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都市伝説奇譚~美女との怪しい部活動~  作者: 黒雪ささめ
時間跳躍編
3/10

間違えて運命のレヴルの方へ投稿してしまい慌てて変更中に切り替えてきました。寝惚けてた…本当に焦った…


 

 近藤奏輔(そうすけ)はこの奇乃高校3年の生徒会長である。近々生徒会長を引き継ぐが、学年トップの成績に教師からの信頼も厚い。絵に描いたような生徒会長だ。その近藤がこのような集会へ顔を出すのは珍しい。



『近藤生徒会長が来るとは思いませんでした。お忙しそうですが大丈夫なのですか?』



 生徒会長はどこも忙しい。一応は生徒代表、学校のトップ、学校の顔と言ってもいい。そんな生徒会長がこんなよくわからない集まりに来ると誰が予想できるのか。



「もうすぐ引き継ぎも終わる。ずっと気になっていた君と話してみたくてね」



 告白とも取られかねない発言で周囲がざわつくが、近藤の堂々とした態度に勘違いだと理解した周囲は静まり状況を見守る。

 対する葵は特に表情を変える事もなく、生徒会長だろうがどうでもいいというような態度で言い放つ。




『そうですか。話せて良かったですね。では答えを』




 周囲の視線が近藤に集まる。生徒会長、学年トップの答えなのだ。当然正解に限りなく近いに違いないと周囲は思っているのだ。

 そんな雰囲気を近藤も感じ取っているはずだが、その表情は先程と変わらず余裕を感じさせるものだった。



「7つの大罪とは、人間…」



 途端にそれは起きた。



「俺も人間だと思っていた!」


「俺もだ!」


 初めは数人だった。近藤の回答を奪い合うように叫ぶ。それは徐々に拡がっていく。



 俺も、俺も、私も、ほぼ全員が近藤の回答に乗った形になった。生徒会長、学年トップの答えなのだ。自分達が考えるものよりも正しいのだろうと。


 あまりの喧騒に葵は顔を顰めて、少し大きめの声を出す。



『静かに!わかったわ。確かに7つの大罪、暴食、嫉妬、憤怒、強欲、色欲、怠惰、傲慢を体現してるのは人間よね。凄いわ。人間と答えた者はその場に座りなさい』



 俺も、私も、と叫んだ者達が次々と座っていく。この人数を全員入会させるとは考えづらいので、人間と答えられなかった者を帰らせるのだろうとほくそ笑みながら。



 集まったほとんどの者が座り、立っているのは近藤を含めて4人だけだった。その中に一人小柄な瞬が交じっているのを哀れな目で見ている者もいた。


 だが彼らは間違っている。7つの大罪の体現しているものへの回答ではなく、葵の問への回答を。



 葵はこう書いた。




 ()()()()()回答を出した者、と。





 別に正解だろうが、不正解だろうが葵にはどうでもいいのだ。葵が欲しいのはただ一つ。




 自分の思い付かない回答。




 近藤がそれに気付かないはずがなかった。



「澤口さん、僕はまだ答えていないのだけど、続きをいいかな?」



 その言葉に座っていた者達は動揺する。動揺はするが、どうしていいのかも思い付かないのでただ黙って聞く事しか彼らにはできない。



『どうぞ』



 当然という感じで答える葵もまた近藤が鬱陶しい彼らを引っ掛けたのだと理解し、それに乗っかった共犯でもある。



「7つの大罪とは、人間を死に至らしめる欲や感情、状態の事だけれど、僕なら君の問には[発展途上国]と答えようか」



 近藤の回答に周囲は何を言っているのかわからなかった。

 瞬はその回答に目を輝かせる。先程まで瞬は不満だった。


 人間という回答に。


 7つの大罪は人間に対して向けられたもので、人間が体現しているのは当たり前である。


 紙を切るものを1つあげよ、ハサミ。と言っているようなものだ。



 だが、近藤の回答はそうゆう類いのものではない。変なこじつけなどなく、別のベクトルからの答えではないかと瞬は考えた。


 この場に近藤の[発展途上国]という回答をはっきり理解しているのは1人しかいなかった。



『その理由は現在のものからでしょうか?』



 葵である。



「まいったな。もう君には全部分かっているのかい?でも、せっかくだから自分の言葉で説明しようか。

 君が言った通り、僕は()()の7つの大罪を体現しているものを[発展途上国]と答えた。

 環境汚染、麻薬の横行、貧困、人体実験、社会的不公正、一部の者の過度な裕福さ。

 この6つを[発展途上国]は体現している。君には残り1つも分かるだろう?」



 葵は当然のように首を縦に振る。



『遺伝子改造…ですよね。生徒会長の答えに私は()()()()満足してますが、あえて[発展途上国]にした理由を聞いても?』



 近藤は小さく「まいったな」と呟く。



「君はどこまで読めているんだい?そうだね、どうして僕が()()()[発展途上国]と言ったのか。君の考える通り、本当は[先進国]の方が全て当てはまる。でも、僕は先進国が今の人間を表しているようなものだと考えた。だからもし[先進国]と答えたなら、僕もそこに座っている者達と変わらないという事が理由さ」



 葵は大きく頷く。



『納得しました。さすが、この学校を治める長に相応しい答えだと思います。ですが、私もそこまでひねくれてはいませんよ?先進国でもいい答えだと思います』



「褒められていると思っていいのかな?謎に包まれている君に対する答えだ。捻らないとつまらないだろう?」



 今のやり取りをワクワクした気持ちで見ていた瞬は二人の凄さを素直に尊敬し、今立っている者達の答えに期待を膨らませるのだった。








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