22、ハッカ水の消滅
「モニカ、これは違くって…!」
「ふーん。へー…。」
絶対信じてない。どうしよう。私がモニカの前で状況を説明していると、リリィが私の片腕を抱く。やめてくれ、モニカの目がもっと冷ややかになった。
とりあえず急いで着替え、リリィにも服を着てもらう。モニカは腕組みして不服そうだ。
「もう…ラルクたち待ってるのに…。」
「そうだったの!?」
「うん。ほら。」
そう言ってドアが開かれ、見えた光景にモニカと固まってしまった。
ラルクが壁に追い詰められ、レアルスが壁に手をついている。
「…あら。」
「あ、いやこれは違くって…!」
「…うちのパーティ、とんでもないな…。」
「モニカ、そんな目をしないでくれよ!」
こちらも弁解タイムが始まり、その30分後、ようやく出発することができた。
向かったのはレストラン。合格を祝して、みんなで食べようということだ。起きた時間が遅く、もうランチメニューに切り替わっている。
それぞれ思い思いに注文して、すべての品が届くのを待つ。
「それじゃあ、みんな、合格おめでとう。」
『おめでとう!』
慣れたようにラルクが指揮を取り、グラスが音を立てた。
「そういえばさっき、なにしてたんですか?」
「あ、あれか?ラルクが俺をからかったから反撃してやろうと思ったら、ちょうどドアが開いたんだ。」
「レアルスはいつもおもしろい反応をしてくれるからね。レパートリーを増やしておくよ。」
「増やすな。」
2人とも、昨日のことは忘れてしまったように楽しそうだ。ああいうのは深く探らない方がいいのかもしれない。私も頭の片隅に追いやった。
というか、問題はこっちだ。さっきからリリィの距離が近い。今も隣に座っているし、レストランに向かう途中もずっと手を繋いでいた。
「エマ、このカルボナーラ美味しいわよ。はい、あーん。」
仕方ないので受け取っておく。確かに卵の味がして美味しい。というか、飲み物の食べ物も、なんだか似ている気がする。食の好みが似ているのだろうか。それとも、リリィが合わせているのだろうか。モニカもハンバーグを頬張っていた。
とりあえず、平穏が戻ってきた。
「武器屋は初めて入りました。」
「そう?私は何回か来たことあるわ。」
次に私たちは武器屋に向かった。カウンターではレアルスが斧を持って何か話している。
普段は魔法店なので、新鮮だ。周りに並べられているのは剣や斧などの武器。時折見たことないものを発見して、リリィに聞いてみたりする。というか、カウンターの人、ちょっと怖そう…。いかにも強そうなガタイのいい男性だ。右目には傷跡が残っている。ラルク曰く、武器屋あるあるらしい。魔法店にいる、なにを考えているのか分からない不思議な人のようなものだろうか。
用事は済み、次は魔法店へ。今度はリリィの用事だ。
やっぱり落ち着く。見慣れた雰囲気が迎えてくれた。逆に今度はレアルスが魔導書の多さや見たことない魔道具に驚いている。
ふと、リリィが自身の長い髪をハサミで切った。レアルスやラルクはひどく驚いているが、これも魔法店あるある。なにか自分の魔道具を作りたい時は、自分の『元』を使わなければならない。だからああやって作り出しているのだ。これによって、高く結んでも腰ほどまであった髪が胸下くらいに。
「お待たせ〜。」
「それが魔道具?イヤリングみたい。」
「そう。これがあると、もっと魔力を増やせるのよ。」
「へー…。私も作ってみてもいいかもなぁ…。」
そうして私たちはルルレーンを満喫し、気づけば夕方になっていた。
広場でリリィに別れを告げて、私たちも宿へ。その時、何かに引っ張られる。振り向くと…モニカだった。モニカが私の袖をつまんでいる。
「私、リリィとエマがすごく仲良くて、友達以上の関係でも、受け入れるから…。」
なんだか、あまり見ない顔をしていた。ラルクたちは気づかず先に言ってしまう。広場の噴水が夕日に照らされた。
なんだか、モニカを通して私を見ているようだった。こんな時、私ならなんて声をかけて欲しかったっけ。
「リリィは、親友でありライバルだよ。」
「だよねっ。うん、知ってる…。」
「けど、モニカは私の1番好きな親友であり先生であり仲間だよ。」
「え…。」
そうだった。私はモニカに合格を伝えたかったんだ。モニカがどんな顔するか知りたかったんだ。
「ありがとう。私を助けてくれて。あと…2級、合格しました。」
「…おめでとう。どういたしまして。」
モニカは、一番星のように輝く笑顔だった。
そしてその日の夜は一緒に風呂に入り、一緒のベッドで寝た。
お父さん、お母さん、私には、ちゃんと仲間がいます。そして私にも夢ができました。
ラルク 「魔道具は作るのが大変だね。」
エマ 「だから髪を長くしている魔法使いもいるくらいなんですよ。」
レアルス 「まさか、リリィはそのために…!?」
リリィ 「違うわよ。ただ切っていないだけ。」
モニカ 「だとしても長すぎる気が…。」