33、チクッと刺さって
あたたかな昼下がり。私たちは土道を踏みしめていた。
アラルカ村まではまだまだあるが、こうやってゆっくり近づくのも大切だ。道中でいいこともあるかもしれないし。
「ねえねえ、彼女ちゃんはどういう子なの?」
「彼女じゃねえよ。…普通なやつ。」
「普通って?」
「いつもにこやかで、何を言っても賛成してて…。なんかこう、自我が見えないやつ。優しすぎて怖いんだよな。ラルクは気に入ってる女いないのか?」
「え?僕はモニカだよ。モニカはねー、まず見た目は完璧でしょ?でもそれ以上に太陽のような明るい性格が…」
「はいそこまで!カイはいないの?」
「いねえ。」
「即答かよ。」
「メノウっていう飼い主がいるからね!」
「あ?お前がペットだろ。」
カイとメノウがバチバチし始めたところで、私は大きく伸びをした。随分歩いたなぁ。どれだけ進んだかな、と思って振り向くとラルクたちと目線が合った。数秒の間が空いて、レアルスが問う。
「モニカはいないのか?」
すぐにラルクが両手を耳に当てる。なるほどね、答えてないのは私だけか。メノウにはカイがいるもんね。
少し考えて、目線を外す。
「………いないよ。」
「おいおいおい、今の間はなんだぁ!?こいついるぞ!」
「レアルス、モニカはいないって言ってるんだ。信じてあげようよ。」
「顔赤いぞ。」
「あ、走った!」
いや走りたくもなるだろ。だって恥ずかしすぎる!
けど相手は勇者、戦士に武闘士。もちろん秒で追いつかれる。数百メートルほど並走したあと、諦めてスピードを落とした。
「さあ吐け。誰なんだ?」
「尋問かよ。」
「…お父さん。」
「は?」
そう、小さい頃の私の夢は『お父さんと結婚すること』だった。『お父さんと結婚する!』と豪語していた記憶がある。
それを聞いたラルクは安心のため息を吐き、レアルスは心底つまらなさそうな顔をして、カイとメノウは何も変わらなかった。
「恥ずかしい…!」
「…モニカって、ズレてるよな。」
「そこも良いんじゃないか。」
するとそのとき、どこからか馬の音が。盗賊か?前方から体格の良い男性たちがやってきた。そして、手を伸ばす。レアルスの方へ。
「おらぁ!」
一瞬にして、斧ごとレアルスが持っていかれた。そのまま馬は来た方向へ戻っていく。
「飛ぶ…うわぁっ!」
こんな時に限って転んでしまう。カイとラルクが走り出すが、流石に馬には敵わない。少し離れたところに斧が落ちていた。落とされたか、落としてしまったか。
とりあえず、急いで追う。あれは盗賊ではなく人攫いだったか。幸い、馬の足跡が残っている。これを辿っていけば会えるはずだ。レアルスもただでは死なない。
そうして、馬の足跡が途絶えた場所。それは…
「『ゴンゴルア』…。」
アラルカ村までの中継地点。ここの街のどこかに、レアルスがいるはずだ。門には鎧を着た男性が2人立っていた。中はかなり賑わっている。
「…おい、手出せ。」
「なーに?」
不意にカイがメノウの右腕に手錠をかける。そして片方は自身の左腕に。
「何してるの?」
「思い出したんだ。ゴンゴルアは別名・「無法地帯」だって。」
「どういう意味だい?」
「そのままだ。ここでは盗みなんて日常茶飯事。女・子供は瞬く間に連れ去られる。」
「あ、それなら私、いい魔法知ってるよ。物戻り。これでもういくら盗まれても戻ってくるよ。」
「すごーい!」
「まあ、もう取り出せないんだけど。」
「おい。」
しっかり全員の荷物にかけて、少し緊張しながらも門をまたいだ。
いざ、無法地帯。
モニカ 「見てみて!猫みたいな雲!」
レアルス 「あれは犬だろ。」
ラルク 「ウサギに見えるよ。」
カイ 「オオカミに食われた人間。」
メノウ 「メノウ!」




