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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十五日目5

「え? 私の借金取りに同行したい?」


「はい! ダメでしょうか?」


 ブエルと魔法訓練を行いながら、縁側でお茶を嗜んでいた小影に頷く。

 集中しろ。とブエルに言われ、再び魔法に意識を向ける。

 今は魔力を固めて打ちだし、空中に浮いた魔力の形を変える練習をしている。


 これを行うことで火炎玉を水流玉に変化させたりなど、フェイントに使ったりできるようになる。

 火属性と思わせて水属性の攻撃が来るというだけでも相手からすれば驚きだろう。

 コツを掴むのが大変だし、本来はまず不可能な変化技なのだが、フロシュエルのセンスなら出来るのではないか? とブエルが考えていた魔法理論を伝えてみたら本当に出来てしまったスキルである。


 火から水、水から土、そして風、雷。幾つもの属性へと変化させていく。

 集中力がいるといえばいるのだが、魔力が豊富な御蔭かフロシュエルは小影の話を聞きながら片手間で行っている。

 ブエルからすれば自分の出来ない、ただ理論だけでしかなかった魔法をありったけの魔力とセンスのみで使えるようになるフロシュエルに脅威を覚えたほどだが、当の本人はそんなブエルに気付くことなく、むむむっと唸りながら雷球を光球に変えている。


「まぁ、良いんだけどさ。私の借金取りは参考になるかなぁ。フロシュエルにはちょっと難しいというか、堕天しかねないかも? 犯罪すれすれやってるからなぁ」


「小影よ、お前聖戦士ではなかったか?」


「何をおっしゃるブエルさん。聖戦士である前に一人の借金取りですよ。金返さないヤツに人権はねぇ」


「人間とは恐ろしい生き物だな」


「私に同意を求められても困りますブエルさん」


 和気藹藹? フロシュエル達が魔法訓練をしていると、ハニエルが居間の方からやって来る。

 縁側に座り、小影の横に自分の湯呑を置くと、ふはぁっと息を吐いた。


「お帰り」


「ええ。疲れたわぁ。定例報告会とか正直面倒だし」


「天使の報告会か」


「ええ。四半月ごとの大天使会。次は三か月後よ。小影ちゃん、次は代わりに行く気ない? お金だすよ」


「天界行けないっつの」


「じゃーブエルちゃんどう?」


「魔王に頼むな。阿呆か?」


「むー、皆の意地悪っ。フローシュちゃーん、お願ーい」


「いえ、私見習いなので大天使会とか無理ですから。そもそも天使になれるかどうかの瀬戸際なのに大天使会に出てどうするんですか」


「うー、味方が居ない……」


「怠惰過ぎるぞ愛天使。堕天して怠惰の魔王になった方がいいのではないか」


「だーれが怠惰王だ。昇天させるわよっ」


 ふくれっ面でお茶を飲むハニエルはふと、フロシュエルを見た。

 ちょうど光球が闇球に変化する。

 噴いた。


「ぶーっ!? ちょ、フローシュ!? 何ソレ!?」


「ふえ!?」


 ハニエルの驚きに集中力が乱されたフロシュエルが驚きの声を上げ、魔力が霧散する。


「何があっても集中を切らすなと言ったぞ。最初からだ」


「あ、ごめん」


「い、いえ……」


 素で謝るハニエルに大丈夫だと応えたフロシュエルは魔力球を作りだす。


「で、フローシュは何してるの? あんなの初めて見たんだけど?」


「さー。ブエルの理論通りにやってるみたいだから私にゃなんとも」


 湯呑のお茶をずずっと飲んで。ぽや~っと至福の笑みを浮かべる小影。話にならないとハニエルはブエルに視線を向ける。


「前々から思っていたのだ。魔力で作った筈なのになぜ火や水が出来るのか。同じ魔力で出現するのならば、途中で指令を変えることで炎を水に、水を土に、土を風に変えれるのではと思ってな。四大精霊の加護もあるしもしやと思えば案の定。フローシュの魔法センスがいいのだろう」


「な、何言ってるんですかブエルさん。私にセンスなんてありませんよ。魔力が大量だってだけですし、魔力の使い方知ったのも15日前くらいですよ」


「それで既に新魔法開発してることに驚きましょうか。センスが無ければまだホーリーアローからダーヂエグザイルに取りかかったぐらいでしょうよ」


 本来であればフロシュエルは今でもホーリーアロー以外が使えないはずだった。

 だが、龍華が、ピクシニーがブエルが完全が、沢山の人が教えてくれたからここまで魔法センスが上がったのだ。フロシュエルはそれが分かっているからこそこれが自分の実力であるなどと過信はできない。


 ただ只管に、皆の期待に応えようと必死に勉強して、スキルを覚えて行くのだ。

 素直だからこそ疑問に思う前に即実行し、理論が合っていてセンスがあるから初見の魔法でも覚えられるし創る事ができたのである。


「はー。私が見つけた原石ながら、なんというか、とんでもないの見つけちゃったかな?」


「今さらですな。フローシュの魔法見てたら直ぐに分かるでしょうに、たった数日で複合魔法とか。あたしゃグレイテストローク編み出すだけでも手いっぱいだったちゅーねん」


 呆れた顔の小影。ハニエルと二人溜息吐きながらフロシュエルの特訓を見守り続けるのだった。

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