とんでもないのがやってきました②
「女官長、ちょっと」
「わかっています。グリュー殿下、シュペートお嬢様、お騒がせいたしました」
「ううん、びっくりしたけど、おもしろかったから。ね、シュペートもそう思うでしょう?」
「え、ええ。とても……そう、独創的な方でしたわね、殿下。クララもニムもどうか気に病まないでくださいね」
引きつった顔で取り繕うグリュー殿下とシュペート様の優しい言葉に見送られて、私たちは退室した。
しばらく歩いて、時期外れのリネンなんかが収納されている部屋に入り――ドアを閉めた直後、私は女官長の胸座を掴んで揺さぶった。
え?貴族令嬢のやるこっちゃないって?知ったことか!
「なんですかあれ、なんなんですかあれ!私あんなの教えらんないですよ、一回返品」
「不可です」
いやあああああ、返してぇ!差し戻させてぇ!
がっくんがっくん揺さぶられながら、女官長はこめかみを押さえた。
「わたくしだって、あれは想定外です。変わり者はあなたで慣れたつもりでしたが、まさかあれほどまでなってないとは」
「なんで挨拶したら帰れるとか思ってんの?いやそれよりも先輩とか上司に対する態度がなってないし、王族に対してはいっそ不敬!相手がグリュー殿下じゃなかったら投獄されて首ちょんぱですよ!?」
ふぅー。
私に揺すぶられるまま身を任せた女官長はため息をついて、顔にでかでか「諦めました」って書かれてそうな遠い目で言った。
「来てしまったものは仕方がありません。いくらなんでも全く使えないなんてことはないでしょうし、しばらく様子見ですね。仕事に関しては最初の予定通りあなたが指導を。ただしあまり難しいことはさせてはいけませんよ。ボロが出ますからね。礼儀作法はわたくしと副女官長でどうにかいたします」
ふふふ……と乾いた笑いを漏らす女官長怖い。
思わず手を離すと、女官長はいきなり大真面目な顔をして「いいですか、ニムさん」と私の鼻先に指を突きつけた。
「肝心なのは諦めです。そうして長いものに巻かれなければここでは生きていけませんよ」
「女官長……」
青春物語なら、ここで感動して涙を流すシーンだろう。こう、「どこまでもついていきます!」的なやつ。でも、でもね女官長。
私はそんなこと、知りたくなかったよ!!
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