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オークの娘さん  作者: yamainu
第1話 『オークの娘さん、城へ行く』
3/51

玉座の間

 3、


 きっとここでなら、わたくしのことを愛してくれる人がいるはず。

 だって、お城は上流階級の場所。

 口さがない町の人々とは文字通り住む世界が違う、洗練された場所。

 ここでなら。

 わたくしを、わたくしが愛するお父様の娘としてのまま、そのまま愛してくれる誰かが、きっといるはず。


 と、チェターラはそう思いながら、玉座の間に入った。


 最初に正面の玉座を見たが、その豪華な椅子には誰もいなかった。

 栗色髪の年若いメイドが一人、入り口のすぐ傍でアレック・ガルムと娘のチェターラを待っていた。

「王様は今、談話室にいらっしゃいます。

 こちらへ」

 メイドはそう言うと、玉座に向かって右側にある扉へと、先に歩んで案内した。

 扉を開けると、柔らかな青い絨毯が敷かれた廊下が伸びていた。両側の壁には、幾つかの扉。どうやら、王族の私的な部屋が多くある区画になっているらしかった。

 三人は、廊下を歩いた。

 城に仕えるアレック・ガルムは談話室の場所も分かっているらしく、メイドに案内されるまでもなく進んだ。栗毛髪のメイドがその横を並んで歩き、チェターラは二人の間、半歩後ろを歩いた。

 メイドはアレック・ガルムと顔見知りらしい様子で、言った。

「そちらの子が娘さんですか。

 話は聞いていましたが、綺麗な娘さんですね」

「うむ。

 目に入れても痛くない、可愛い娘だ」

「おやおや、相変わらずの子自慢で」

 チェターラは良い気分でその会話を聞きながら、メイドに言った。

「わたくし、チェターラと申します。

 父がお世話になっております」

「……」

 メイドは、笑顔のまま、無言で、妙に目力のある動かない瞳で、チェターラを見ていた。

 チェターラがその様子に首をひねる一瞬手前で、メイドは言った。

「……フフッ。はい♪ こちらこそ、もっとお世話をさせていただきたいと思ってます」

「?」

 チェターラが改めて首をひねる前に、廊下の途中の扉の前で、メイドは立ち止まった。

「王様は、こちらに王子様方と一緒におられます」


 王子様!?

 それを聞いて、チェターラは、こっそりと、着衣の身仕舞いを改めた。

 王子様ぐらい高貴なお方なら、きっとわたくしの美しさにすぐ目を留めていただけでるでしょう。外見には一目で。そして、心の美しさにもすぐに。

 ええ、きっとそう。そうでなくては!


 扉が開いた。


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