BreakLove 4
今回は翔くん目線で、翔くんの過去の話です。
俺が中学三年生の時だった。そんな出来事が起きたのは。
クラスのみんなの推薦により、俺は体育祭の団長を務めることになった。まさかこんな自分が選ばれるなんて思っていなかった。
体育祭はそれなりに良い結果で終わり、俺にとっては良い思い出だった。
ある日のこと。俺は光一と一緒にサッカー部の練習に行こうとしていた。自転車で走っていると、自転車に乗って止まっている女と目が合った。その場所が俺の家の前だった。
そのことがあって、光一は変な仮説を立てた。“彼女は俺のストーカー”ということ。光一がサッカー部に話したせいで、それは噂となって広がった。
俺には彼女が居たし、その少女はとても可愛いとは言え難い人だった。だから、俺はさほど気にしていなかった。
その少女が友達と一緒に自転車小屋に居るのを見掛けた。俺はニヤリと笑って友人に目配せをして窓を開けた。
「おい!」
彼女が振り替える前に俺は急いで窓を閉めた。俺は人をいじめるという快感を覚えた。
「お前のストーカーって気持ち悪いな。御愁傷様、翔」
「本当、マジ気持ち悪い。消えろよ。つか、死ね」
俺は人気者だった。口も悪いし、態度も悪い。成績もまぁ最悪だ。それでも、仲良くしてくれるヤツはたくさんいた。
部活は冬用の割り当てに変わる。俺達はまたサッカー部にお邪魔した。なぜなら、アイツが卓球部で体育館の廊下で練習しているから。
先生が居る体育館の出入口に行くと、ロッカーでラケットのお手入れをする彼女を見つけた。
『先生、後輩くんが言うことを聞かないです!』
彼女は奥で固まっていた。そして、すぐに顔を反らして逃げるようにトイレに行った。俺はニヤリと笑っていた。
クソ食らえ。不細工ストーカー女め。
生徒会投票の後、彼女のクラスが学級閉鎖になった。
俺は放課後になって彼女の教室に訪れた。名簿を見て、アイツの名前を探した。
『西宮利奈……』
俺はアイツの席に座った。笑えるよな。俺がストーカーみたいじゃないか。
『翔、どうしてここに居るの?』
こんな時に限ってコイツが来る。俺の彼女、咲花が居た。
『いやぁ、忘れ物を取りに来たら間違えちゃったんだ』
『そう……じゃあね』
『ああ』
俺の彼女と言っても、イチャイチャなんてしない。キスも何もしていない。告白されたから付き合っただけだった。
去った咲花を見送った後、俺は立ち上がって玄関に向かった。玄関で寒そうに待っている光一を見つけた。
『翔、遅いぞ。寒いのに』
『ごめんごめんって』
光一と雪が降る街を歩いた。そんな時に俺はこの胸に違和感を感じた。あの顔を思い出して、変な気持ちになった。
彼女のクラスの学級閉鎖が終わったが、彼女に出会すことは無く、冬休みになった。受験勉強ばかりで遊ぶ暇なんて無かった。
しかし、光一と大晦日に神社に行くという約束を無理やり取り付けた。
俺達が集合したのが年明けの時間よりけっこう早かったので、甘酒でも飲んで一息着いていた。
『今年は色々あったなぁ。特にお前のストーカーとか?』
今、その話に触れないでほしかった。俺は光一を睨み付けた。
『もし、俺らの勘違いだったらどうするの?』
俺は光一に聞いた。光一はその時の情景が思い浮かんだのか、蒼白した顔になった。
『そんな、はず……ねぇよな……』
明らかに同様していた。もしも、俺たちの勘違いでだとしたら、彼女は……。
『そうならないことを願うのみだ』
俺はそう言って甘酒を飲み干した。甘酒って美味しいな。
『翔はどこの高校に行くんだ?』
『あっ、俺?俺は……西宮高校かな』
『やっぱり私立か。俺は松島高校、公立を目指すよ』
光一の宣言に俺は驚いた。俺よりも成績が低い光一が松島高校に行くなんてあり得ない。
そんな話をしていると、カウントダウンが始まるアナウンスが聞こえた。
『十、九、八、七、六!』
今年は本当に色々あった。近くで女の子の声が聞こえた。
『三、二、一!』
――あの子は何しているんだろうな。
『明けましておめでとう!』
まさかのあの子が居たのだ。俺は彼女と目が合った。そう思った瞬間に人影に消えていった。
不思議な一年のスタートだった。
冬休みが終わり、数日が経った頃。新しい清掃場所が決まった。清掃場所に行くと、職員室の奥の部屋で掃除をしている女の子が居た。その中に彼女も居た。俺は彼女に何も言わなかった。なぜならば、彼女の目は死んでいたからだ。
卒業式練習でも俺になど目を合わせない。彼女は俺に失望したのだろうか。
卒業式当日。俺は少し早く来た。離れるこの学校を少し見て回りたかったのだ。
屋上に来て、俺は目を見開いた。あの子が屋上の柵を乗り越えて立っていた。俺は急いで走った。俺に気付いて彼女は止まった。
『最後に会えて嬉しいです』
待って……手が届かない……。
『先輩、さよなら……』
彼女は飛び降りた。俺が手を伸ばした時には、地面が真っ赤に染まっていた。
『利奈ぁぁああ!』
この名前を呼ぶのは、最初で最後だろう。
『ああああああ!!』
俺の叫び声を聞いた先生達が俺のところに来た。卒業式は中止になり、俺は精神科に行かされた。
『全部、俺のせいだ』
俺は壊れていった。心理治療で治すしか他はなかった。だから、俺は記憶喪失になったのだ。
『僕は誰?ここはどこ?』
『あなたは藤田翔だよ。私は翔のお母さんよ』
『僕は翔で……僕のお母さんね!』
俺は記憶喪失になったピュア過ぎる子供になった。
ある日、俺の病室に一人の男が訪ねてきた。おじいさんにしては体格が良い人だった。
『翔くん、私の高校に入ってくれるか?』
『高校って何?』
『みんなと一緒に通う学校だよ。翔くんが入る時は簡単なテストを受けてもらうことになるけど、良いかな?』
『うん!入る!』
そして、俺は西宮高校に入学した。
『俺は綾田優樹。よろしくな』
『うん!僕は藤田翔、よろしくね!』
『僕!?』
記憶を無くしてピュアになった俺を皆が驚いた。それでも、優樹は仲良くしてくれた。
「思い出した……」
翔は全てを思い出した。自分の罪に押し潰されそうになる。それほど、酷いことだったのだ。
「俺は……殺人犯だ」
翔の主語が変わってる!
口も悪いですね。
記憶喪失の翔
「静かにしてね」
記憶喪失前の翔
「うっせぇ、黙れ」
この差が意外と大事なんです。
ポイント評価もお願いします("⌒∇⌒")




