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#147 《氷雪の乙女》

 

「なにが……どうなってやがる」


 未だ立ち上がることの出来ないガレスは、目の前の光景にただ戸惑う。

 戦乙女ローゼは力尽き倒れている。おそらく、八つ目の竜種の咆哮を防ぐために、なけなしの魔力を使用して巨大な剣を呼び出したことで、体力と魔力に再び限界がやって来たのだろうと想像出来た。


「王国……騎士団?」

「はい……間違いなく王国騎士です。ですが、おそらくあの方は、総団長。総団長、クレア・イクシード様かと」


 装いと、噂に聞く特徴から間違いないと、フィリスは付け加えた。

 なぜそんな大物がココに? と言う疑問は隠せないが、自分達が動けなくなってしまった以上、彼女に頼るしかなかった。二人は、見守ることしか出来ない。


「見たことない竜種ね。知能も異常に高い」


 八つ目の竜種は、明らかにクレアを警戒している。

 一定の距離を取り、様子を窺うようにジロリと八つの瞳を向けていた。

 もともと知能の高い竜種でも、あまり見られない行動だ。


 倒れたローゼを庇うように、クレアは一歩前へ踏み出す。すると、八つ目の竜種は同じように一歩後退する。


「なるほど。理解しているようね……」


 呟き、ゆっくりと前へ進む。

 そして、十分にローゼから距離を確保したところで、声を上げた。


「そこの貴方達。動けるかしら?」


 倒れたローゼの更に後方で、座り込むガレスとフィリスだ。


「もう魔境化の影響は少なくなっている筈よ。さっきよりかは、身体が軽くなっているんじゃない?」


「ッ!?」


 クレアに言われて、二人は初めて周囲の雰囲気が一変していることに気が付いた。

 先程までの重苦しい異常な雰囲気が落ち着いている。だが、周囲の気温が下がり肌寒い。

 まるで周辺に漂う冷気が、魔境化という現象を和らげているようだった。


「ロゼを連れて下がってもらえる? そんな所に転がられてちゃ邪魔でしょうがないわ」


 確かにあんな所に人が倒れていては思うように動くことが出来ない。

 王国騎士団の総団長と言えども、目の前の異様な竜種相手では誰かを庇いながらの戦闘は不利と判断したようだ。


「兄さん!」

「あぁ!」


 身体の至る所が痛むが、どうにか立ち上がることが出来る。


「チッ! 魔境化って奴はどれだけ厄介なんだよ!」

「はい。ですが今ならなんとか行けそうです!」


 魔境化という現象が、知らずのうちに身体中の魔力操作を阻害させていた。

 先と今とでは、体の軽さが大違いだった。


「悪いが、今はアンタを頼らせてもらうぜ」


「えぇ。でも、私の目の届く範囲で留まって頂戴ね」


 軽く頷いてから、ガレスはローゼを抱え上げる。

 八つ目の竜種の相手をクレアに任せ、ローゼを連れて逃げることは可能だが、万が一あの竜種がクレアの隙を突き追ってきた場合に対処が出来ない。

 ガレスは大人しくクレアの指示に従うことにした。


 そして王国騎士団総団長の戦いを見守る。


 ◇◇◇


 クレアは、上げた右手を勢い良く振り下ろす。

 するとどこから現れたのか、巨大な氷の塊が八つ目の竜種の頭上に出現し、堕ちる。

 八つ目の竜種の逃げ道を塞ぐ程に巨大。まるで、氷の天井が出現したかのようだ。


「そのまま潰れてくれたら楽なのだけれど」


 だが、八つ目の竜種の瞳がギョロリと氷の塊を睨みつけると、まるで水が弾け飛んだかのようにクレアの氷は霧散してしまう。


「ッ!?」


 目を見開く。


 あれだけの大きさの氷の塊。

 クレアが魔力を込めて作り出した物が、綺麗さっぱり消え失せた。


 あのローゼが遅れを取ったのだから、この程度で仕留められるとは考えていなかった。

 だが、今目の前で起こった現象は予想していない。


(今のは何? 何が起こったの?)


 有り得ない反応速度で躱したり、咆哮(ブレス)などの攻撃手段で物理的に破壊されたのなら納得は出来る。

 しかし今、あの八つ目の竜種は何もしていない。ただ()()だけだ。


「あの八つ目か……」


 ならばやはり、怪しいのは不気味な八つの瞳だと当たりをつける。


 そう考えを巡らせている時、八つ目の竜種がグルンと首をコチラに向ける。


「ッ!!」


 即座に、クレアは動き出した。


(あの目に見られるのはマズイ気がするわね)


 ここまで何度も八つ目の竜種に見られているが、何か実害がある訳ではない。

 しかし今実害が無いだけで、これから何かしらの異常が起こらないとも言い切れない。魔力の吸収、状態異常や呪いと言った現象が遅れて発生する可能性もあるのだ。

 なにより、実際にローゼが戦って、敗れているという事実がソコにある。


(だったら、本気を出した方が良さそうね!)


 八つ目の竜種の瞳に、出来るだけ自分の姿を映さぬように翻弄しながら、パチンと指を鳴らす。

 すると、ビキビキと音を立てながら空気中に漂うクレアの魔力が集まり氷の塊が出来上がる。大きさは人一人程度。そして、次第にキメ細やかな装飾が浮かび上がると、『クレア・イクシード』本人と全く同じ姿の人形へと様変わりした。

 クレアが魔法で作り出した、自分自身の氷の人形だ。


(行きなさい)


 クレアの意思に従うように、氷の人形は動き出す。

 八つ目の竜種へと、人形は駆けた。人形もクレア同様、不規則な動きで八つ目の視線を躱している。

 まるで意思を持っているかのような動きに、八つ目の竜種は翻弄されているようだった。

 人形が肉薄し、いつの間にか手にしていた長剣切りつける。八つ目の竜種は即座に反応し人形へ食らいつこうとするが、今度はクレアがソレを許さず、一瞬で出現させた氷柱で攻撃を仕掛ける。

 誰の目から見ても完璧な連携に、八つ目の竜種は防戦一方に見えるが、クレアも有効と言える攻撃を浴びせることが出来ない。


 そして――


 八つ目の竜種が大きく後退する。


「ッ!」


 巨体に似合わない俊敏な動き。

 おそらく、背に生えた巨大な四つの翼がソレを可能に来ているのだろうとクレアは歯噛みする。


(私を相手に遊んでいるつもりなの?)


 八つ目の竜種は地面に足をつけている。

 あの大きな翼と今見せた動きがあれば、『空』という絶対的な優位な位置を取ることが可能だが、どういう訳かソレをしてこない。


「魔獣のくせに油断なんて――」


 そんな毒を吐いた所で、八つ目の竜種の口腔に魔力が集まっていることに気付く。

 咆哮(ブレス)だ。


「なんていう魔力……」


 あまりにも濃密な魔力のせいで、集まっている周囲の風景が歪んで見える。

 ここまでの魔力を集中させて放つ咆哮など、見たことがない。いや、過去に一度だけ見たことはあった。


幻竜王(バハムート)……」


 思わず溢れた言葉にハッとする。


「貴方達!! もっと下がりなさい!! 後ろへ!!」


 咄嗟に振り向き、離れた距離で身を寄せるローゼ達三人に向けて叫び声を上げる。

 八つ目の竜種が大きく後退したことで、今の位置関係では全員が咆哮の影響を受けてしまう。

 あの状態のローゼが、万が一にもあれほどの咆哮を受けてしまえば、死んでしまう。


「――――――――ッッッ」


 そして咆哮は放たれる。

 巨大な魔力の奔流がクレア達へと迫る。

 本来なら、クレアの力と能力があれば躱すことは容易だが、背後には倒れたローゼと彼女を庇う二人がいる。

 回避という選択肢は無かった。

 こうなることを見越していたのか、八つ目の竜種の表情が歪んだような気がした。


氷雪の乙女(アイス・メイデン)!!」


 クレアが叫ぶ。

 呼応するように、即座に先程の氷の人形がクレアの前に姿を現した。

 クレア達を護るように、迫りくる咆哮の前へ立ち塞がる。


「ッ! 我が盾となり、この身を護りなさい!」


 クレアが氷の人形に触れ、声を荒げた。


「『氷雪姫の大盾(ヒルドル)』!!」


 パキィン――という甲高い音と共に、瞬く間に人形は姿を変えた。

 人の大きさから、主を護るための巨大な氷の盾へと。

 まるで、氷で形作られた煌びやかな華のような造形の盾は、クレアとその背後にいる三人を護るには十分な大きさだ。


「ぐっ!」


 前へ伸ばした両手に、激しい音と衝撃が大盾を介して伝わってきたのは、すぐのことだった。

 八つ目の竜種の咆哮が、クレアの大盾へとぶつかる。

 大盾を介して伝わってくる手応えから、やはりとんでもない魔力の奔流なのだと分かる。

 そして衝撃が収まらないことから、八つ目の竜種は大盾ごとクレア達を消し飛ばすつもりに思えた。


 パキン――と、華を模した大盾の装飾が一部欠け、割れていく。

 欠けた箇所が脆くなり、その割れは伝播していった。縦に亀裂が走る。

 しかし、すぐさまクレアが新たに魔力を込めると、大盾は再生する。

 大盾の維持と再生。

 どちらか一方でも疎かになってしまえば、たちまち弾け飛んでしまいそうだった。


(このままじゃっ……!)


 いずれ魔力が尽きてしまう。

 いや、魔力以前に……八つ目の竜種が仮に相手の魔法を無力化出来る類の能力を持っているのなら、この大盾もいつ消失させられてしまうか分からない。

 ソレをしてこないのは、ただ遊んでいるだけなのか、コチラの魔力切れを誘い、確実に倒そうとしているのか……クレアには判断がつかない。


「クレアさん」


 などと考えを巡らせていると、いつの間にかひとりの少女が隣にやって来る。


「!?」


 大斧を持った少女。

 ローゼを庇い、後方で控えている筈の二人。そのうちのひとりだ。


「あなた……何を考えているの!? 早く退ざりなさいっ」


 なんとか大盾で敵の咆哮を凌いでいる状況。

 敵はおそらく、魔法を無力化出来る能力を有しており、いつクレアの魔法が消失させられてもおかしくはない。そして身動きも出来ない。ハッキリ言って詰んでいる現状で、少女がクレアの傍までやって来たのだ。


「私も戦えます」


 そう言いながら、巨大な斧を構える。


「その斧は……」


 ひと目見れば分かる。

 少女が構える大斧から発せられる、とてつもない魔力。


「駄目よ。それでも危険過ぎる。貴方達は、ローゼを連れてここから離れなさい」


 彼女が持つ大斧なら、もしかしたら八つ目の竜種に有効な負傷(ダメージ)を与えることが可能かも知れない。そう思わせる程の存在感が、この大斧には確かにある。

 だが、それでもクレアは、彼女の参戦を認めない。

 こうなってしまっては、二人にはローゼを連れて逃げてもらう以外の選択肢が無い。


「あの竜種は、私達を追ってきますよ」


「……」


「私達では、あの竜種に手も足も出ません」


 彼女の言う通りだ。

 現状を打破しない限りは、クレア自身にも勝ち目が無いように思える。そして次に狙われるのは、逃げたローゼ達。ならば、ここで倒すか撃退する以外に道は無いのだ。


「私はあの竜種に勝てませんが、現状を変えることなら出来ます!!」


「あなた……」


 自分の妹と、そう歳が変わらない少女の力強い瞳がクレアを射抜く。


「ッ……信じていいのね?」


「はい」


 尚も八つ目の竜種の咆哮が弱まる気配は無い。

 やはり、確実に倒すためにコチラの魔力切れを狙っているのだとクレアは判断した。


 現状を変えるために、クレアは少女に賭けることにした。


「私が合図をしたら、大盾を解除して私の後ろにさがって下さい!」


 すると、大斧を構える少女はそんなとんでもない発言をする。

 今大盾を解除すれば、八つ目の竜種の咆哮が容赦なく自分達に襲いかかるだろう。躱す余裕など無く、ただ直撃し、呑まれる。当然、ただでは済まない。

 魔力を失い、倒れているローゼは死んでしまう可能性が高い。

 馬鹿げた行為ではあるが、今更迷っている時間も無かった。

 それに、こうして耐えていても同じこと。遅いか早いかの違いしか無いように思えた。


「この咆哮をなんとかします。ですが、その後のことは……お願いします」


「……わかったわ」


 少女が腰を深く落とし、大斧を構える。

 黒と金を基調とした装飾が施された大斧だ。ローゼも似たような装飾の大剣を持っているのを見たことがあった。使われている素材も、予想がつく。


「……3」


 少女が数字を数える。


 クレアは、自分の魔法(大盾)に意識を集中させる。


「……2」


「……1」


「……今です!!」


 瞬間、魔法を解除する。

 大盾はパッと姿を消し、邪魔な物が無くなったことで咆哮が激しい光と共に襲い来る。

 そしてクレアはすぐさま、少女の背後に身を隠す。


「こんな所で死ねない! 幻竜王(バハムート)よ、私の全部をあげるから、こんな物……消し飛ばして!!」


「ッ!!」


 少女の魔力が大斧に流れ込む。


「やぁぁああああぁぁあッッ!!」


 大きく一歩を踏み出し、少女が勢いよく大斧を振るった。

 咆哮に激突し、せめぎ合う。あれほどに強力な咆哮に負けず、遂には振り抜かれた。

 すると、八つ目の竜種の咆哮は見事に割れ、消失した。


(勝機ね)


 この一瞬出来た隙を、クレアは見逃さない。

 割れた咆哮の間を一直線に駆け、八つ目の竜種へと肉薄した。


(ここで仕留める!!)


 瞬く間に懐に入り込んだクレアは、見上げる程の巨体。その顔面目掛けて跳躍する。体を捻り、高速な回転を加えながら魔法で氷の長剣を創り出す。

 そしてそのまま、八つ目の竜種の瞳に捉えられる隙も無いまま斬りつけた。


「――――――――##$$%$$$#$!!」


 剣戟が、八つあるうちの二つの瞳を潰す。


 跳躍し、クレアが再び地に足を付けた時には、既に八つ目の竜種は悲鳴にも似た声を上げながら空へと上がろうとしていた。


(やはり、最後は空へと逃げるのね)


 しかし、空に上がろうとする八つ目の竜種に影が差す。

 いつの間にか、頭上には巨大な氷の塊が出現していた。まるで空を塞ぐように。


 地に立つクレアは、黙って八つ目の竜種を見上げる。

 その動きを、観察するように……。

 八つ目の竜種は、怨めしそうな唸り声をあげながら、空に出現した氷の塊をギロリと睨みつけていた。

 するとまた、氷の塊は綺麗さっぱり消え失せる。ただ、クレアの目にはその速度が少しばかり落ちているように映った。


「やっぱりその目が、魔法を無力化する力を持っていると見て間違いないようね」


 拓けた空。

 氷の塊を消して、何も無くなった筈の空からクレアが降ってくる。

 クレアが、空へと逃げた八つ目の竜種を見下ろしていた。


「下にいる人形と私、見分けがつかなかった? 八つも目があるのに? それとも焦ってしまうと、何も見えなくなってしまうのかしら?」


 どうやら、目に見えるだけで魔法を無力化する訳ではないようだとほくそ笑む。

 手に持っていた長剣を振り上げ、八つ目の竜種へと向かう。


「今更遅いわよ」


 言葉が通じているのかは分からないが、コチラを威嚇してくる八つ目の竜種へ語りかける。

 二つ潰れてしまった八つの瞳がクレアの長剣を睨みつけているが、何も起こらない。


「これは魔法じゃないわ。正真正銘、ただの長剣よ」


 王国騎士団長として持つ。何の変哲も無い長剣。普段は魔力を込めて使っているが、今は一切の魔力を込めていない。

 当然、この竜種の強靭な鱗を穿くことは出来ないが、残り六つとなった柔らかい瞳なら、なんなく穿くことが出来る。


 そのうちのひとつの瞳に、容赦なく突き立てた。


「ッ!!」


 すると、耳を塞ぎたくなるような悲鳴と共に八つ目の竜種は地に落ちる。

 翼を激しく動かして苦しんでいるようだ。


「……なんとかなったわね」


 遅れて地面に降り立ったクレアが呟いた。


 三つの瞳を潰して、大きく負傷を与えることには成功したが、未だに暴れる八つ目の竜種を見る限り……すぐにとどめを刺した方が良さそうだ。

 いつまた体力を取り戻し、空へ上がろうとするか分からない。


 少女の力を借りて咆哮を割くことによって発生した隙を利用して、瞬時に創り出した精巧な氷の人形によって剣戟を浴びせた。

 空に逃げた八つ目の竜種の退路を塞ぐべく巨大な氷を創り出し、クレア自身はその氷の上に姿を隠した。

 氷を消滅させられることで姿を現し、驚き固まっている隙に、更なる一撃を加えることに成功したが……こんなこと何度も成功することでは無い。


 今のうちに息の根を止める以外の選択肢が無い。


「…………」


 手に持つ長剣に魔力を込め、今ももがき苦しむ八つ目の竜種に向かって歩き出す。

 どれほど苦しいのか、竜種はクレアの接近に全く気付く気配が無い。

 今なら簡単に殺せる。


 ――そう思った瞬間だ。


 ――ザグリと、何処からともなく飛来した大鎌が、クレアの進む道を塞いだ。


 地面に突き立った大鎌は、異様な空気を醸し出す。

 自然とクレアの足は止まってしまった。


「ちょっと〜、あまりその子を虐めないであげてよぉ」


「――ッ!?」


 気の抜けたような少女の声。

 スタスタと、横の道から堂々と歩いてくる。


「ってか、何負けてんのコイツ……成功体じゃないの?」


 八つ目の竜種の前までやって来た少女は、冷たい視線と言葉を竜種ひ浴びせていた。

 手を頭の後ろに組み、やる気の無さそうな態度だが、八つ目の竜種に向ける態度は非常に高圧的だ。


「所詮、魔獣はどれだけ進化しても魔獣だね」


 などと呟きながら、クレアの方へと向き直った。


 非常に愛嬌のある顔立ち。

 黒い髪のサイドテールが、彼女の可愛らしさを一層引き立てているが、妖しく光る瞳と……今地面から抜き取った大鎌が、この少女がただ者ではないと物語っている。

 そして、八つ目の竜種な対して高圧的な態度を見せてはいるが、その立ち位置明らかに庇っている。


 即ち、敵。


 クレアは即座に、魔法で創り出した長剣を少女に向けた。


「貴女、何者? その竜種の正体を知っているのね?」


 前に立つ少女と、その背後の八つ目の竜種への警戒を怠らずに質問する。


「おっとっと……そんなに警戒しないでよ、おねーさん♪」


 しかし少女は、大鎌を持たない方の手のひらを上へ向けて、降参の意思を示す。


「邪魔をするつもりが無いのなら、そこをどいてもらえるかしら? その竜種は危険よ」


「危険ww? コイツが? マジうけるww」


 何が可笑しかったのか、クレアの言葉に少女は腹を抱えて笑い出す。


「危険って、ただの魔獣じゃん」


 確かに竜種も、魔獣という大きな括りの中に存在するひとつの種族に変わりは無い。しかし、あれほど強力な魔力と能力わ有している八つ目の竜種を、『ただの魔獣』と言い捨ててしまうのは無理がある。


「あ〜面白い……」


 ひとしきり笑ったあと、少女は再びクレアへと視線を向ける。


「お姉さんは多分……王国騎士団の人だよね? 服装的に」


 そう言った後、少女の視線はスルリと横へ流れる。

 向けられた先はクレアの後方。


「あの後ろで寝てるナイスバディなお姉さんってもしかして……」


 さっきまでとは違う、鋭い笑みを浮かべる少女。


「噂の冒険者……戦乙女だったりしない?」



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