第1話 神界にて
作品あらすじにもありますが…この作品は、うん年前…?くらいに作者が1度投稿し、恥ずかしさとともに爆発して消えていった小説を元に改稿したりした物です。
俗に言う黒歴史ってやつです。
黒歴史ってとある有名作品の造語なんですね脱線。
万が一、見覚えあるぞ…?なんて事になった場合は、いきなり消えやがったあの作者だ!と思って頂ければ…
(かなり…1000PVくらいだったので確率は低いと思うのですが)
数年越しに書き換えて思う事は、稚拙な文章を自分で読みながら改稿するので当時よりさらに恥ずかしいということ…。あっはは過去の自分に殴られて負けて完敗してやんのはあ爆発したい
酒飲んだようなテンションの文章に乾杯だ…完敗だけに
□
次話からはここに前回のあらすじが入ります。
ある程度内容が分かるようにはしたい…
ある世界の、20××年×月××日の13時00分丁度。
ーその時間から、ある1人の人間の、運命の歯車が…狂い出した。
それは、1つの歯車があらぬ方向にズレた事が切っ掛け。
本来は、噛み合う歯車がなくなり全体が動かなくなる……筈だった。
…元々の運命より、良いのか悪いのか。
それは、ズレた先で奇跡的に別の歯車と噛み合い、"その人間の運命が最初からそうなる予定であったかのように"また回転の力が生まれ、回りだすことによって…
見方によって、幸か不幸か。変わる方向へと…ズレて回り出す。
‹場所:??›
「人間さんってさぁ……。」
ポツり、と脈絡なく投げられる言葉。
「んんー?」
それにどうしたのか、と言外に問う…そんな声音で返事をする言葉。
「なんていうかさ、こう…アイデアとかが…さぁ。ねぇ?その…凄いよねぇ…」
そんな、気の抜けた口調で発される、なんともあやふやな言葉。
「…う、うん………そうだね…うん…」
あやふやさにとりあえず、と声に出る困惑しながらも返される言葉。
なんとも、平和だった。
ーそこは‹神界›。
‹神界›とは、その名の通り神々が暮らす場所。
…とは言っても、地上から見ればそこは異世界にしかならない、認識できない類の空間でしかないのだが…。
さてさて、この“世界”の神様…
この"世界”では、物事を司る“種族”として地上では知られており…
“地上”を見守り(見守ってはいる)
天罰を与え(ここ最近…確実に数百年は与えてない)
世界を調律し(最近下界が侵略に脅かされたりせず、まるでやることが無い)
加護を与え(下界全体とその与えた者がややこしくなるので、やっていない)
時にはその“世界”を滅ぼして…
他の世界に影響を及ぼさぬよう(滅多にやらないが)“処分”するー
ーなどなど、その世界の発展を調整したり、滅亡しないように天罰と称して原因となるものを排除したりする。
なお、世界を滅ぼすことを複数の世界を管理している神界の場合は行うが、基本的にはそのような事態は稀だ。
そんな世界を管理する神様…つまり神族には、種族的な特徴としてー
もはや生物という枠を越えた段階に値する能力と、“権能”と呼ばれる力の2つー
この二つが、神族について語る際に特記すべき点だろう。
前者は筋力や知力、生命力や再生力、資質などの基礎能力の類が下界で言う最高を、たやすく超える。
率直に言えば、通常ではまずありえないくらいの能力を誇る。
それも神族、または神族に似た種族でなければ…地上の種族と比較すると天と地ほどの差がある位に、能力が高い。
そんな能力がとても高い、というだけなら簡単に表現出来る前者に対し、後者はとても不思議なものだ。
が、それを語るには複雑さ故に幾つか知っておかなければ分からない事がある。
まず、神族には○○神や□□神などの神の前に付く呼び名がある。
その○○や□□の呼び名は、その神様が生まれた時に決まり、その呼び名に関する事に特化する。
ちなみに、特化するからといって他の能力が落ちるかと言えばそんな事はなく…少なくとも、一番苦手な事でも地上の種族には勝てる程には落ちる事がない。
その前に付く呼び名に合わせて、基礎能力面も特化したものを司る為に高くなるが、特に特化している影響を見せるのがこの”権能”と言われる特殊能力だ。
神族は特化した権能以外にも、共通して様々なことが出来る。
力を特定部位に纏わせると可能になる‹神眼›(物を見透かしたりすることが可能になる)などの部位強化
意識した場所に時空や世界等を越えて繋がる門を条件なしに開く‹神窓›(神の力などには対抗出来ない。)
自分の小さな世界を任意で創る‹神域›(危険なものを隔離したり、影響の大きいことをするなどが出来る)
自分の知りたい事を知る‹神書›(特化した能力以外だとあまり調べられない)
光速を置き去りにし、神の力によって加速した世界を把握しつつ自分もその速度の中で行動する‹神速›
…などが共通の権能としてあり、それに加えて呼び名に関する権能が存在するのだ。
このいずれの権能にも“神力”と呼ばれる神族のみに通う力を使う。
…が、そもそも“神力”がまるで減らない上に、神界の特殊な環境により、回復速度が異常なため全く制限になっていないのである。
最も、元より制限化は図られたりしていないのだが…。
天の存在の、神族。
この世界の神族は“地上”には全くと言っていい程関与せず、神界でゆっくり生活を送っている。
そのゆっくりの度合いが凄まじい…神の基準である上に、“天罰“は基本的に気まぐれであることに加え…
放任主義なので天罰のような干渉の一切が人界史に記録として残っていない。
そんな神々の住む世界である“神界”は、‹天界›や‹天国›、‹地獄›などといった空間と同様に…
“位置”としては一つの世界の、同じ空間のその“位置”にあるが、“場所”としては‹地上›(この世界では“人間界”のこと)と同じ世界にあっても、その空間からズレた“場所”に位置している。
この世界の場合、例えば地上からロケットといった物でどんなに上空に行っても、地上→天界→天国→天使界→女神界→神界と、位置的には上に存在しているはずの天界にすら辿り着かない。
なぜなら、地上と天界の"空間"の位置がズレていて場所が異なるから。
例えるなら…2次元の縦と奥行の中で、ジャンプや上に行く事ができるという"高さ"を知らず生活している人にはその縦と奥行の中が全てだ。
が、3次元…高さを知っている人からはその2次元も見えるし、その上も見える。
2次元で見ると認知すら出来ないが、3次元からすると下の方に見える。縦と横で言えば同じ位置にあるが、高さで見ると違う位置にある、というのが地上と天界等の位置関係で言える。
□
ここはそんな別空間である神界の森…森とは言っても実際のところ木々は全て神樹で、ただの森ではない神森とでも言うべき森の中。
森の中にはどこから見ても一瞬で分かるくらいに、ぽっかりと開けた場所があった。
…そこには、少し前…いや、この表現は地上から見ると全く正しくない。
神からすれば“少し前”の事ではあるのだが、実際のところ、普通の人間感覚で言えば、“昔々”レベル…数百年前までは、確かにそびえ立つ巨大な神樹があったのだ。
が、今ではとある“事件”により今は切り株だけとなってしまっていた。
今では知る人…いや…人…ではなく、知る神ぞ知る、誰が意図した訳でも無いのに、奇跡的に出来た快適な空間だった。
そして今現在。
そんな切り株の上には、頭上には光るリングと背中に翼を持ち…周りと色…や雰囲気が同化しているために気付きにくいが、神々しく威圧的な感覚を本能的に感じてしまうオーラを纏う二人…じゃなく、二柱の神様が居た。
この世界の神様は全員容姿が一緒!なんて、そういったホラーな事はなく、容姿は全く違う。
それと、やや当たり前ではあるのだが…この世界の“人間界”の人間には、存在していない部位…リングと翼、オーラの色も違っている。
片方は見ているだけで、包みこまれるような錯覚すらしてしまうような、優しい乳白色。
もう片方は輪郭がブレたようになっていて、一見透明に見えるが、よく目を凝らして見るとうっすらと色が分かる不思議な蒼色だ。
さて、片や乳白色のリングと翼を持つ少女…
彼女は、とんでもなく整った顔立ちだった。
それももう…100人に聞けば98人は確実と言える位に可愛いと言うレベルであった。(尚、残りの二人も、本心は“可愛い”である。)神様は強い。
普通より少し垂れ目気味の桃色の目。
全く別の色に染まっていない…神聖さを感じる、純白のセミロングの髪。
服も同様に、汚れも僅かな他色すら許さないかのように純白。
形はネグリジェのような感じで、肩から足首近くまである感じだ。ちなみに、腰の所で薄茶色の革のような質感に見える素材のベルトにより、軽く締められている。
靴も革のようなもので作られたレディースサンダル。親指にリングがあるタイプだ。
手首と足首には2つの金色のブレスレットがそれぞれ交錯するようにつけられている。
そして、その少女の正面には少女の方を真っ直ぐ向いた蒼色のリングと翼を持つ少年。
空色の髪の前髪は少し伸ばされ、少年の右目は少しだけ隠れていた後ろ髪は少しだけ上に跳ねている。
もはや神界の法則か何かなのか、とすらツッコみたくなるが…
整った顔立ちで、100人に聞けば45人は可愛いといい45人は格好いいと言う見る人によって意見が変わる万能…なレベルだった。(なお、残りの10人はやっかみなどが理由であり、本心はどちらかに位置する。)神様って強い。
やや狐目な感じではあるものの、吊り目ではない…鋭さは感じない不思議な、見る人によって全く違う印象を受ける水色の目。
服は鼠色のコートのようなもので、肩から足首まである。
また…所々が光を反射しているところや、見た目の質感から革のように思える。
胸、腰辺りにポケットがあり、コートのボタンは材質は木のような、茶色で十字の形をしている。
靴はというと黒色で、ロングブーツの形をしていた。こちらも…革のように見える。止め具で締めるものではなく、ジッパーで閉じるタイプのようだ。
余談だが、この二柱の神様の容姿から受ける第一印象は、“優しそう”と“冷静そう”、である。
そんな二柱のうち、少女の方が、呆れたような、あるいは感心したような口調で呟いた。
それに対して、少年の方は…少女に対して呆れたような、呆気にとられたような声で返したのだった。
この神様である少女たちがいる切り株は、小さめに見てもおよそ半径100mはある。そんな巨大な古い神樹の切り株の縁に、少女は腰掛けて、少年はあぐらの状態で乗って座っていた。
なお、少年少女とは言ったが。
実際は容姿が少年少女と言えども神様だし、そもそも少年少女なのは外見だけで、実年齢は200歳程はある。
そんな神様同士の会話は続く。
「まぁ神界より……人…神…あー、面倒だ。人が多いし、何より知識が当たり前のように独占されず、教えられて受け継がれていたり、知識を得る権利があってそれを知るための本、情報網やツールがある。中には遊ぶための娯楽にも新しい発見、新しい知識は溢れているから…ね。」
そう少女の対面に座っていた少年は解説するような口調で…自分の声に被せるように言って、少女の呟きに答えた。
「………んー…。さらって言ってるけどさ…人が多いとか、知識が溢れてるとか…やっぱり、そういうのだけじゃ考え付くものじゃないんじゃないかな~、なんて私思うんだよねぇ…現に、憶測じゃなくて一部の“世界”はそうだし。」
ややあっさり返されたことに不満なのか、そう少しふてくされた声で少女は返す。
「うーん……まぁ、ね、そりゃ…想像力とかもすごいんじゃない?文明の力というか……事実、あの“世界の魔力量”…とか諸々のせいもあって開発はできてないだけだし…ね。技術の進歩で解決できることも多いけど…確か、web…小説、とかだったよね?これが書いてあったのって?」
慌てて言い繕うようにそう言い直した少年は、付け加えるように、確認の意を込めた質問を少年は投げかける。
「うん。そうだよ。“窓”でいつも通りいろいろ見てたら、一つの“窓”でその“うぇぶ小説”を書いてる人をまた見かけたからね…面白そうな事ありそうだなーっと思って見ていたんだけど、そしたらこれが…ね。」
「ふーん…発想が凄いよ、ほんと」
そう言って少年と少女が視線を落として、じっと見たのは…
ー向かいあって座っている二人の間にある、2人の言う“それ”…‹魔法のリバーシ›なるものがあった。
“それ”…もとい‹魔法のリバーシ›の本体はこの時点で4m×4mという驚愕の大きさで…
プレイヤーの座る場所の手元には空中にAR表示のような感じで半透明のウィンドウ…スクリーンがあり、そのスクリーンには4m×4mの本体の中の空間の、自分の見たい部分が映しだされる。
そして、そのスクリーンの隣にはメニューなどが映った、コマを操作するためのウィンドウ。
…スケールからおかしかったが、メニュー。なぜそんなものがリバーシにあるのかというと…
…何故か、ほんとにどうしてなのか、このリバーシはスキルやら属性やらステータスやら…RPGのような物がコマ一つ一つにあったり、相手のコマの色を変える前に戦闘があるという…
魔改造された謎に謎を重ねた‹魔法のリバーシ›だからだった。
ー決して、決して…これを考えた人は魔法の、とかつけたら何でも解決する、とか考えていない。
また、それはリバーシなのか、というツッコミは受け付けていない。
脱線したが、最初から化け物サイズではなく、本体の最初の大きさはお手頃で持ち運びにも便利な3cm×3cmという小型サイズなのだ。
そこから表面を叩くことで普通に机の上などでプレイをするための30cm×30cmのサイズになり、参加人数などで形状が変わりつつ、巨大化する(なお、今の4m×4mは、搭載された全機能を使ったり、メンテナンス、新機能を追加する時などに作業がやりやすい適したサイズなのだ)
その上で、コマの設定やらスキルやらコマ数やら戦闘形式やらと、色々と変更し、発想の限り改造を加えて遊べるというデキる(?)代物なのだ。
何がデキるのか、とかツッコんだら負けだ。(対戦プレイヤー数が最大8人まで可能という元々のリバーシの1vs1ルールはどこへやらと思える謎さがそこにはあるが、気にしてはいけない。)素晴らしいね。
「あー…まぁよくこんな手の込んだもの作ってみようと思ったよねぇ、作ったの僕だけど……今更思うんだけど、僕に作らせたのは何で?」
と少年…いや、‹“創造の神”アム›(通称アム)は少女…‹“生命の神”ライファル›(通称ファル)に言った。
ーさて。何度目のさてかは置いておいて、神には
従神→下級神→中級神→上級神→最高神
というように、“位”もしくは”級”、“格”と呼べる順のようなものがある。
従神は神になる前の神(主に生まれたばかりの神)や、ある神の次代の神、神としての力があるものの経験が足らない神、神の法に抵触し、従神まで減格した神など…の位。見習いの神。
下級神は、花や人形といった様々な物を司る神。
中級神は恋愛や言葉、季節や音、光などの形なき物の神。
上級神は生命や属性といった、仕組みの根幹を司る神。
最高神は、世界神、破壊神、時空神、空間神、全能神、創造神など…
司る物が大きい事により、神の力を少し行使するだけで世界を瞬間で支配したり、作り出す、破壊するなどができる神などだ。
…とは言っても、目安のようなものであり、下位でも上位のレベルの力がある神も普通にいる。やはり、神様は神様である。
その中で生命神は上級神、創造神は最高神に位置する。
さて、アムの疑問に対して、ファルの答えはというと。
「いやーだってさー。こういうのってさ、面白そうじゃん?」
…面白い事主義な答え(答えになっていない)をニコニコした顔で言い放つ。それを言い放たれた当人は「面白そうじゃん?」という答えに対して…
「いや、面白いけどさ………はぁ…」
と、非常に渋い…困った顔で返す。
別に的外れという訳でもない。確かに面白いし、頼む相手も間違ってはいない。むしろ適正だ。
創造神ということもあり、伸縮自在や機能の組み込みくらいなら造作もなくできるためすぐに作り終わった。
のだけど、このリバーシに組み込まれている“一部の空間の時間を止める”、や魔法の付加等は通常の”創造”から見て、かなりの“神力”を要したのだ。(まぁ神なので、メモリ的に見ると本当にミリ以下の、微々たるものなのだが…。)
「というか、ファルが魔法で作れば良かったろうに…どの神だって多少程度の違いがあっても全魔法使えるんだから。」
もう作ったので今更でしかないのだが、何故ファルが自分で魔法で作らなかったのかを疑問に思うアム。
アムが言った通り、神は基本的になんでも出来る。これを自分が作る必要は全く無い。適材適所ではあるものの、あくまでただの娯楽である。
そのご最もな問いに対してファルは単純簡潔に…
「だって、私が魔法で作るよりアムが神力で作る方が機能とか質とかが全然いいじゃん!」
と、すごくいきいきした顔で断言してくる。
それを聞くと作った側のアムとしては、達成感や喜び、嬉しさを感じられるのだが…
その感覚と同時に、アムの中にほぼ強制的に、何とも言えない悲しみと虚無感のようなものを作り出し、それを植え付けるファル。
(ある意味僕より創造神だ…。)
ーそう思うと同時に…
(…僕…これ作るべきだったのか…?)
という悔恨の念が浮かんでくるアム。
僅かにでも、心のどこかで求めていた真面目な答えではなかったので、やはり若干落ち込んでしまうアムなのだが…
(…いや、ファルに真面目さを求めても無駄か)
と、そう思うことによって立ち直った。
(わーい、思考の切り替え万歳。)
ー内心で、切り替えの大事さを噛み締めつつ立ち直るアム。
その表情は、苦い顔から一転して笑顔になる芸のような変化を見せる。
そんなアムを見たファルはというと。
「なんでそんな突如として晴れ晴れした顔に変わるの?まるでさっきまではスピード宝くじが外れ続けてたけど、今は最後の一枚で一等賞を当ててラストワン賞も貰った感じ。」
そんな下界を見て覚えた、分からなくもないような例えを言う程、不安になっていた。
いや、その表現は正しくない。正確には現実逃避をしていた。アムの表情から、何かを悟っていたのかもしれない。
そんなファルに対して…
「いや、何でもないよ?」
と、やけにニコニコした顔で返すアム。その心はというと。
(ファルには悪いけど負かす…絶対負かしてやる……!!)
…とか、顔に出さず考えていた。
それは事情があるのかも、と深読みして玩具を本気で作ってしまった…という悔恨の行く末。
反対に、ファルはアムのニコニコ顔が何と言うか、直視できないようなオーラを纏っているような気がして怖かった。指摘するのも怖いけど、指摘しないのも怖いので…
「わぁ、怖い。怖いよアム。まるで裏があるとしか思えない笑顔。」
と、気にしてない風体を装う事も忘れて、言葉はそのままに思いっきり怖がりながら(半分程引きながら)言った。
…いや、実の所は忘れた訳じゃ無い。先程の逃避から戻る事が出来ず、未だに現実逃避をしていて出来なかったのだ。その心は、
(うわー、私なんかした?何もしてないよね?あれ?ヤバい、絶対裏あるよね?あわわわわわわ)
と、器用にも現実逃避をしながらパニくっていた。両者共に内心穏やかじゃないものである。さて、ファルのパニックは、
「続きやろうか!」
という、焦れたようなアムの発言で打ち切られて終わった。
そして、魔法のリバーシが始まる。
…アムが、とあることを軽い怒りで失念したまま。
□
二人は魔改造されたリバーシの機能で、普通の時空から自分たちを“ズラして”、自分たちの時を止めていた。
このリバーシは、その機能により、長時間かかるプレイ時間を作るのだ。
…ファルにとっての恐怖の笑顔から、ズレた時空の中で小2時間ほど過ぎた頃………ズレた二人がいる時空内では対戦が終わり……
「うわーーーーーん!!!負けたぁああああああああ!!!!」
搦め手で圧勝されて負けたファルが泣き叫んでいた。それはもう号泣である。
その横には慌てふためいたアムが居た。アムの内心は勝ったにも関わらず、傍から見ても分かるほどに焦りに焦っていて、とても穏やかじゃなかった。
(あー、やばいよ…やっちゃったよ…。
負けたら泣いちゃう負けず嫌い…じゃなくて、泣き屋さんってことすっかり忘れてた…あー…!
…不味い、早く止めないとまずいことになる…!今、もしも”アレ”がきたら…!)
と、空中に浮かぶ“あるもの”を見た瞬間から、危機感を感じながら必死に思考したアム。
そして。
「…っえと、相変わらずファルって行き当たりばったりな戦法だよね……。こういう系のゲームに弱いのかな……?あ、いや!大丈夫だよ!やっぱりさ、きっと、ファルもよく考えるようにすれば強いからさ!」
とにかく、忌避する事態だけは避けねば、と考えどうにか慰めようとして、元気づけるように優しい口調で言うアム。
当人は焦っているなりに、必死に、泣き叫んでるファルを落ち着かせようと動いていた。もし他の人がその手が身振り手振りで伝えようとさ迷っているの姿を見れば必死なんだな、と分かって加勢するであろう位には。
だが、そこはズレた時空の中で、神は周りにいなかった。
そして、どういう訳か……口の方ではよく考えると火に油な発言をしてしまっているアム。
しかしテンパり過ぎて…遠まわしに、“考えて行動できていない”と言ってしまっていることに自分では気付けなかった。
そして、こういう時のお約束なのか…何故か言われた本人であるファルは気付いてしまう。
ーその発言に気付いたファルが、アムの忌避していた事態を…引き起こす。
(プッツーン…!)
ーそんな音…確かにアムの耳には、“糸の切れるような”音が聞こえたのだった。
そんな訳ないだろうと思いながらも、確かに聞こえたアム。
(わ……、嘘だろ?なんか今切れるような音したぞ?んな馬鹿なっ、でもな…幻聴だと…いいな…じゃないと…あれが…!)
と、その刹那の思考から次の瞬間。アムの恐れていた事態が起こってしまった。
ーそして“それ”に対して、パニックだったアムは思考を変えて対処する事に、ほんの数瞬とはいえ遅れてしまう。
「うわぁぁぁああーーーーーーーーーーん!!!!そんなはっきり言わなくていいじゃんかぁぁぁああああ!!!」
泣きの度合い、叫びの大きさがより強く、大きくなり…“それ”が発生する。
“それ”を見たアムは、冷水を浴びたかのように思考を転じさせ…
ー冷静に力を展開しながら、時間を加速させて、神の速度で叫ぶ。
「あっ、ちょっと!待て!“それ”!‹死のエネルギー›が出てるって!せめて‹生命の窓›を閉じてっっ!!!」
ー生命神。上級神に位置する神の一つ。生命の力や、生命に必要なエネルギー、生命の肉体、“生”と“死”を司る。
名前の通り生命の創生、生命の操作、蘇生、破滅など…
“生命”が関わるものに関する権能を持つー
アムの言った‹死のエネルギー›とは、生命神の権能である‹死ノ力›という権能の中に含まれる力の一つ。
生命神であるファルは、‹生ノ力›の派生である‹生のエネルギー›と同様に、‹死ノ力›の派生である‹死のエネルギー›を使うことができる。
この‹生ノ力›と‹死ノ力›は、簡単に言ってしまえば、“生命力”を操作する権能だ。
生命力は活力であり、目には見えない生きる為の力である。
それを強化すると凄まじい影響力により肉体にも作用し、超人的な再生力、健康状態がまるで衰えることのない健康体などを得る。
そんな生命力は、ある度合いまでなら人でも修練することで操作できる。
しかし生命を司る神である生命神は、それより1段階上…生命力を越えた上位である力として昇華した物…“神生力”を扱う。
名前の通り、生命力を強化するだけでは達しえない。寿命の無視や度を超えた再生といった、まさに神の力と言うべきもの。
その“神生力”をプラスに扱うのが‹生ノ力›本来の力。
では‹死ノ力›は何か。それは…マイナスに扱う権能。生き返ったりするのが正であり生。その逆の、死に至ったり、回復することの無いような不調を感じる負であり死。マイナスに力を発揮する神生力を与えたり調整、吸収する事で、神の領域にまで減少させる。
しかし、“神生力”は神の力と同等であり簡単にそれを人へ付与したり、逆に吸収したりしようすると大変な事になる。
大変な事というのは、人の身で神の力は収まりきらずに、本人だけでなく周りを巻き込んで死ノ力を撒いてしまったり、人から別の存在へと昇華したりする。
そこで神の力からダウングレードさせた力が、通常の生命力を扱う‹生のエネルギー›と‹死のエネルギー›だ。
‹生のエネルギー›は“一時的な”少し強い生命力として肉体に与える事により、生命に命を与え、活力を与え、傷を癒やし、状態を正常に戻し、祝福をもたらす。
‹死のエネルギー›は、少し負の力を付与したり、生命力を吸収してしまうことにより、生命から命を奪い、活力を奪い、弱体化•衰退させ、正常な状態より悪化させ、絶望をもたらす。
そんな権能を持つ生命神のファルだが、現在ファルは、神様なら誰でも使える‹窓›と呼ばれる権能ではなく…生命神の権能の一つである‹生命ノ窓›と呼ばれる権能を使い複数…それも数百は下らない数の窓を開いていた。
‹生命の窓›。窓の強化版で、自分の対象とする生命の魂や、その肉体に存在する生命力と‹窓›の力を繋げることにより、魂から直接侵入して肉体状況や思考、魂に刻まれた情報などから、相手の生命の残りの推測寿命、発症している病気、血液型、生体状態などからステータス、位置、心理までの、魂から辿れる情報全てを知ることができる。
また、魂をターゲットにすることで、普通なら絶対にロックの外れない、対象に影響のある窓を開く。
ーこの“影響”が大きいのだ。
‹生命ノ窓›の使用者の設定や、追加効果にもよるが、普通の設定の場合、回復魔法、支援魔法を相手にかけるのは勿論だが、攻撃…物理ダメージや特殊ダメージすらも肉体的、精神的な防御を無視して与えるのだ。
支援などの効果は一切漏れず効果が高い。そして、ダメージは防御が無意味どころか通常防御を通してダメージを受けるので、その攻撃の影響は計り知れない。
ーそしてそれは…権能である‹死のエネルギー›も例外ではない。
むしろ、生命神たるファルの使う生命に関する力は雑に使おうとも、見ずに使おうとも、無意識に使おうとも、どんな神より効力の高い精錬されたそれだ。一瞬であろうとも馬鹿にならない。
ー瞬間、アムはその死のエネルギーの種類を見極め、自分の神力を最大まで放出し、その神力をコントロール。
何も、発されるまで実行出来なかったのはパニックによる影響だけではない。生命神による生命の力は神であろうと悪影響を受けるし、物体は創造の瞬間にその特性や種類に合わせなければ透過されるという力なのだ。
神速下であろうとも広がり続ける‹死のエネルギー›と‹生命ノ窓›との間に伸ばす。そして、伸びる途中にも関わらずに、創造の神たる力をもって、見えない空気の“壁”に纏わせて固めるイメージで固めて、固定していく。その間にも並列で伸ばしながら固めていく。
ー光速を越えた、“神速”でー。
そして…ほとんどの‹死のエネルギー›は最高神であるアムの神気操作により到達しなかった……が。
やはり…瞬間的だったこともあり、神気はエネルギー全てを覆い込むほど十分に伸ばせなかった。
その神気の、寸前で届かなかった場所まで来ていた‹死のエネルギー›が、間に合う前に開いていた一つの窓に当たる。
ーそして、その当たった次の瞬間には…アムの神気が‹死のエネルギー›の間に割り込み、‹死のエネルギー›を包み…‹創造神›の権能により消し去る。
しかし。
別の…パニックになっていない可能性の世界では無事だったのだろうか。
残念なことに…
‹死のエネルギー›の当たった窓の対象であった、‹泉高跳羽›は……とても、不幸、という2文字だけでは言い表せないような、悲しい死を遂げてしまっていた。
登場キャラ
ファル 性別:女性 種族:神族 特記:生命神
説明:生命を司る神。感情で能力を強化出来るが
コントロールがまだあまりできない。
そのせいで、事件を起こしてしまう。
アム 性別:男性 種族:神族 特記:創造神
説明:想像を司る神。落ち着きのある性格をしている
…が、実は顔に出さずに内心で焦ったりしている。
軽い仕返しのつもりが、事件を誘発してしまう。
泉高跳羽 種族:ヒューマン 性別:男 特記:???
説明:神の能力によって死んでしまった人間。主人公。