
モニカ (ミミちゃんの力になれたら…!)




