少年 : 現状把握④
今回からもう少し長く書きます。
「エリアスー‼︎目を覚ましたか‼︎」
マッチョなおじさんが大音声で叫んでいる。
「あなた‼︎声が大きいですわ。まだ傷が癒えておりませんので気をつけてくださいまし。」
奥様が怒っている。
怒ってる様には見えないが・・
「それでエリアスはどうなのだ?」
旦那様が爺さんに聞いている。
「はい、記憶喪失な様ですが一時的なものかもございません。おっと、ここまでですな。エリアス様申し訳ございません。魔力がつきましたのでまた後日続きをいたします。」
爺さんは手を離して離れた。
身体の痛みが少し和らいだ様だ。
「記憶喪失か・・ふむ、命が助かっただけでも儲け物だ。右手は仕方ないが・・
だがどうするか?エリアスをこのまま跡目に据えるべきか・・」
旦那様が何か言っている。
「あなた、今はエリアスの身体が回復するのを待ちましょう。」
「ふむ、そうだな。」
「アイシャ、サテラ、後を頼みます。」
「かしこまりました。」×2
旦那達が出て行った。
さっき旦那様が変な事を言ってた様な・・
「すみません。身体を起こしてもらっても良いですか?」
さっきの治癒魔法で身体が少し動かせる様になった。
凄いな魔法・・魔法⁉︎
そんな物は知らない・・記憶喪失?いやいや・・
「わかりました。少しよろしいでしょうか?」
アイシャと呼ばれた16歳位の女性メイドさんがおっかなびっくり俺の身体を起こし背中にクッションを置いてくれた。
「ありがとうございます。」
お礼を言ったらメイドさんがびっくりしている。
「・・いえ、当然の事・・ですので・・。」
なんか怯えられてる。
まーいい、今は旦那様が言ってた事を確認しよう。
右手・・右手を見た。
「右手がない⁉︎」
右手が無かった。付け根には包帯がグルグル巻きにしてあった。
「すみません。状況がわからないので説明して貰っても良いですか?わかる範囲で良いので。」
アイシャさんがびっくりした顔を落ちつかして答えてくれた。
「わかりました。では簡潔に説明いたします。
事の発端は10日前です。エリアス様の弟君のセルジュ様主催の狩猟の会に御主席された時にエリアス様がお一人でワール(狐に似た魔獣)を追って行かれたと聞いております。その後エアリス様が戻られないので総出で捜索をいたしました。エリアス様を発見しましたのは1日後の谷の下でございます。その時には右手は無くなっておられました。
命の危険な状態でまる8日間も寝ておられて現在に至ります。」
エリアスには弟、セルジュ君が居るのか・・まーいい。
右手が無くなったのはわかった。でも何故だろう?右手は無いのに感覚ある。
見た感じ無いのに感覚的にある・・どうゆう事だ?
「エリアス様、お食事をご用意致しましょうか?」
うん、お腹は減っている。
「お願いします。」
アイシャさんが一礼して部屋から出て行った。
うーん不思議だ。
右手の感触がある。
「・・・・・・う・・」
右手を伸ばそうとすると見えない手が伸びている感覚がある。
「・・・ぁ・・ぅ・・」
エリアスか、確かに以前の名前がわからないので仕方ないか・・。
現状について考えながら無い右手を動かす。
「・・・あのぅ・・」
少女メイドさんがか細い声で問いかけてきた。
「あ‼︎すみません。えっとサテラさんですよね?何か様ですか?」
少女はよく見ると感情が余り顔にでない人に見えた。
なにせ無表情。
「・・・さん付けはやめて・・ください。・・私の事は・・憶えて・・いますか?」
記憶喪失だと診断された人に変な事を聞いてきた。
「いえ、すみません憶えておりません。
何かサテラさんに御迷惑を・・」
少し考えたが思いつかない。
記憶喪失ですから。
「・・・さん付けはやめて・・本当に憶えてなければいい。」
サテラさんは納得半分、疑い半分の目をしている。
「すみません。」
とりあえず謝る。
「・・・謝らないで・・憶えてなければいい・・・敬語もやめて・・」
コンコン
扉からノックの音がした。
アイシャさんが食事を持ってきてくれ食事をする事になったが病み上がりな上、右手がないので親鳥から餌を貰う様に食事をする羽目になった。
恥ずかしい
今までこんな事をされた事はないだろう。
美少女2人に食事の世話をしてもらう事なんて。
そう2人共かなりの美人さんなのだ。
アイシャさんは16歳位の活発そうな美少女。亜麻色の髪を三つ編みにして、テキパキと物事をこなすお姉さんタイプに見える。
そして胸の発育が良い・・・
少し良すぎるかもしれない・・
「どうかなされました?」
いかん。一部分を余りにも凝視していた為、時が止まっていた様だ。
「すみません。何でもありません。」
ドギマギした。
「ならよろしいのですが・・」
ちょっと困った顔をしながら食事が再開される。
「・・・・ぉ水・・・・」
今度は反対側からサテラさんがお水を差し出してくれる。
サテラさん、色素の薄い髪の色、銀髪と言ってもいい様な髪を腰までそのまま伸ばしている。お人形さんみたい、この言葉が当てはまる完璧な美少女だ。
年齢は10歳を越えてはいるだろう。
声が小さく、無表情、将来は物凄い美人さんになるの確定しているだろう。
こんな2人に食事の介護されるなんて・・
ドキドキする
食事も終わり少し休憩する事になった。
色々考えないといけないが身体がついていかない。とりあえず横になる事にした。
(俺はエリアス・・以前の記憶もない・・
でも性格はそのまま・・あの闇は何だったのだろう・・ここは何処・・)
意識が途切れそのまま眠りに落ちた。
目が覚めた。
アイシャさんがきて2日間寝ていた事を教えてくれた。
その間も治癒魔法はかけて貰っていたらしく身体の調子が良い。
食事をしながらメイドの2人に相談した
「ちょっと歩いてみたいのですが?」
痛みもそんなに無いので部屋から出てみたくなった。
アイシャさんは悩みながらも了承してくれた。
サテラさんは・・わかんない。
でも見つめていると頷いてくれた。
さて立ち上がりましょう。
身体を回しベットの端に座り足を床につけた。
アイシャさんが靴を履かせてくれた。
足にチカラを入れる。
(うん、大丈夫そうだ。)
立ち上がって見る。
(思ってたより身長が低いな。)
アイシャさんより頭一つ低く、サテラさんより頭一つ半程高い感じだ。
(エアリス君は何歳なんだ?)
鏡を見てないので外見もわからない。
手や足、身体を見る限りかなり若いのはわかる。
(以前の俺は子供ではなかったと思う。
こんな性格だし、こんな性格の子供がいたら異様だしな。)
「あの、大丈夫でしょうか?」
アイシャさんが心配そうに聞いてきた。
「あ、大丈夫です。」
右手が無い分バランスが悪いが慣れれば大丈夫だろう。
「・・・・これを・・」
サテラさんが杖を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。」
困った顔をされた。
一歩踏み出してみたが問題なさそうだ。
サテラさんが扉を開けてくれた。
部屋を出てみると長い廊下が続いていた。
「長い廊下、でかい家なのかな?」
つぶやいた疑問をアイシャさんが答えてくれた。
「ノーライスト家は商業都市ラインの西の町の領主ゴードン様、エリアス様のお父様が納める町になります。」
ゆっくり歩きながらこの家の事を聞いた。
「ノーライスト家は200年続く名家で
商業都市の4大貴族の一角にやります。
この西の町は比較的豊かな土地で米や小麦等の作物や、食料にできる魔物を狩る事で発展してまいりました。」
魔物⁈やはり知らない生物がいる様だ。
この怪我もワールと言う魔物を追いかけてしまった事でできてしまったらしいし・・
「エリアス様はノーライスト家の嫡男としてゴードン様とヒルデ様からお生まれになられました。」
富豪の家の跡取りらしい。
廊下をゆっくり歩いて見知らぬ母子が歩いてきた。
アイシャさんとサテラさんが廊下の端により頭を下げた。
(俺も頭を下げた方が良いのかな?)
動こうとしたところでサテラさんが小声で話しかけてきた。
「そのまま立って、頭も下げないで下さい。」
言われた通り動かず立っている事にした。
「これはエリアス様、ご無事で何よりですわ。」
誰だろう?
「第二夫人のモリシャ様とそのお子様のセルジュ様です。」
アイシャさんが小声で教えてくれた。
「あら、記憶喪失は本当の様ですわね。」
何故かジロジロ見られている。
(この人、気持ち悪い。笑顔なのに目が怖い。)
「エリアス様ごめんなさいね。私共が開きました狩猟の会にてお怪我をさせてしまって。」
(この人本気で謝ってはいないな)
「いえ、お気になさらずに。」
モリシャさんが驚いている?
「本当にエリアス様ですの?・・」
今度は不思議そうに見られている。
何か変だっただろうか?後でアイシャさんに聞いてみよう。
その後は軽く挨拶をして離れた。
セルジュ君は俺をずっと睨んだままだった。なぜ?
庭、書庫、応接室、馬小屋、風呂、武器庫、訓練所、畑etc
物凄く広い屋敷だった。
怪我をしてなくても全部回り切るには時間がかかる広さだ。
自分の部屋に戻った時にはクタクタになっていた。
よし新たな疑問も出てきたから色々聞いてみよう。