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ヘビロテ転生周回中 〜スカウトされて新人天使になりましたが、仕事先(下界)で無自覚に色々やらかした結果、大変なことになりました〜  作者: 花京院 依道
『ギラファス決着編』 〜序章〜 フィオナ講師から「統治者として」の講習を受けました
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〜Lv.30〜 フィオナ講師から『統治者として』の講習を受けました

 カフェテリア内に気が抜けるような陽気な音楽(BGM)が流れ始めた。


「あっ! フィオナさん、コレ知ってますか? い、いやあ〜、懐かしいなあ〜。アハハ……ハ……」


 ボクはそう言って、店内に流れ始めた『水に弱く、顔を取り替えることで力を取り戻す弱点だらけのヒーロー』が活躍する、子供向けアニメのテーマソングの話題でフィオナの話を遮ると、(くう)を見つめながらその陽気な音楽に耳を傾けるフリをして、さっきの話を聞かなかったことにした。


 さっきの話とは……もちろん『信者』がどうとか、という話だ。


 だけど、何時までもこうして空を見つめているわけにもいかない。


 ゆっくりと視線をフィオナに戻すと、ぎこちない愛想笑いを浮かべながら『ボクは何も尋ねなかったし、耳にしなかった』っといった感じに、「あーっと、何でしたっけ?」と言って、空気のリセットを試みた。


 しかし、フィオナは見逃してはくれなかった。


「……現在、ガーラ様の信者はルアト王国全域に広がり、隣接する国々の一部地域も改宗が行われ、今もなお、その数を増やし続けております。……あの、ガーラ様? 現実を受け止めて下さい」


 ボクが再び、話の途中からアニソンに聞き入るフリをして現実逃避をしていたら……フィオナに、しっかりと釘を刺されてしまった。


 ゔぐっ、だって急にそんな『信者』とか言われても、とても頭がついていかないよ。

 だってボクは、ほんの数日前まで、本っ当〜に平凡な『一般下界人』だったんだから……


「……あっ!! で、でも、神気の影響って一時的なモノではなかったですか?」


 そうだよ! 『信者』なんて言われた焦りで、忘れてしまっていたけれど、『神気』の効果は一時的なものだったはずだ。

 転生課のランスから、ボクは確かに、そう教わったんだ!


 だから『神気』の影響が収まるまで下界と距離を置いていれば、それで解決する話なのでは?


 そんな藁にも縋る思いで繰り出したボクの言い分を……


「『霊界』ではそうですが、『下界』では、『神気の影響が半永久的に持続』する傾向があります。しかも『下界人』は、『神気に対する免疫』がほぼありませんから、どうしても影響が強く出てしまうのです」


 ……と、フィオナは容赦なく一刀両断にしてしまった……


 ち、ちょっと待って? 『半永久的に持続』?……ってことは、 ハッ!? 即ち、ボクの神気は、ずーっと下界に残ったままってこと!?


 しかも下界の皆んなは、神気に対する抵抗力が無いって言ってたよね!?

 それじゃ、これからもずっと、皆んなは酔っ払ったような状態が続くってこと!?


 あわわっ、どうしよう、すぐに収まるって思っていたのに……

 身内同然の皆んなに(かしず)かれ続けるなんて、ボクはそんなのは絶対に嫌だ!


「フィオナさん!! どうにかボクの神気を打ち消す方法ってないんですか!?」


 何か打開策はないものかとフィオナに意見を求めると……


「神気を打ち消すには、更に強力な神気で『上塗り』すれば良いのですが……」


 ……と、フィオナが『上塗り』という解決策を提示してくれた。


 その言葉を聞いて、パッと希望の光を見た気になったのだが、続けて語られた内容を聞いて、その光は瞬く間に消え去ってしまう。


「しかし、『上塗り』しようにも、ガーラ様に勝る神気の持ち主は数えるほどしかおりませんし、頻繁に上塗りをすると下界人たちの負担にもなります。ですので、このままガーラ様が『統治』されるのが一番安定しているのです」

「……っ、そ、そうなんですか……」


 下界の皆んなにとっては、現状を維持することが一番安定しているらしい。

 ということで、どうやら『上塗り』は無理みたいだ。


 それにして、『統治』か……


 ああぁっ、辞退したいけど、下界の皆んなに負担がかかるって聞かされたら、そんなことできないしっ……でも正直、ボクには荷が重すぎるよっ。


「あまり深刻に受け取られなくて大丈夫ですよ。レファス様も聖域を幾つか『統治』されておりますが、特に何もしておりません。それでも世界は無事に回っております」


 あまりの重責に頭を抱えていたら、フィオナから、励まし(?)の言葉をかけられた。


 ただ、フィオナがボクを安心させるために語ったその内容は、かなり放任主義っぽく感じる……


 フィオナさん……それって『親は無くとも子は育つ』ってことですか?


 まあ、さすがに『何もしていない』とは思わない。だけどフィオナのその一言で、さっきまで感じていた重責がフッと軽くなったのは事実だ。


「ありがとうございます。少し、気が楽になりました」


 笑顔で感謝の意を伝えたボクに、軽く微笑み返しながら頷いたフィオナだが、「ところで、ガーラ様……」と言いながら、その表情をスッと引き締めた。


 その顔を見て、『これから語られることの方が本題なんだ』ということに気がついたボクは、急いで背筋を正すと、真剣な眼差しでフィオナに向き合った。


 フィオナは、「『統治者』としては、こちらの方がメインの業務になるのですが……」と前置きした上で……


「先ほど、神気に触れた人々の中で、ごく稀に『暴走』する者が出る、とお話しましたが、これはガーラ様の神気にも当てはまるお話しです」


 ……と、何とも不穏なことを話し出した。


 ゔっ、いきなり話がきな臭くなってしまった。

 でも、こんな話をするってことは、もしかして、ボクの神気で暴走した人がいたの?


「それは……宰相のような『暴走者』が、ボクにもいるってことですか?」


 ボクはそう質問すると、ザワつく心を必死に抑えながら固唾を呑んでフィオナの返答を待った。


「可能性はあります。下界の部下からの報告はまだありませんが、発見された時に備えて『心構え』をしておいて下さい」


 見つかったわけではないと聞いて、とりあえずはホッとした。


 でも、フィオナの言う『心構え』というのは、気持ちや気合いってことではないはずだ。

 その時、ボクは具体的にどう対処するべきなのかを聞いておきたい。


「その『心構え』って……ボクは具体的には、どうすればいいんでしょう?」


 ボクのその問いに、フィオナは意外な答えを返してきた。


「『暴走者』には、絶えず監視が必要になります。なので、一番良いのは、その者を常に『そばに置いて()()する』ことです」

「ええっ!? そ、そばに置くんですか!? 危なくないですか!?」


 あまりの対処法に驚きすぎて、ボクはテーブルに手を付いて勢いよく立ち上がると、前のめりに聞き返してしまった。


 何せ、ボクが知ってる『暴走者』といえば『雷電』を人に向かってブッ放すような危険人物だけだ。


 そんな人をそばに置く!?


「大丈夫ですよ。暴走しているとはいえ信者ですから(あるじ)の言うことには絶対に従います」

「はあ、……」


 ボクはつい、気のない返事を返してしまった。


 フィオナは大丈夫だって言うけれど、下界で見た『暴走者』(ファラス)のイメージが強烈すぎて、今ひとつ信じきれないんだよね。


 そんなボクの心情を知ってか知らでか、暴走者の扱いについて、フィオナは更に言葉を重ねた。


「とはいえ、やはり『暴走者』は歯止めが効かなくなると厄介ですから、常にそばに置いてそれを()()することが重要なのです」

「そ、そうですか、……分かりました。でも、ボクの信者には『暴走者』がいないことを願います」


 その後は、大幅に変わってしまったボクの今後のスケジュールについて、色々と話を聞いてフィオナと別れた。


 思えばこの時、ボクが口にした『暴走者がいないことを願います』ってセリフ、これって完全に『暴走者フラグ』だよね……



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一夜明けた翌日、ボクとアルは早朝からサンズリバー空港に遊びに来ていた。


 就職したばかりなのにもう休日?って思われるかもしれないけど、ボクは『聖域化』してしまった下界の『神気緩和作業』が終わるまで、天界で待機することになってしまった。


 ということで、『心臓』として体を慣らすこと以外、特にやることのなくなったボクは、しばらくの間、休日を貰えることになったのだ。


「ねえ、ガーラ! コレも買っていい?」


 霊界航空のロゴが入ったTシャツを指差しながら満面の笑顔で『盛大な独り言』を言ってしまったボクは、怪訝そうな表情をした店員から顔を背けるようにして、急いで後ろを振り向いた。


「ア、アレ〜、皆んなドコに行ったんだろ〜……」


 今、持てる最大限の演技力を投入して、ボクは『友達と逸れてしまった天然少女』を熱演すると、赤面しながら急いでその場を立ち去った。


 ……だけど……


 (ガーラの嘘つきぃ! 何でも買っていいって言ったのにぃぃ!)


 ……アルが心の中で大騒ぎし始めてしまって大変だった。


「分かった、分かったから……また後で買いに行こう」


 ボクは一生懸命アルを(なだ)めながら、人混みの中を縫うように歩いた。


 それにしても、さすがはサンズリバー空港。まだ早朝だというのに、相変わらず凄い人出だ。


 まあ、それもそのはずで、ここサンズリバー航空は、24時間360日、年中無休で営業している『霊界屈指の人気レジャースポット』でもあるから、当然といえば当然なんだけどね。


 ところで、『霊界人』でもなければ『転生』するわけでもないボクたちが、何故サンズリバー航空にいるのかというと、それはズバリ!『アルの買い物欲を満たしてあげる』ためなんだ。


 何せ下界では、結局、アルが楽しみにしていた『お買い物』に行けなかったから、そのことでアルが大騒ぎして収拾がつかなくなっちゃって……


 そういうわけで、『下界グッズ』の充実したこの『サンズリバー空港』で、ボクたちは早朝からショッピングを楽しんでいる。


 だけど……テンションの上がりきったアルが、さっきのように『盛大な独り言』を連発していて、恥ずかしくてたまらない。


「む〜、その場の勢いで買うのも楽しみのひとつなんだからね!」


 買い物を中断させられたアルが、頬を膨らませながら拗ねた様子で主張した。


 そうは言うけど……それって、衝動買いだよね?


 まあ、支払いに関しては大丈夫だけど、それでも、あまり無駄な物は買わないで欲しいな。


 ん? 霊界の支払いは『滞在時間』なのに大丈夫なのかって?


 ふっふっふっ、その辺は心配いらないよ! 何しろボクは『大金持ち』ならぬ『大・滞在時間持ち』だからね!


 転生者の皆んなは、記憶が無くなっちゃうから知らなくて当たり前だけど、実は、霊界にも銀行があるんだ。

 もちろん、扱っているのは現金じゃなくて『滞在時間』。


 主に、霊界人のための施設であるこの銀行だけど、ボクは、記憶保持者の特権を使って滞在時間の積み立てをしてきた。


 いつも高速転生して時間を節約していたから、ボクの口座の滞在時間残高は物凄いことになっているんだ。


 とはいえ、やっぱり浪費は控えて欲しいんだけど、さっきからアルが心の中で、『一期一会』がどうのと、いかに『買い物にはリズムが大切』なのかを力説している……


 はぁ〜、しょうがないなぁ、今回はボクが折れておこう。

 だけど、独り言の件はきちんと伝えておかなくっちゃね。


「はいはい、分かったよ。だけど、さっきみたいな独り言は勘弁してよ? 恥ずかしいから」

「え〜、別に気にしなくていいと思うけど? 誰も覚えてなんかいないわよ〜」


 ボクの『独り言』に対する注意を、アルはあまり真剣に聞いてくれなかった。


 そりゃあ、いざとなったら、アルは『眠って逃げることができる』からいいんだろうけど、ボクの場合はそうもいかない。


 ボクはもう、『不思議ちゃん』扱いは受けたくないんだ!

 ってことで、さて、どうアルを説得しようかな……


「『転生者』の人たちにはそれで通じるかもしれないけど、店員や従業員は『霊界人』だから、顔を覚えられる可能性があるじゃないか」


 ボクは、人の入れ替わりが少ない空港職員たちを引き合いに出して、そこからアルにアプローチすることにした。


 視線を空港の到着口に向けると、到着したばかりの転生者たちに滞在時の説明をする空港職員の姿が目に飛び込んできた。


 その空港職員は、数日前と同じようにおざなりな説明をすると、戸惑う転生者を残して立ち去っていった。


「確かに、変なイメージで店員に覚えられちゃうと、ショッピングに影響しちゃうかもしれないわね」


 静かに職員の様子を眺めていたアルが、そうポツリと呟いた。


 やった! アルが分かってくれた! 『好機逃すべからず』って言うから、アルがその気になっているうちに、サッサと買い物を済ませてしまおう!


「そうだよ! じゃあ、さっきのお店に戻ってみる? 今度は独り言にならないように気を付けてね?」

「まかせて! じゃあ霊界航空限定Tシャツを買ーー」

「ガッロル様!!」


 ボクたち(?)が、さっきのお店へ戻ろうと(きびす)を返して歩き出したその時、到着口の転生者集団の中から、聞き覚えのある声がボクを呼び止めた。


 その声はこの場にいるはずのない人の声で、昨日、下界で別れたばかりの人の声だった。


 ま、まさか、そんなはずは……だって昨日、下界で別れたばかりなのに……


 ボクの額から、嫌な汗が流れ落ちた。


 (ねえ、ガーラ。私の聞き間違いじゃなかったら、この声って昨日のーー)

 (ち、違っ……)


 ボクは反射的にアルの言葉を否定した。


 (そんな……そんなはずない! だって『日数的に矛盾』するし……)


 アルにそう言葉を返したが、『彼がここにいる』という事実は変わらない。

 そして、それがどういうことなのかは、自分が一番よく知っている。


 ……しかし……心がそれを認めようとしない。


 心の中で、『いいや……しかし……』と繰り返してばかりで、気持ちがまとまらないうちに、その人物はボクの背後までやって来てしまった。


「ガッロル様……」


 背後から呼びかけられたけど、とても振り返る勇気が出てこなくて、その場に立ちすくんでしまったボクは、その人物に背後からそっと抱きしめられた。


「貴方に、会いたかった……」

「っ……ヴァリター、ど、どうして、ここに……?」


 耳元で囁かれた声で、もう振り返らなくても誰だか分かった。

 色々と聞きたいことはあるけど……


 (キャアァァ!! バックハグよ! バックハグッ!! しかも、甘い囁き付きぃぃ〜! ガーラったら、なによ〜! やっぱり私が眠ってる間に彼と進展していたんじゃない〜)


 今、ボクの心の中では、アルが狂喜乱舞の大はしゃぎをしていて、それどころじゃなかった。


 まあ、おかげで胸は痛くならなくて済んだけどね……

誤字脱字の報告、並びに言い回しの修正をしていただけると助かります。

((。´・ω・)。´_ _))ペコリン

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