30、レッドドラゴンより赫く
やっぱり、襲いかかるのは無力感だ。私はまだ弱い。
けど、脱出なんて文字は浮かばない。
「…行こうか。」
杖や剣はいらない。私だけでいい。
ボオオオッ!
「飛ぶ者。」
炎は強力だが、範囲はそこまで広くない。20秒も経てばすぐにエネルギーが切れる。
空に浮いたまま、手を重ねる。
ドラゴンの弱点として逆鱗が有名だが、私はあまり意識したことがない。
喰らえ、これが私なんだ
「地獄の氷塊。」
ズシャッと音がして、レッドドラゴンに溶けない氷がのしかかる。私の前には魔法陣が。動きは封じた。あとはトドメ。
「落下する巨岩。」
ゴオオオオッ!!
そして、レッドドラゴンは巨石に潰され、息絶えた。
ああ、はやくみんなのもとに行かないと。
♢♢♢
一瞬、これは現実かと思った。俺はレッドドラゴンに潰されたはず。なのに綺麗さっぱり治っているのだ。
隣にはラルクたちが寝かせられており、ご丁寧に布団がかけられている。
「ラルク、ラルク!」
「うるさい。」
「カイ!起きたのか!」
「メノウ眠い!」
「…みんな、あれ…。」
ラルクが何か驚いている。指す方へ振り返ると…目を疑う光景が広がった。
レッドドラゴンが倒れている。
魔法の跡は消えているものの、頭を確実に潰され、動かなくなっている。そしてレッドドラゴンの腹の上に、モニカが立っていた。
「おーい、モニカー!」
みんなでレッドドラゴンの方へ向かうと、より凄さが伝わってくる。だがそれより、モニカが印象的だった。
「あっ、みんな!体調は大丈夫?」
頭から血をかぶったのか、かおの左側が赤く染まり、グローブも、服も、ブーツも、赤い。どっちが魔物か分からなくなりそうだ。
「…ああ。」
「じゃあこっち来て〜。レッドドラゴンのお肉があるよ〜。っきゃあ!」
ウロコに足を滑らせ転がり落ちるのは、いつものモニカ。けどモニカは、最低でもAランクはあるレッドドラゴンを魔力でねじ伏せ、俺らの治癒まで行って、元気に走っている。
「…うちの旅人、やべえな…。」
その言葉しか浮かばなかった。
カイのことをちょっと危ない人とか言っていたが、俺はお前の方がよっぽど怖いと思う。
あと、その後ノリノリでレッドドラゴンをスープやらステーキやらにしているのも。
するとモニカがまたもや転ぶ。おいおい、大丈夫かと思って駆け寄ると、モニカの口からは血が流れていた。明らかにこれはモニカのもの。
「あはは、ごめんね〜。あの魔法使ってると、どうしても副反応が…。」
「あの魔法…?」
「あっ…。」
聞いたことがある。普通の魔法に魔力を消費するだけだが、副反応のある魔法が存在すると。それは普通魔法よりずっと強力だが、身を滅ぼす危険もある、と。そしてその魔法は…
エルフを中心に使われている、と。
モニカ 「よく転んじゃうんだよね〜。」