自称ヒロインの奇行(危行?)③
結果から言えば、ええ、いましたとも。
庭園のガゼボでお茶をするゼクト殿下とマリア様がばっちり見える位置の植え込みの陰に隠れてやがりましたよ、あいつ!
しかも、お仕着せで地面に座り込むなんてばっちいことしてくれてるし!
この後も仕事あるんだってわかってるんだろうか?
ああ、その前に覗きは犯罪だってことから教えなきゃいけないのか。疲れる。
「ヘーレーン、ここでなにしてんの!」
「あら、ニム。しーっ、バレたら大変なんだから」
こっちはお前のおかげであっちこっち走り回って大変だったっつーのに、なんて言い種だ。
「知ったこっちゃない。私はアンタが仕事サボってここでなにしてんのって聞いてるんだけど?」
「仕事?そんなのどうでもいいじゃない。今は明日のパーティーにゼクト殿下と一緒に出るためにタイミングを見計らってるんだから邪魔しないで」
こいつ……ッ!
人の半分以下の仕事しか任されてないごく潰しのくせに、なんでこんなに偉そうなんだよ、腹立つなぁ!
ヒロインがなんぼのもんじゃい!
もっとも、ヘレンの策略は失敗に終わる。
ヘレンが私に話したことは、女官長を通して全部王族に筒抜けになってるから、ゼクト殿下がよっぽど馬鹿か遅めの反抗期じゃない限り今日マリア様とケンカすることはないはず。
変なとこで紳士なゼクト殿下は、女性に手を上げるってことをしたくないらしい。
一応女の子なヘレンを「ぶっ叩けないからできるだけ近付けないでくれ」って女官長にお願いしてまで避けてるって第一王子宮の女官さんたちが言ってた。
って、ちょ、ヘレンさんその蜂の巣どっから出したの!?んでもってなんでマリア様に向かって投げた!?
素早い……。止める暇もなかったよ。
蜂の巣自体はマリア様に当たる前にゼクト殿下が叩き落してくれたけど、いきなりぶつけられた悪意にさっきまでにこにこ笑顔だったマリア様は泣き出しそうだ。
いきなりあんなもんが飛んできたらそりゃあ怖かろうて。
「よーしよし、これでマリアがゼクトをぶっ叩いて……あれ?」
叩くどころか、しがみついてますね。
しかも、おふたりの周囲にお花が飛んで(物理)ますよ。
ケーニッヒシュタイン家の侍女さんすげーな。
そしてゼクト殿下はハンカチで涙を拭いて抱きしめてあげるんですね。なるほど王子っぽい。王子だけど。
ダメ押しでデコチューとか、やりすぎじゃないっすかね?
口からなんか甘いもん吐きそうになるんで正直やめてほしい。
ほらぁ、マリア様だってびっくりして固まってる……いや、なんかいい雰囲気デスネ。
えーっと、なになに?
「怖い思いをさせてすまない。中に新しくお茶を用意させるから、仕切り直しをさせてはもらえないか?」
「ゼクト殿下のせいではございませんのに……でも、お気遣いありがとうございます。とても嬉しゅうございますわ」
「では、新しい会場までのエスコートも任せていただけるだろうか」
「ええ、よろしくお願いいたします」
ですってよ。
気取った仕種でマリア様に手を差し伸べるゼクト殿下。マリア様はそこにそっと手を預ける。
ふたりは微笑み、寄り添い合って城の中へ入っていった。
さて、ヘレンはどう出る?
いい気味だな、悔しそうだ。リンゴみたいにお顔を真っ赤にして怒ってる。
ま、当然か。ここでおふたりがケンカしなきゃ、パーティーでのエスコートなんて夢のまた夢だからな。
ざまぁ!
え、なんでニムさんが殿下方の言ってることが分かったか?
読唇術は情報収集の基本ですよ。身につけないなんて選択肢あり得ないね!
さーて、ヘレンの悔しがる顔も見たことだし、仕事に戻ろうか。
私は怒ってきーきー言ってるヘレンの首根っこをひっつかんで、文字通り彼女を引きずって帰った。
周りの視線?今さらだよね!
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