299『テディ―が飛行石を持ってきてくれる』
魔法少女マヂカ
299『テディ―が飛行石を持ってきてくれる』語り手:マヂカ
さて、関東大震災からの百年余りをどう説明したものか……腕組みして空を仰ぐ。
ん?
クマさんの頭の上、舞鶴の空に小さなクマが探し物をするようにクルクル回っているのに気が付いた。
「まあ、クマのぬいぐるみが空を飛んでる!」
「あ、テディ―!?」
あ、マヂカさーーーん!
テディ―の方でも気が付いて、不細工な弧を描きながら桟橋に下りてくる。
「慣れないもんで、ちょっと迷いました(^_^;)」
「オートマルタが無くても空を飛べるのか?」
「バージョンアップしたんで、短距離なら。オートマルタはまだ山の向こうです」
「クマのぬいぐるみが喋るんですか!?」
「こいつは特別でね、運転手の松本さんのようなものなんだ」
「ああ、お抱え運転手!」
お屋敷の使用人に例えると分かりやすいようだ。
「で、急な連絡なのか?」
「はい、新しい飛行石を司令から預かってきました」
背中に背負っているのは、いざという時のパラシュートかと思ったらリュックで、そこから待ち望んだ飛行石を取り出した。
「おお、待っていたぞ! これで電車を使わずに東京に戻れる!」
「はい、マヂカさんがこれを持ってオートマルタに乗れば、そのメイドさんも乗せて空を飛べます」
そうなのだ、オートマルタは空飛ぶ電動自転車のようなもので、定員は運転のテディ―を除けば一人しか乗れない。
さあ、出発しましょう!
オートマルタが到着すると、テディ―は自分の体を平たく伸ばしてクッションと言おうか、二人分のートになってわたしとクマさんを乗せてくれた。頭だけはクッションにならずにマルタの先にあるので、大人二人が遊園地の遊具に乗っているようだ。
「ニ十一世紀では、こんな便利なことができるようになっているんですね!」
「いえ、これは魔法少女をこき使う陸軍の特務師団というのがあって……」
クマさんに事情を説明し、魔法少女やタイムリープ、ファントムたち悪党の事を説明し終わったころには琵琶湖の上空に達していた。
「そうか……そうだったんですね」
クマさんは、もともと聡明なメイドさんで、わたしの説明よりも眼下に見えるニ十一世紀の日本の姿を眺めて、事情が理解できたようだ。
「それで、わたしは、元の大正十二年に戻れるんでしょうか?」
「そうだな、大正十二年の原宿で箕作巡査が待っているんだものな」
大正時代に戻ると、18年後には大東亜戦争が始まり、その四年後には関東大震災が可愛く見えてしまうような東京大空襲がある。もし、箕作巡査との間に男の子が生まれれば……いや、遠まわしにではあるが、戦争の事は話した。
その上での「戻れるんでしょうか?」なのだ、正直に答えよう。
息を呑んで答えようとすると、テディ―に先を越される。
「あのう……その件につきましては、来栖司令が位相変換と時空変換を調整しておられます、このまま原宿に飛べば行けると思います……というか、位相と時空の針を同期させておくのは、この半日ぐらいが限度ですので、それしかないと思います(^_^;)」
「……そうか、段取りは組まれているんだな」
日ごろ迫力の無い司令だが、ここ一番だと奮励努力の真っ最中なのか。
「よかった……」
静かに、でも、しっかりとクマさんは答えた。
この令和の日本に戻って、久々に肩の荷が下りる。久々の飛行石の自由飛行と相まって、ゆるゆると体中のこわばりが解れていくのを感じた。
「でも……」
「ん?」
関が原を過ぎ、眼下に濃尾平野が広がると、一安心したわたしに、クマさんは凄いことを言い出した……。
※ 主な登場人物
渡辺真智香 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
サム(サマンサ) 霊雁島の第七艦隊の魔法少女
ソーリャ ロシアの魔法少女
孫悟嬢 中国の魔法少女
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
ファントム 時空を超えたお尋ね者




