第6話 先祖返り
あらすじ
自分の死因がなんと事故だったことを知る跳羽。
そのお詫び、として、異世界への転生や能力を貰うことに。
そして、跳羽は転生していった。
□
「行っちゃいましたね…」
…そこは神界。跳羽が転生してすぐだ。
そう創造神…アムが呆然と言う。
「…おぬしらの減罰も望みじゃったからある程度はなくすが…不問には出来ん。アムはもう少ししっかりする事。テンパるのが早すぎじゃ。ファルはしばらく監督付きで訓練じゃな。以降このような事がないようにの。」
そう全神…オルムは最初よりずっと落ち着いた様子で怒った。願いから考え直したのかもしれない。
「「はい…」」
と、落ち込んだ様子でアムとファルは返事をした。
「しかし…じゃ。」
悩んだ様子の声調子にアムとファルはなんとか気持ちを切り替え…
その発言を疑問に思いつつ、オルムを見る。
「あの…跳羽の能力についてじゃが…おぬしらは見たかの?」
そう、確認するようにオルムは二柱を見つつ問う。
「…“生命の窓”で見ました…けど…?」
「…僕もです…ですが…」
と、返す二柱の声と顔は曇っていた。
それは、特に深刻さを感じられない普通の表示だったからだ。
なのに。オルムの口調はどう考えても、普通の表示に対するものではない。それに混乱していた。
「ふむ…?では、“あれ”はどういう事じゃろうな……」
そう言うとオルムは手を叩き、パン、と鳴らす。
ーすると、パソコンのウィンドウ…言ってしまえばAR表示のような、ウィンドウが空中に表示された。それには、沢山の文字がびっしりと書いてあった。
“魂名 泉高跳羽
魔力回路 異常(正常?)
魔力 異常(半無限)/魔力属性 全
魔法適正 全
呪力 異常(半無限)
気 異常(半無限)/気属性 全
神力:異常(存在、半無限)
魂の器:異常(無限) 適性:全
……etc...
種族:ヒューマン 裏種族:始祖の先祖返り”
…それは、オルムが強化をする前…
能力を強化する為に状態を見たとき、分析して保存した能力詳細の一部だ。
etcの部分には様々な“異常”が省略されている。
「「…これは…?!」」
「わしが“見た”能力じゃ。強化する前からこれじゃからの…」
この他の能力は、オルムが見た時、殆どが“抑”という数値だった。
異常。その種族ではありえない能力の場合に付く。が、余程の能力値でない限り、様々な手段を用いる事で到達出来るため、この数値…いや、特殊表示は出ないのだが…。
と、抑。何らかの力によって抑制された能力によって付く特殊表示。
抑制をしたのはこの“世界”だろう、というのがオルムの判断だ。力が異様であり、その世界で使用される能力なため平均まで自動的に抑制する事で“異常な存在”にしないようにするのだ。
…これらの表示は、全神の権能“全テノ王”の“知識の湖”、“世界掌握”、“全テヲ見通ス目”、神共通の権能“全世界書庫”を使用•応用•併用した上で…
オルムが分かりやすいように纏めたものだ。普通、そこまでせずとも解決するのだが。
「併用をした上でチェックもしたからの…間違っているとは到底思えん。じゃが…いや…。」
ーこれは能力の範疇を逸脱している。
オルムの言えなかった部分には、この言葉が入る。
跳羽の居た世界には“Lv”と“能力”といった“世界の法則”がない。そのため、跳羽らは必然的に“Lv1”固定になり、能力の上昇もそうそう起こらない。普通なら能力は低いのだが…
殆どの消費する能力についた“異常”(半無限)という文字。これはオルムがそう判断したのだ。総合的に判断した時、“無限”に近いと。無論…無限ではない。ちゃんと消費するし、数値もある。が、桁…量がおかしいのだ。
これらの現象。それは何故か?
ーそれは裏種族の影響。それがこの異常の原因。
裏種族とは、“表”種族よりもその“血”などが薄い事などにより表…姿などに現れず、能力にも本当に少ししか影響を与えなかった種族の情報だ。
ほとんどは、ほんの少しの別の種族…別の世界などでは“ハーフ○○/××”といった風に混ざっていることがある。基本的にはなし、つまり混ざっていないのだが。
跳羽の種族は“ヒューマン”。能力が平均的に上がり、伸ばそうとした部分は特化して伸びる。
地球の人族は全てヒューマンだ。ここは問題ない。
そして…裏は、“始祖の先祖返り”。
先祖返りとは、両親と言った直接的な祖先ではなく遠い祖先の形質や能力が突然子孫に現れる現象の事を指す。
しかし、先祖返りは基本的に“種族”の方に表示される。“種族:先祖返り:○○”といった風に。裏種族に血の近い種族が表示されるべきなのだ。(余談だが、先祖返りには共通の能力として裏種族に姿と種族名を変える事ができる能力が追加される。迫害をされたりしないようにするための自己防衛手段、といったところ。)
ーでは、何故そうならなかったか。それは先祖返りの“血”のせいだろう。
□
それは、“始祖”。
それは、全ての生みの親である“始まりの神”というべき存在が…何もない、空間もない場所に生まれ、知性を持ち、知能を持ち、意識を持ち、不定形な姿を持ったところでふと感じた感情…“退屈”(=“暇”)と“孤独”から、自分に似たもの…“生命”を作りだす。
その“最初の生命”と“始まりの神”は、音を発しないテレパシーでの会話というコミュニケーションを繰り返しながら、時空や世界、法則、虚無、世界の狭間などの開拓可能、開拓不可能、立ち入り禁止、侵入困難といった“場所”を作り出したところで、自分達と変わりない新たな1つの“種”を作り出す。
後にその種は、人や獣、神を作り出す。最初の2人が始まりの祖先なら、“生命の祖先”であった。…その“生命の祖先”は、生まれた時から未来より影響を受け、人型を形取る。
そして…“生命の祖先”を、後の神は“始まりの祖先(様)”と呼ぶ。
種から生まれた“始まりの祖先”は、時間の経過と共に、“始まりの神”から授けられた魔法といった力を馴染ませたりする事で、自分達から派生した種族を生み出し、法則性や姿、能力の弱•強などを決めていった。そして、種族の数を増やし、一部には力を授ける事で一部に種族中での優位性を付け、国や集団を作らせた。
それと平行して、様々な生命…魔物、植物といった自然、虫、動物、魚を作り出す。中には派生した種族をモチーフにした物、逆に派生のモチーフにしたものも居た。
しばらくした時、派生した種族の集団と生み出された生命は“始まりの神”により各々に分かれ、世界に…その世界の、惑星といった地に住む。
そして…どこかの虚無で、“最初の生命”と“始まりの神”、“始まりの祖先”…いや、“始祖達”は眠りについた。
□
…“生命の始祖”は、全ての生命…神や精霊、天使をも生み出した。そのため、その力は神を何の問題もないように、軽く、赤子のように凌駕する。
そんな“始祖”は、自分の血をほんの少し、混ざると始祖レベルの能力へ変わる血を、全ての種族に分けていた。(一部には多く与えており、その種族は中でも上位種レベルになっている。)
理由としては…暇つぶし、というか、何となく。自分達が目覚めた時に見に行く口実や期待、仲間や子供的な目を向けたかった、という事が挙げられる。
1度の世代で消えるようにし、天文学的な確率で先祖返りするようにした上で、問題の起こらないように先祖返りが起きた時の対策もしていた。
力の抑制を自動でするように“世界の法則”を“始祖”と“最初の生命”と協力して作ったり、“世界の法則”で種族が分かる法則がある場合逆転するようにしたり、先祖返りした時に高度の隠蔽効果が発生する効果を付けたりとした。
しかし、力の抑制をしていても、直接的な制限はしていなかった。理由は何か。
理性の能力や、知識といった能力が制限していても凄く高いから、だ。能力の暴走も“始祖”の血の影響で制御能力が高いため、起こらない事を見越していた。
…しかし、それを知っている神もその能力を見て混乱を招いていた。
何重何百重もの抑制をしていなければ能力が、低くてもそのLv平均の数万倍は軽く超える。無限に近い量と、力などの自己回復速度。様々な力の適性数。これは聞いていても認められる訳がないだろう。これが暇つぶし、と聞いているんだから頭痛ものだ。
「…私の“生命の窓”の情報読み取りをも欺くなんて…」
ファルは現実を見る代わりに考えてごまかすことを選んだようだ。
「…これはその気でいかんと見抜く事はできんよ。」
やや疲れたオルムの声。
「…回復速度おかしくないですか?」
アムも話に乗ることにしたようだ。
「…じゃな。」
「…本当だよね…」
疲れた様子の三柱。驚き疲れたようだ。
ズズ…。
お茶を啜る音が静寂の中に響く。
「あの能力なら10個っていうのも頷けますね…」
アムが呟く。
「…じゃろう。ほぼ意味がないんじゃよなぁ…転生先も“大世界”が指定されてよかったわい…“厄介な転生者はこっちに渡していい”とか世界神のやつは言っておったしの…」
と、疲れた声で返すオルム。
ーオルムが言った内容は様々な事が短縮されている。
転生先を決めるといっても、そう容易ではない。世界毎に神界が違うからだ。そんな中でも、跳羽は力が強大過ぎて、敬遠される事がしばしばある…というか利用しようとしない限り普通受け入れたくないレベルではなかろうか。
そんな中で、今回は渡りに船だったのだ。
そして願い事に意味がないというのも…“大世界”は“基本干渉自由”…つまり、神の力で干渉する事を破壊など以外、基本禁じていないのだ。…というのも理由があって…神様の宗教文化があるというのが大きな理由の一つだ。
そのため、準備などをこちらで行うのも比較的に簡単な上に、力も最初から最高を振り切っている。何かの拍子で始祖様が仕掛けたものでも発動するのではなかろうか。
まぁ何もしない訳にも行かないので…準備する装備や道具を良くしたり強化したり、感覚の調整、抑制の力の変更能力を纏めた“ステータス能力”の付与、ヘルプの追加などをひっそりと、しっかりやったのだが。
しかし、…一つ、転生には問題点がある。
ーそれは、力の付与だ。力の付与は魔法的な加護や、スキルの付与を行うことで願いを叶えるのだが…
スキルは修練した力を与えたり知識を与えたりするだけで習得出来るため、特にリスクや問題はない。が。
“ユニークスキル”と呼ばれる、スキルの中でも強力で、一人しか同じ物は持てないと呼ばれるその力は…神に近い力であるため、スキルのようにはいかず、付与するとなった場合、“魂の器”という場所に“神の欠片”と呼ばれる力の断片を埋め込む事で力を与える。そのため、魂の器が小さいと付与出来ないのだ。
…のだが、魂の器の容量が“無限”な上に適性が“全”である跳羽…。
適性は、神の欠片の受け入れ易さ…これは適性があると、魂の容量や修練次第で“神の欠片の付与”なしでユニークスキルを手に入れる事が出来たり、付与される際の神の欠片の消費する容量を下げる効果がある。(なお、ユニークスキルは、奪われたりしないように魂に刻む事で力を得る。そのため、容量が無ければ適性があっても習得出来ない。)(余談だが、“始祖”の先祖返りである跳羽はその力に目覚めた後ならばユニークスキルを手に入れようと思えば簡単に手に入ったりする。スキルなども手に入りやすい。)
…といった感じの跳羽には並みの願い事は何もかも、意味なしなのであった。
「これからどうなるんじゃろうの…」
オルムがそういうと同時に、出発前の跳羽にこっそりと加護を付与したりしていた三柱は同時に息をそっと吐いた。
なんというか、読み直して思いました。
前話の意識してるとは何なのか…
ちゃんと修正しないとなあ、いつか…
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ファル 説明:始祖に振り回されている被害者。
アム 話をしながら理解しようとしたものの
オルム 頭痛が増した気がするばかりだったとか。
始祖 説明:神様をも困らせる生みの親。
退屈が嫌いだったようで、自分が目覚めたときの
楽しみを作るために血を混ぜた。悪いとは思っている。
跳羽 種族:ヒューマン/(始祖の先祖返り(高度隠蔽))
説明:だいたい先祖返りのせいだった主人公。
しかし、それは本人の知る由もない。
一応本人の努力の結果であるところもあり
体力やらあまり努力していないところに
先祖返りが悪さをしていた。果たして良いことか悪いことか。