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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十七日目2

「り、龍華さ~んっ!?」


 長時間雨に打たれながら立ちつくしていた龍華に思わず駆け寄る。

 泣きそうな顔になったのはあまりにも濡れ鼠な龍華の姿に対する罪悪感によるものだ。

 まさか本当にそのまま待っているとは思っていなかった。


「ふむ? 今日は来たのか。雨が降っているし来ないと思ったが」


「それはこっちの台詞ですよっ!? なんで居ちゃうんですか!? 雨ですよ雨!」


「別に天候は気にせんよ。私は死ぬことはないのでな。長時間雨に打たれたところで肺炎になることもないのだ。濡れることに不快もないし問題はない」


「……そ、そういう問題ですか?」


「不死者よ。魔法を使えば濡れぬぞ?」


「私は魔法は使えんよ。ただの人間にそんなモノを求められても困る」


 ただの人間じゃないですよね? そんなフロシュエルのツッコミは心の中から出て来ることはなかった。


「さて、本日も修行。と行きたいところだが、流石にいつもの修行と言う訳にはいかん。雨で地面はぬかるんでいるし視界も悪い。なのでフローシュ。雨天のみの闘いをしてみよう」


「は、はいっ」


「ちなみに今日は流石に完全もピクシニーも来ない。午前中は私が見るが、午後からは自由行動を許可する」


「あ、そうなんですか?」


 想定外に時間が空くことになる。

 雨の街を散策もいいのだが、どうしようか?


「ならば我が魔術訓練を行ってやろう」


「ほぅ、魔王の魔術訓練か。折角だ見学させて貰うが、いいか?」


「構わんよ」


 なぜか自由行動が勝手に潰されブエルとの魔術訓練になってしまった。

 不満はないのだが、こう勝手に自分の時間を決められてしまうとちょっとなんというか、言いたい事があるというか……


「フローシュはそれでいいか?」


「え? あ、はい」


 口を開くより先に龍華に先回りされたので頷くしかできなかったフロシュエル。

 機先を制されたフロシュエルは、あ、これも田辺さん案件の一種なんだなぁ。と自分で納得して一人落ち込む。小影に言われた通り、自分はただただ愚直に相手の言葉に頷いてしまう性格のようだ。


 せめて気に入らない所を指摘する位の性格になるべきだろう。

 といってもフロシュエルにはそんな事を言えるようになる自分が全く想像付かない。


「あの、龍華さん」


「どうした?」


「性格を変えるには、どうしたらいいでしょうか?」


「性格? なかなか変わるものではないが、何故また?」


「はい、田辺さんの件で小影さんに質問したんです。どうしたらいいのか分からなくて。そしたら性格を変えるべきだって。今のままの私では愚直過ぎて田辺さんからお金を返して貰う方法が……」


 ない。とまでは言えない。愚直に相手に関わることで相手が根負けするということもある。しかし、それだって性格や運によるモノが大きい。

 フロシュエルの性格では少々難しいと言える。

 劇的とまでは行かなくてもいいので性格を少しでも変えることはできないか、フロシュエルは藁にも縋る気持ちで龍華に質問する。


「そうだな。長年を掛け知識と経験による性格改変ならば可能だが、お前が求めるのはそれではあるまい? そもそも人間の性格とはその人物の人生経験が性格形成に関わるものだ。お前の性格を変えようというのであれば、求める性格の人物と常に共にいることで性格を似せるのが一番かもしれんな。相手のようになろうと思いながら生活すればそれなりに変化は起こると思うが?」


「我の記憶では確かブートキャンプとかいうものに行った男の性格が180度変化したという記憶があるのだが」


「アレは一度精神を壊して戦士としての性格を植え込むモノだ。今のフローシュには要らぬものだな。で、フローシュはどんな性格を求めている?」


「もう少し、強かさが欲しいです」


 フロシュエルの言葉に龍華とブエルが考え始める。


「強かさならば小影が一番の気がするが……」


「アレはいろいろアウトだろう。天使見習いが金儲けの権化になりかねん」


「それもそうだな。ならば……あまりお勧めはしたくないが、奴に頼むか……」


「ほぅ、知り合いに強かさを持つ奴がいるのか」


「ああ、うむ。本当にお勧めはせんがな。とりあえず連絡だけは取ってみる。明日にでも行けるだろう。フローシュ。そう言う訳で明日は公園に来てくれ。修行も無しでそいつの元へ向かうことにしよう」


「あ、はい」


 強かさを何とかできる。

 その言葉にフロシュエルは思わず拳を握る。これで田辺さんの件も何とかなるかもしれない。

 もう十七日目になるのに未だに一つしか借金返済が終わっていないのだ。このままでいるわけにはいかない。


 田辺さんへのアプローチが出来るようになればすでに小出さん、井手口さんの攻略方法もある程度固まっているし、館に関しても成仏装甲を編み出したのだ。少しずつ、でも確実に成長しているのをフロシュエル自身が感じている。


 実際には普通の天使の成長の数十、数百倍の成長をしているのだが、フロシュエルにその自覚などなかった。


「さぁ、ではそろそろ始めようか」


 龍華の声で、フローシュと龍華の雨天修行が始まった。

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