十八日目3
「さて、では聞かせて貰うとしよう」
老人、ドクター城内は横柄な態度で話たまえと龍華に話を促す。
「うむ。では回りくどく世間話をする必要もないか。こちらは今面倒を見ているフロシュエルだ。彼女に強かさを身につけさせたい。そう言うのは得意だろう?」
「得意かどうかと聞かれても、私からはなんとも言えんがね。舌戦で他人に負ける気はしないな」
「あと、戦闘に関しても怪人とこいつを戦わせてやってくれ。模擬戦で構わん」
「ほぅ、アンとかね? ああ、いや、丁度いい。娘の実力確認も兼ねて茉莉を呼ぼう。」
くっくと笑う老人は背後のドアに視線を向ける。
「丁度良い、キキ、茉莉を呼んで来なさい」
既に部屋から出て行ってしまったキキに声を掛けるドクター城内。
聞こえてないんじゃないかなぁとフロシュエルは苦笑いしがた、ドクター城内は気にせずアールグレイを飲み、フロシュエルを見る。
「フロシュエルといったな」
「あ、はい。皆さんはフローシュと呼んでくださいますのでそちらで呼んでいただければ」
「ふむ。見るからに実直そうだ。私のような存在にはよいカモだな。騙しやすく堕としやすい。ちょっと話すだけで悪人に出来る存在だ。これは危うい」
「まぁ、そういう訳だ。できれば悪堕ち無しで強かさを身につけさせたい。頼めるか?」
「ふむ。頼まれるのは吝かではない。しかし不死者よ。悪の秘密結社に頼みごとをするのならば、それなりのモノを用意してあるのかね?」
ニタリ、笑みを浮かべるドクター城内。まさに悪人としか思えない笑みに、フロシュエルはこの人に頼むのはダメなのではなかろうかと不安げに龍華に視線を向けた。
「私の後ろに居る存在」
「ふむ?」
「魔王ブエルだ」
言われ、ドクター城内はソファの後ろに存在するブエルを見る。
「ほぅ、成る程……魔王、魔王か」
「そして隣に存在するフロシュエル。見習いだが、天使だ」
「ちょ!?」
天使憲法により、一般市民に天使であることがバレてはならないというモノがある。龍華も龍華で一般人と言えば一般人なのだが、既に天使のことを知っているので問題はない。しかし、何も知らないドクター城内にばらすのはダメだろう。
慌てるフロシュエルだが、ドクター城内はふむふむと考える。
「いいな。素晴らしい。それを使えば茉莉を我の理想に近づけられる!」
不意にドアが開き、一人の少女が現れた。
ランドセルを背負ったサイドポニーテールの女の子だ。
黒髪の彼女は黒い猫の顔が描かれたタンクトップを着ていた。
「来たか茉莉」
「来たよおとーさん! 茉莉ね、ついに「聞いたぞ城内真一、天使と悪魔の細胞が手に入るのだろう。ならば我も手伝ってやろう」ちょっと茉莉が喋ってるんだよーレウちゃんっ」
なんか変なのが来てしまいました。
初めにフロシュエルが思ったのはキチガイ少女だった。
何しろ同じ口から能天気な声と凛とした声がほぼ同時に聞こえて来たのだから。
「紹介しよう。私とエレナさんの娘、城内茉莉だ」
「はーい茉莉で「何が娘だ。卵子と精子を体外受精させてチェンバーで創った存在だろう」す。あーもう、レウちゃんまた茉莉の言葉遮ったーっ」
もー、もーっ。とぷんすか怒りモードの茉莉。まるでもう一人誰かが居て、そいつに怒っているようだ。エア友達という奴だろうか?
「では改めて。城内茉莉だよー」
その場で体勢を整え、右手を振って微笑みながら茉莉はフロシュエル達に自己紹介。
次の瞬間ニタリと悪魔のような笑みを浮かべる。
「その茉莉に寄生している、マスコットキャラクターのレウだ」
「……あの、龍華さん、私、話に付いて行けてますかね?」
既に許容量をオーバーしてしまったフロシュエルは現実を受け止めきれずに龍華に助けを求める。あの人は一体何を言っているのだろうか?
「諦めろフローシュ。アレは残念な怪人という存在だ」
「まだだよー、私まだ怪人化してないし「その通りだ。そこの魔王と天使の細胞を使うことで仮面ダンサーを越える怪人を作る。ふふ、いいぞ。我が夢想した理想の怪人がついに出来る!」」
「いやレウ君。私の娘なのだが……」
「堅い事を言うな真一。お前の仮面ダンサー生成技術と我がインセクトワールド社の技術、そして天使と魔王の力を合わせればお前の娘がどんな存在になるか、楽しみではないか!」
「ふむ……まぁいいか。では最初に貰うが、いいか不死者よ」
「構わんよ。だが、我が細胞はやらんぞ? 無断使用するならばここも潰さねばならん」
「心得ているさ」
くっくと笑い、ドクター城内が指を鳴らす。
直ぐにドアから現れたキキが綿棒を使いブエルの唾液とフロシュエルの唾液を回収。
それを茉莉が嬉々とした顔で回収してチェンバーのある部屋へ、向かって行った。
「少しここでゆっくりしてくれたまえ。娘の改造を行って来る」
かなり頭のおかしなことを告げて立ち上がったドクター城内が去って行く。
フロシュエルは焦燥しながら龍華に視線を向けた。
あの人なんかに頼って、本当に大丈夫なんですか!? そんなフロシュエルの想いを、龍華もブエルも目を逸らして受け流していた。




