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こうして私はジジイに引き取られた②

 私は隣の八百屋のおばさんに行き先を告げ、顔なじみの神父様のご厚意でしばらく教会にいられることになった。そして神父様に代筆してもらい、おじいちゃん宛に手紙を書いた。


 ところが、その手紙を出すより早く、いないはずだったもうひとりの祖父からの迎えが教会にやってきたのだ。


「グランチェーナー伯爵?」

「はい。ヨーナス・グランチェーナー伯爵様の遣いで、ニムお嬢様を迎えに参りました」

「なんでまた」


 てか、お嬢様ってなんだ?


「それは、あなた様のお父様――アルブレヒト・グランチェーナー様は、グランチェーナー伯爵家の後継ぎでございましたから。庶子とはいえ、伯爵家の血を引くお嬢様をおひとりにするわけにはいかないと旦那様はお考えです」

「…………貴族?」

「さようでございます」


 あの、父が?変態の中の変態、妖怪“パンの虫”だったお父さんが、貴族?


「嘘ですよね?」

「いえ、ほん……」

「嘘ですよね?嘘でいいから嘘って言ってください!」

「ええっ?う、嘘、ですぅ?」


 ありがとう、おじさん。

 お父さんが貴族ってのは、伯爵家の使用人だという迎えのおじさんに、思わず食って掛かったくらいの衝撃だった。そして、優しいおじさんはちゃんと嘘だって言ってくれた。嘘だったけど。


 それにしても、なんてこった。お父さんが貴族だったおかげで、下町のパン屋の娘が伯爵令嬢にジョブチェンジだよ。伯爵の孫を伯爵令嬢と呼ぶかは知らないけどさ。


 会ったこともない貴族のおじいさんがおじいちゃんの方に手を回したとかで、実質私の行き先は伯爵家しかないらしい。

 他の選択肢はないって、人のいいおじさんは心底申し訳なさそうに頭を下げた。見知らぬジジイが無茶ぶりしてごめんよ、おじさん。


 しかしてグランチェーナー伯爵とかいうジジイは鼻持ちならんやつだった。なにしろ、私を見た第一声が「使えんな」だったんだから!


「アルブレヒトに似ていれば使えたものを。なんだ、その腐った魚のような目は」

「そっくりそのままお返しします」


 今まで、母親似だと思ってた目つきの悪さは、どうやらこのジジイ譲りだったらしい。

 正直、死んだ魚のような目をしたジジイに腐った魚の目とか言われても困る。

 率直に言い返してみたら、面白がられた。なんかこう、ひきつったっていうか、むりくり口角を引っ張り上げたみたいな怖い笑顔を浮かべて笑うジジイ。

 怖いよその顔。


「女にしておくには惜しいが……実は男だったりはせんか?」

「生まれてこの方三本目の足が生えてたことはありませんね?」


 せめてもの反撃と笑いながら返すと、ジジイは……おい、なんで怯むんだよ。私の笑顔はお前の数百倍愛くるしいだろうが。

 ジジイは私を忌々しそうに睥睨して言った。


「ひとまず、エマとミヒャエルに会ってもらう」


 会うのはいいんだけどさぁ。じーさんよ、とりあえずそれが誰なのか説明してくれ!

お読みいただき、ありがとうございます。

ニムさんは、顔から性格からジジイ譲りです。娼館のおねーさんたちに鍛えられた分、ジジイより厄介かも?

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