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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十八日目2

 地下への階段を下りていく。

 薄暗い階段を抜けると、ブルーライトの光が点灯した。


「ほぅ、なかなか急な坂道だな」


 龍華に最初に行くように言われたブエルは既に階段の下へと辿り着き、フロシュエルたちを待っていた。階段なのに殆ど転がって落下していたのはフロシュエルも驚きの状況だった。

 ごろんごろんと転がって行くブエルは流石車輪型生物と思わず龍華と顔を見合わせたモノである。


 足が次の階段に付くより先に身体が転がし、最初の一段目から足を踏み外して落下していく姿は奈落の底へと転がる石コロのように見えたのは内緒だ。

 龍華を追うようにしてフロシュエルが下へと降りると、そこには長い通路があった。

 道の方向からして屋敷の下へ向かう地下通路だろう。


「ほれ、さっさと行くぞ」


「ブエル、道を塞がないでくれないか。前が見えん」


「体格の問題で無理だ。気になるなら前に出るがいい」


「いや、別にその辺りは気にしていない。ここにトラップはないからな」


 本当に前がブエルのせいで見づらい。

 フロシュエルも龍華に同意しながら歩き出す。

 ブエルはそんな二人の抗議をモノともせずまるで王のように我に続けと転がり始めた。


 しばし長い廊下を歩くと、右手に扉がある。こちら側から押し開くタイプのドアだったのでブエルを押しのけ龍華が前に出る。

 扉を開くと一番最初に入って行った。

 ブエルが閊えたものの、足を折り曲げることで通り抜ける。

 最後にフロシュエルが扉をくぐると、メカメカしい部屋へと辿り着いた。


 部屋自体は広いのだが、中央に置かれたチェンバーが巨大なせいで人一人が歩ける広さぐらいしかスペースが無い。回りも訳のわからない機材が多く、下手に触って誤作動を起こさないか不安になる。

 そんな危険地帯を龍華とブエルは気にせず進んでいく。


「おや? これはまた珍しい」


 不意に、声が聞こえた。

 龍華達が向かっていたチェンバー右側ではなく、左側から、フロシュエルに近づいて来たのは、メガネを掛けた一人の老人だった。

 否、顔は老人顔なのに身体は若々しく見える。


「なんだそちらにいたか。む? ブエル邪魔だぞ」


「むぅ? しかし戻るにも天使見習いが邪魔で戻れんが?」


「なんだ? よくわからんが客として来たのならそのまま進め。別室に案内しよう。ここで下手な機材を触られても困る」


 老人に付いてフロシュエルは左から、龍華たちは右側から回り込みチェンバー後のドアへと向かう。


「あの、中央にあるでっかい筒ってなんですか?」


「あれはチェンバーというのさ。あそこに人体を入れ、手前の機器をいじることで改造人間を作りだす。チェンバーの中には組成変更用のナノマシンが入った液体が詰まっていてだね……」


「その話はまた今度だ。話があるのだ、さっさと済ませよう」


 長々と説明が始まろうとした瞬間だった。先にドアに辿り着いた龍華が老人に声を掛ける。

 老人は不満げにむっと呟くと、仕方なさそうにフロシュエルをドアへと案内する。


「キキ、客さんだ。人間が飲めるモノを四つ頼む」


 誰も居ない虚空へ向けて告げた老人は、ドアを潜り新たな部屋へ。

 応接間のようで、ソファが四つ。テーブルを囲むように鎮座していた。

 長方形のテーブルに合わせるように、長いソファが二つと短めのソファが二つ。

 龍華が長いソファの一つに座り、ブエルはその背後に転がる。

 老人が龍華の隣に行きなさいと告げて来たのでフロシュエルは龍華の隣に座る。

 ソレを見届けた老人は対面にどかりと座り足を組む。

 ソファの背もたれに両腕を乗せてやぁ。と龍華に告げた。


「随分と懐かしい顔だ。エレナさんがいた頃だったかな。君と出会ったのは」


「ん? 仮面ダンサー・アンに案内されたのが初顔合わせだったはずだが?」


 首を傾げる龍華に老人はああ。と納得する。


「この顔で会ったのはそっちが初めてか。まぁいいさ。他の二人は初めましてだね。まずは自己紹介をしよう。秘密結社シンキング・セルのドクター、城内真一だ。そして……」


 視線を自分たちが入ってきたのとは別のドアへと向ける。

 瞬間、ドアが開き小柄な少女が一人やってきた。

 ポニーテールに纏めた髪は紫色。タンクトップも紫色。ベストもスカートも靴下、靴に至るまで、全身を紫で統一していた。

 さすがに身体は肌色だが、それ以外は黒目の部分すらも紫色の少女。


「彼女はキキ。私の助手をしている」


「キキです」


 キキは御盆に乗せて持って来たコップを四つテーブルに置くと、ポットに入れていた紅茶を注いでいく。


「アールグレイです。毒は入っておりません。人体に有毒な成分も検出されておりません。問題無くお飲みいただけます」


「あ、ありがとうございます?」


 フロシュエルのお礼を無視し、少女は部屋を去って行く。

 無愛想な人だなぁと思ったが、口には出さず、紅茶を頂くことにした。

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