王宮に放り込まれました(くそジジイの独断です)
そんなこんなで一通りの礼儀作法が身に着いた頃、私はジジイの命令で女官として王宮に放り込まれた。
ニムさん当時十三歳。家族が恋しいお年頃ですよ?
もっとも、ふざけんな!って怒ったところであいつを止められる人間なんぞいやしないんだ。さっさと諦めた私は、女官生活を謳歌し始めた。
初めこそ伯爵家の庶子なんて立場の私を馬鹿にして少々のいじめらしいことをしてくれた先輩方もいたけれど、平たく言えば彼女たちは私を舐めてたわけで。
あのね、ニムさんは泣き寝入りなんかしないんだよ。だって、おとなしくしてあげる理由がないし。生粋のお嬢様じゃないから、少々あくどい手だって……ねえ?
詳しいことは省くとして、少しばかり弱みを握って、少しばかりお話した結果、私になにかしてくる輩はぱったりいなくなった。そしてなぜか女官長じきじきに第四王子付きに任命された。
なんでだ?
第四王子のグリュー殿下は十四歳。婚約者に決まったばかりのシュペート・クーベーアー侯爵令嬢は十三歳。年の近い女官を置いたっていいことなんざないだろうに。
「まさかの愛妾候補とか?」
「違います!」
おっと、心の声が漏れてたらしい。間髪を入れず否定する女官長の額に青筋が浮いてる。「あんまり怒ると老けますよ」って言わなかった私エライ。
「よろしいですか、ニムさん。あなたは女官としては規格外すぎます。ですが、その危機管理能力は目を瞠るものがあります。それをぜひ、グリュー殿下のために役立てていただきたいのです」
「はあ」
規格外な私はまるで存じ上げなかったのだが、女官長はグリュー殿下の乳母だったらしい。
そして後で知ったのは、女官長が「あの子は女官としてはダメダメなのでいざという時の盾代わりに」とか言って王子側へ推薦していたということ。
やめてほしいよね、そういうの。うっかり呪っちゃいそうになったじゃない。でも、グリュー殿下もシュペート様もこれと言った危険にさらされることはなく。一年半はそれなりに穏やかに過ぎた。
ところが。
季節が秋に差し掛かろうという頃、波乱はひとりの少女が連れてきた。
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