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オークの娘さん  作者: yamainu
第2話 『オークの娘さん、母の魔法の日記を見る(前編)』
24/51

 3、


 城に着くと、父親のアレック・ガルムは自分の仕事場である城門傍の待機小屋へと向かった。それを見送ってから、チェターラは城の中に入った。

 メイドたちの休憩場所になっている部屋で、メイド服に着替えた。先輩メイドのローリエが今日も面倒を見てくれるはずだったので、ローリエと待ち合わせていた時間まで、しばらく待機。

 待つ間、部屋にいた他のメイドと軽く話をした。ただその合間合間にも、なんとなく、自分のにおいが気になった。

 いつもの香水をつけていないので、まるで裸のような無防備な気分。

 心の底の方でそう感じていると、栗色髪のメイド姿のローリエが部屋に入ってきた。

「チェターラちゃん、おはよう♪ ……あら?」

「おはようございます。……なんでしょうか」

 ずずいっ、と、ローリエはいきなり近づいてきた。

 嫌な予感がした。

 ずずいっ。

「あの……、わっ!?」

 がばっ、と。

 正面から抱きすくめられた。

 またですか!?

 というか、正面からだと顔に胸を押しつけられて息ができないんですけど!

 窒息未遂。凶器は胸。

「んーふふふふふふ♪ 今日は香水をつけてないんですね! 良いです♪

 んふー、あの人の娘さんのにおい♪ 昨日より直で鼻に! 納豆と魚のにおいの下に! ナチュラルに! ああ、あの人のにおいを間接的にでもかげる幸せ!」

「……ぷはっ!」

 ローリエの胸からどうにか暴れて顔を出して、呼吸ができるようになった。

「だから! においをかがないでください! 放してください!

 そんなことしたらお父様に言いつけますと昨日言いましたよね! あなた、記憶力ないんですか!」

「……むぅ。そうでした」

 じたばた暴れるチェターラをしばらく名残惜しげに抱きしめていた後、ローリエは仕方なさそうに放した。

「あ、わたし、記憶力ないので明日になったらまた忘れます。つまり明日も抱きつきます♪ 忘れるので仕方ないですね!」

「本気で言ってるんですか?」

 呆れながら、チェターラはメイド服の乱れを直した。

 一時的にだが、自分のにおいを気にするのを忘れた。

 というか、ちょっとどうでもよくなった。


 その後はローリエに連れられて、ハウスメイドの仕事に回った。

 実を言えば、すぐ来訪者の館に行って昨日の少年と話をしてみたいとも思った。だが、自分は城にメイドとして来ているので、当然仕事が優先。

 ……来訪者の館には、昼休みのときにでも行くことにしましょう。

 そう考え、午前中は仕事に集中することにした。

 城内の部屋の掃除をある程度済ました後、チェターラとローリエは魔術師の塔に移動した。

「今は、昨日の儀式の後かたづけをしていると思います。手伝いに行きましょう」


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