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BreakLove 3



 まだあのケータイ小説を読む気になどなれなかった。翔はとりあえず宿題をしていた。そんな時だった。携帯が鳴った。翔の元カノだと言う咲花(さな)からだった。


「もしもし?」


『そのケータイ小説はどう?』


 早速その質問で困る。自殺教唆なことしか書いてなくて、読む気になんてなれない。


「怖くて、読めない……」


『リスカのところまで行った感じか。読んでてさ、変な感覚しない?そのストーカーだと罵倒する彼の目線になったりしない?』


「どういう意味か分かんない」


『まだそこらへんか……じゃあ、いいや。切るね』


 咲花との奇妙な電話をした後、また電話が来た。次は征也からだった。


「もしもし?」


『翔、俺の家に来ないか?』


「えっ?」


 翔は急にどうして征也の家に行くのかよく分かっていない様子だった。


『とりあえず、翔の学校で集合な』


「うん」


 電話が切れた。翔は着替えて、外に出た。コンビニでおにぎりを買って、学校に向かった。

 しばらくすると、征也が来た。スタイルが良い征也ならなんでも似合う。


「よぉ、翔」


「征也、呼び出してどうしたの?」


「相談を聞いてもらいたくてな。とりあえず、俺ん家に行こう」


「うん……」


 そう言われて連れて来られた場所は大きな豪邸であった。さすがの翔も気圧され、目と口を大きく開けている。


「栞奈もその反応だったな」


「いや、デカ過ぎるよ」


 征也は面白そうにクスクスと笑っている。親が出稼ぎに行っていていつも不在で少し金欠気味の翔の家とは違う。金欠なのは翔の記憶喪失のせいである。

 中に入ると、大きな廊下が広がっていた。長い廊下をくねくねと行っているうちに一つの扉の前に着いた。


「ここが俺の部屋。どうぞ」


 征也の部屋はとても綺麗で生活感が無い。さすが豪邸に住む子供という感じだ。

 翔と征也は良さそうなソファーに座った。翔は身構えた。相談なんて聞くことができるのだろうか。


「俺さ、好きな人がいるんだ」


 急に恋バナで翔は固まった。そういう話はあまり得意ではない。恋したことがあるのか定かではないし、過去すら知らない翔なんて話にならないのだ。


「出会ったのは、路地裏でお父さんと栞奈と陽太と清香が居た。俺は凛としている栞奈に一目惚れだった。だけどな、お父さんから話を聞かされたんだ」


 栞奈とは以前花菜を助ける時に居たポニーテールの少女だ。凛として必死に誰かを助けたいと願う姿はとても良い。確かに征也が惹かれるのも無理はない。


「お父さんも栞奈が好きだったんだ」


「へっ?」


 どういうカオスな話だと思った。父もあの栞奈が好き?翔には理解出来なかった。


「お父さんは元県知事の祖父と有名私立高校の教師の祖母の間に生まれた。昔からここに住んでいて、人生全てを親に決められて生きてきた。だから、恋もしたことがない。お父さんにとって、栞奈は初恋の人に等しいんだ」


 きっと見合いとかされてその間に生まれたのが征也だろう。親に全てを縛られた征也の父親がなんとなく可哀想に思える。


「去年、お父さんは西宮高校に勤めていた。だから栞奈と仲良しなんだよ。お父さんはいじめられる栞奈を助けようとしていた。そのうちに芽生えたんだろうな。愛というのが」


 あの優しい栞奈がいじめられているのはとても思えなかった。いじめられている栞奈を征也の父親が必死に支え続けていたのだろう。


「確かにね、お父さんと栞奈は愛し合ってるよ。そういう過去があるから。俺が栞奈を家に連れて来たら、お父さんはすぐに自分の部屋に連れて行ったんだもん。ヤバいよね」


 栞奈ちゃんも好きなんだなぁ……。翔は征也の言葉に苦笑いをした。


「お父さんのことだから栞奈を俺とくっつかせるんだろうな。好きな人だからこそずっと守りたい。だけど、自分はもう無理。だから、息子の俺に来る。俺にとって一石二鳥よ」


「あっ、うん……」


 顔見知りな征也となら結婚させるんだろう。栞奈が好きな征也なら得である。


「疲れた……」


 廊下の外で男の声が聞こえた。征也の顔色が変わった。


「お父さんだ」


「じゃあ、僕は帰るね」


「うん、聞いてくれてありがとう」


「別に良いよ。何でも聞くさ」


 征也のお父さんに気付かれないように廊下を歩いて玄関に向かった。廊下が長すぎる。


「じゃあね」


「うん、バイバイ」


 翔は夕焼けに染まった街中を歩いて家路を辿った。久しぶりにあのケータイ小説を読んでやろうと思った。

 家に到着し、翔は自分のスマホを開いた。あの小説の続きを読んだ。



 まさかの同じ清掃場所。何も言われないのは幸いだけど、顔を見るのも辛い。死にたい。

 廊下ですれ違う度に笑われる。こんな毎日はもう嫌だ。

 卒業式練習もずっと彼の顔を見ないように努めた。また何か言われるのが怖かったから。

 卒業式当日。私は早く学校に来て屋上に来ていた。何をするか分かるだろうか。

 先輩、さよなら。

 そして、私は飛び降りた。



「ああああああ!!」


 分かってしまった。僕は思い出してしまった。


――先輩、さよなら……。


 俺の記憶が走馬灯のように駆け巡った。




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