55、溶けたトゥモローはショータイム
皿に目玉焼き、煮豆、マッシュルーム、トマト、ベーコン、ソーセージがひしめき合う。トーストと紅茶も用意され、朝からしっかりお腹を満たせるメニュー。元々フェイスフィアは衛生環境が課題であった背景もあり、すべての食品に火が通っている。今は直っているが、かなり長い時間がかかった。
「あ、このベーコンうめえ。」
「ほんとだ!」
「おまえベーコン食べれたのかよ。」
「なんか美味しさが分かるようになった!」
見た目だけが変わったのかと思っていたけど、味覚も変わっていたようで、メノウがカイの肉類をすべて奪ってしまう。けどやっぱり生肉が1番美味しいらしい。トーストを食べさせるも、すごい顔をしている。よっぽどまずいのだろう。
「今日はどこから行く?」
「…とりあえず、エマとリリィに会いに行こうかな。まあ、どこにいるか知らないんだけど。」
「モニカよりは簡単な人探しだな。」
窓の外に目をやると、やはり魔法使いや僧侶が多く、さっきも魔導書専門店や魔道具専門店、魔法生物店を見かけた。
それにしてもさっきから、冒険者たちが一定の方向に向かって歩いている。僕らも逆流しながらこの店に入ったのだ。
「あっちになにかあるのかもな。」
「なんだろう。魔法使い管理局かな。」
「あ!そういえばおまえさ、魔法使い検定の4級取れるぞ。」
「は?誰が魔法使いだ。」
リリィに教えてもらった知識を、あたかも自分のもののようにカイに教え、やっぱり本当なのか疑われる。ちなみにメノウは魔物扱いなので、受けることはできない。
「もし落ちたら、なにか奢ってやるよ。」
そこまでリリィと同じなのかと若干呆れてしまう。ちなみに、カイに『奢る』は危険な言葉だ。僕だって嫌だ。カイ、すごくよく食べるから…。本人は、昔は全然食べれなかったから、その反動だと言う。
カフェを出て、魔法を教えながら受験会場へ。さすがフェイスフィア。街で1番大きな建物は魔法使い管理局なのだ。ちなみに、人の流れはこちらではなかった。また別の場所へ向かっている。
4級なのに場所も大きく、人も多い。そしてなぜか、僕も受けてみることになってしまった。まあ確かにこういう検定の類は受けたことがないし、いいかもしれない。杖も貸し出し用があり、握りしめて列に並ぶ。意外と杖はしっかりしており、案外重かった。
「なにか魔法をひとつ見せてください。」
「はい。柔らかな雪。」
指を天井に向けると、白い線が出て、天井あたりで集まって、パラパラと雪が降ってきた。担当員もそれをしっかり確認し、カードに名前を書いて渡される。次はカイだ。
「次の方どうぞ。」
「灯火。」
手のひらの上に、今にも消えてしまいそうな弱々しい火が。まあ、これも魔法。合格できるだろうな、と思った時。
メノウが後ろからカイに触れる。まわりから見ても、服を握ったようにしか見えない。だが…。
ゴオオオオオッ!!
さっきまでひどく小さかった灯火が、すぐさま大きくなって、天井まで届くほどの業火に。カイやレアルスも驚いている。
「魔法を止めてください。制御!」
担当員がすぐさま杖を握り、魔法を使う。一瞬にして業火は消し去られた。安全管理も仕事なのだ。カードが渡され、すぐに順番は次の人へ。
「カイ、あんなに魔力あったのかよ!」
「メノウがやってたんだよ。」
「え!?バレてた!?」
ともかく、これで合格した。奢りは取り消され、カイが不思議そうにカードを見つめる。
管理局を出ると人の流れは弱まっており、流れに乗りづらくなっている。とりあえず向かっていた方向を目指す。そしてそれは…。
「『魔法学校』…だね。」
「そうだな。」
「俺ら、入れんのか?」
受付へ向かうと、名前と持ち込む魔物を書かされる。すごくメノウが不服そうだった。魔法学校では、完全にカイの持ち物になってしまう。
一般客は授業を受けることはできず、見学はすることができる。あとは、図書館や食堂などの特定の場所は使用可能。今日の授業一覧を渡され、門を通る。
建物もとても大きく、至る所で魔法論や魔物について話されている。僕らのような一般客も少なくなく、ちらほらと見受けられる。校庭では飛行魔法の練習中だった。どうやったら、あんなに軽々と急降下や急上昇できるのだろう。
「俺も飛べたらな。」
「いや、カイはもう飛んでるだろ。…物理的に。」
「跳躍能力が高いからね。」
「メノウ、別の授業も見たい!」
「はいはい。今やってるのは…。『魔法基礎知識』、『実践』、『魔法史』、『魔法植物』…あ、『魔法生物』もあるよ。」
「それがいい!それ見たい!」
「ははっ、魔物が魔物の授業を見るってのか。行こうぜ!場所は…東館の1階だってよ!」
ここで、全員が固まる。
東館って…どこだ…?
僕らは迷路に来てしまったらしい。
メノウ 「どこー?」
カイ 「マジで迷路だな。」
レアルス 「あれ!?南館って書いてあるぞ!」
ラルク 「これは大変だね。」




