戦車の世界の夢
20、
その夜。
チェターラの感覚からすると、朝起きて昼前にこちらの時代に来て、経過時間的にはまだ一日の途中という認識で、眠るには早い気もした。だが一方でテントの外は真っ暗で、明かりを消してしばらくじっとしていると、時差に困惑しつつためらいがちながらも睡魔が忍び寄ってきた。
うつらうつらと半覚醒状態が長く続いた後、ようやく眠りに落ちた。
そして。
夢を見た。
見覚えはあるが、親しみのない景色の夢だった。
アスファルトの地面と、背の高い建築物の群。
無人の人工街。
ぼんやりと、ああ、これは夢ですねと自覚しながら、周囲を眺めた。
見覚えがあるのは、前日に見たばかりだったから。
昨日の午後、魔法陣の中で見た景色。アレック・ガルムが戦車と戦った別世界。
戦争の傷跡こそ見あたらなかったが、ここは同じ世界のようだ。少なくともそう見えた。
妙に現実感がある夢で、においすらも明確に感じられそうだった。
「○□□×△!」
声がして、そちらを見た。
気がつけば隣に、男が立っていた。
ひょろっとした背の高い、痩せ形の男性。真っ白い衣服はチェターラには見慣れないものだったが、もしもこの世界の知識があれば、科学者がよく着る白衣だと分かっただろう。
調えようとした様子もない長髪を首の後ろで縛り、顔には丸眼鏡をかけていた。
その顔つきには見覚えがなくもなかった。知らない男性で、親しみはなかったけれど。
……レイヤ少年に似ているような?
そう、とてもよく似ていた。
年は離れていたので、推測するならば父親かそれに類する親戚に見えた。
もしもレイヤ少年のご家族の方ならば、ここでご挨拶したほうがよいでしょうか? いえ、これは夢なので、特に意味などないでしょうけれど。
チェターラはそう思った。
だが。
「▽□××、○○、HAHAHAHA!」
こちらを気にする様子もなく無人の景色を見て高笑いをしている姿は、何か薄ら寒いものが感じられた。
チェターラは何となく、後ずさって距離を取ろうとした。
足が思うように動かず、もつれて後ろ向きに倒れた。
夢だからか、尻餅をついても全然痛くはなかったが。
ガシャン、と、大きな金属音がした。
!?
何か物凄く強い違和感がして、唐突に激しい不安に襲われた。髪が顔にかかったので、不安に駆られながらそれをよけた。
自分の手と髪が、視界に入った。
覚えている自分の手と髪の色と、全く違った。
青みがかった銀色の手と、銅色の髪。
銀そのものでできた手と、銅線そのものでできた髪。
金属のにおいが、嗅覚を満たした気がした。
な。
なんでしょうか!? これ!
いえ、いいえ、夢だということは分かってますけど!
でも、でも、こんな変な夢、見たこと無いです!
チェターラが慌てている間に。
レイヤ少年に似た顔立ちの男が、くるっと向きを変えてこちらを見た。
笑顔だった。
無遠慮に近づいてチェターラの金属製の手を取ると、それを無理やり認識させるように、チェターラの目の前に突きつけた。
とても不吉な、狂ったような熱を帯びた目で。
歯を見せて笑った。
「※□△△♪」




