第12話:◇悪魔◇
悪魔。
他の子どもより、いや、大人よりも賢かった私は村の者たちに異端児扱いをされていた。
見たもの聞いたものを忘れない記憶力。あらゆる事象に疑問を抱いてしまう性質。
森に囲まれた小さな排他的な村に現れたそれは不都合な存在でしかなかったのだ。
私が村の古めいた慣習に異を唱えた時、村の重鎮たちは伝統を軽んじ破壊しようとする異端児という評価を私に下した。
ただ、亡くなった親の代わりに育ててくれた年の離れた兄が弟である私を庇ってくれた。
大切だった。
大好きだった。
迷惑をかけたくなかった。
だから、私はこの村を出ていくことにした。私がここから出ていくと話した時、快く村長は私を追い出した。幸いにも私は学も知識もあったため、馬車に施された仕掛けも取り除いて安全に離れることができた。
だけど、兄だけが心残りだった。
兄はあの村のしきたりに従順でコミュニティにも溶け込んでいた。私を庇いさえしなければ、あのいかれた村であろうとも何不自由なく暮らせていただろう。
本当に愚かで、お人好し。でも、私にとっては愛おしくて大切なたった一人の家族だった。
私はもう彼がいる世界にはいられない。これからは愛しい貴方との思い出を何度も夢で見るのだろう。
私の頭を撫でてくれたあの手の温もりも、
『■■■』
私の背中を押してくれたあの言葉も、
『■■■』
私の名前を誇らしげに呼んだあの声も、
『■■■』
これから幾度も思い出し、そっと静かに宝物のようなその思い出を閉じて深いどこかに隠すのだろう。
『いってらっしゃい、■■■。いつでも、帰ってくるのを待っているから』
だけど、ああ、ごめんなさい。
私は、貴方が呼んでくれた名前を、たった一人の家族の名前を、
神に捧げてしまった。




