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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十七日目1

「ふぁ~~~~」


 起き上がると共に、上半身だけ起こしたフロシュエルは欠伸をしながら身体を伸ばす。

 ベッドから起き上がり日差しを浴びながらもう一度伸びをする。


「ん~~~~っ、今日は雨ですか?」


 今まで快晴が続いていたのだが、本日は曇り空に雨粒が落下を始めている。

 アスファルトの濡れ具合から今降り始めたのだということが分かる。

 雨の始まりを告げるようなアスファルトの濡れる匂いが窓から漂って来る。


 不思議な匂いだが、なんだかフロシュエルには好ましい匂いに思えた。

 これが、雨の匂いなのだろうか? と適当な事を思いながら、ザーっと降り始めた雨をしばし見つめる。


選択肢G2:

     借金取りを行う

   → 修行に行きましょう

     気分じゃないので今日はパスで


 雨の日って実は初めてですね。

 などと感慨深く見つめていたフロシュエルだが、ふと、気付いた。

 公園で、龍華はずっと待っている。

 快晴の時はイイのだけれど、今日はどうなのだろうか?


 一昨日と昨日は修行に行かなかった。

 昨日はそう言えば連絡すらしてない。

 もしかしたら一日中待ってたかもしれない。今日も同じく公園で一人待ってたら?


「しゅ、修行行きましょう。これは全力で向かって謝った方が良い気がしますっ」


 素早くパジャマから着替えて食事に向う。

 既に小影はおらず、小影の母親がキッチンにおり食器を洗っている後ろ姿と、ダイニングテーブルで食事中のハニエルとブエルがいた。もう一度言おう。ハニエルとブエルが、隣り合って座っていた。


「おー、フローシュおはよ~」


「天使見習いか。今日はよく寝ていたな」


「なんでまたお二人が御一緒で……」


 呆れてものも言えないとはこのことか。片や大天使、片や魔王。双方本来なら血で血を争う大戦争を行っていてもおかしくない仇敵である。

 それが肩を並べて食事しているのだから驚きだ。


「今日は雨だから外に出る気になんなくてさ~。雨ってアンニュイな気持ちになるのだよ~」


「外に出ても濡れるだけだからな。わざわざ魔法で雨を弾くのも魔力を使って面倒だし、今日はコンビニにはいかず小影の持っているマンガでも読みながら過ごすつもりだ」


 自堕落過ぎる大天使と魔王にフロシュエルが何を言える訳もなかった。

 溜息吐いて顔を洗いに向かう。

 歯磨き終えて戻って来ると、既にフロシュエル分の食事が用意されており、小影の母親が居なくなっていた。


「あれ? 小影さんのお母さんは?」


「仕事じゃないの? フローシュは食事終えたら食器を流しに出せばいいって言ってたわよ~」


 と、食事を終えたハニエルが流しに食器を持っていき、そのまま放置。

 居間の方へと向かって行った。

 多分ソファでごろ寝しながらテレビでも見てるのだろう。

 最近のハニエルの日課のようなものだ。


 二つの足を器用に使って湯呑を持ちあげお茶を飲むブエルと共に、フロシュエルは食事を行う。

 しばし、魔王と二人きりの団欒。何とも言えない不思議な雰囲気のまま食事を終える。

 食器を流しに持って行ったフロシュエルが玄関に向かうと、ブエルも一緒に付いて来た。


「外に出るのか天使見習い?」


「はい。今日は修行に向かおうかと」


「こんな雨の日にか?」


「というか、連絡入れてないので龍華さん待ってそうな気がして。一応確認のために公園に行って来ます。いなければ今日は家で過ごすのも良いかもですね」


「ふむ。折角だ。我も付いて行こう」


「ブエルさんもですか? 濡れますよ?」


「魔法で弾けば濡れはせん。魔力を常時使うのが面倒なだけだ」


 成る程、とフロシュエルは納得する。

 自分も魔法で雨に濡れないようにしておこうとブエルにやり方を教わって魔法を発動。

 二人で雨の中、公園へと向かうことにした。


「しかし、連絡を入れてないからとこんな日に居るものか?」


 人気のないいつもの道は、どこか物寂しく見える。

 雨に穿たれたアスファルトは歩くたびにびちゃびちゃと音を立て、時折水のたまっている個所が見られる。

 よくよく見れば道は平らではなくでこぼことしていることに、今更ながら気付かされた。


「なんだか、静かですね」


「雨だからな」


「いつもと同じ道なのに、なんだか別世界を歩いてるみたいです」


「雨だからな」


「雨の落下音って言うんですか? なんだか私好きです。ほら、あそこからぴちゃんぴちゃん、こっちはたんたんたん。なんだかそこかしこでいろんなリズムの音がなってますよ」


「雨だからな」


「ブエルさんさっきからそればっかりですねぇ」


「雨だからな」


 少女とバケモノな容姿の二人は笑いながら雨の中を歩く。

 しかし、その穏やかな笑みも一瞬で凍りつく。

 辿りついた閑散とした公園には、龍華が一人、立っていた……

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