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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
一日目・共通ルート
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試験の試験4

 作者:さぁて今日も三話仕上げてゆっくり休むかー。

 休日:やぁお疲れ、今日は一緒にゆっくりしよう龍華ぷろ……

  ザシュッ!!

 休日:……え? りゅ、龍華ぷろじぇくと……?

 作者?:ふふふ、残念だった俺の休日。貴様にはここで死んでもらう!

 休日:なっ。き、貴様……今日は仕事ダー……オノレ、謀った……な……

 仕事:フハハハハ、今作者にはお前の姿をした半休が迫っておるわ! はーっはっはっは!


 本日は三話目の投稿はありませぬ。

 翌日。人間界で初めての朝を迎えたフロシュエルは、朝食を終えて外に出た。

 初めての食事は美味しかった。パンに野菜を挟んだだけなのに美味しかったのだ。

 朝の明るい日差しを浴びて、背伸びを一つ。


「心地よい朝ですね、小影さん」


「ふぁ~。そうねー、おやすみー」


 欠伸をしながら寝巻姿で外にやってきた小影は、新聞受けから新聞を取りだしそのまま家に戻ってしまった。

 しばらく見守ったが踵を返してくる様子は全くない。


「ええっ!? あの小影さんっ!?」


 フロシュエルは慌てて玄関を開き小影に声をかける。


「んー、何ー?」


 すでに二階に上がろうとしている小影。自室で寝なおす気満々だ。


「あ、あの、取り立てに行くんじゃ?」


「あのねフローシュ。これは試験なの。私が付いて行ってどうすんの。あんたが一人で行ってこなきゃダメよ。場所は昨日のうちに教えたでしょ?」


「そ、それはそうですけど……でも、私人間界なんて初めてで……」


 戸惑うフロシュエルに、小影は近づいて額を小突く。


「いい? 天使になれば見知らぬ場所に行くのは日常茶飯事。下手すりゃ魔界行かなきゃいけないの。行った直後に戦闘に巻き込まれることもあるわ。そんな時、私を頼るの?」


「そ、それは……」


 正論だった。何も言い返せないフロシュエルは不安そうに小影を見る。

 しかし、小影はにべもない。


「行って来なさい。そして自力で全てやり遂げなさい。わかった?」


「は、はいっ。私やってみます」


 小影の言葉は少し薄情に思えたが、フロシュエルにとってもためになることは確かだった。

 自力で任務をこなす実力をつけるためにも、ここは小影について来てもらう必要はないのだ。

 気合いをいれて再び外に出る。


「よーし、今日中に全部回収するぞ――――っ!」


 意気揚々と、フロシュエルは出発するのだった。




 第一の家は小出さんという人の家だった。

家は普通だ。小影の家とそう変りの無い家。

しいていえば二階の窓がカーテンで隠されているくらい。

 

 小影からは他人の家を訪ねる場合はインターホンを押すように言われていたので、フロシュエルは気合いを入れ、「はっ」と人差し指で思い切り押した。

 ピンポーンという音が辺りに響く。


「さぁ、これで一件目完了ですよー」


 …………

 ……………………

 ………………………………


「……あれ?」


 五分ほど待ったものの、誰も出てくる気配は無かった。

 試しにもう一度押してみる。


「……家にいないみたい……ですね」


 肩すかしをくらった気分だったものの、フロシュエルは明日に来ることにして次の家へと向かうことにした。

 踵を返すフロシュエル。小出家の二階から、カーテン越しに見つめる視線があることに、彼女が気付くことはなかった。


「ええと、バロックさんという人ですね」


 アパート紅葉についたフロシュエルは少し離れてアパート全体を見上げた。

 二階建ての小さなボロアパート、一階四部屋で、右側に朽ちた鉄筋の階段がコンクリートで補強されて繋がっていた。


「うわぁ……こんな場所もあるんですねぇ……」


 昨日小影について回ったとはいえ、改めて見るとかなり気の毒になるアパートだった。

 プレハブ小屋の方がまだマシじゃないかと思える程に壁が崩れ、剥き出しの場所も結構ある。

 二階などいつ廊下が落下するかわかったものではない。


「ええと、左下……あ、アレですね」


 目的の玄関を見つけインターホンを押してみる。

 しばらくすると、がちゃりとドアが開き、異臭と共に一人の男が現れる。

 凄い臭いだ。受肉しているフロシュエルの鼻が受け取った異様な刺激で目から涙が滲んだ。


(う、うわぁ。凄い臭いの人だなぁ……)


 頭を掻きながら対応してきたのは、髭面のおじさんだった。

 ランニングシャツに股引、腹巻姿の男はフロシュエルを見て怪訝に眉を顰める。


「どちら様です?」


「あ、あの、小影さんの代わりでお金のと……」


 言い終えるより先にバロックさんはドアを乱暴に閉めた。


「りたてに……え? あの……」


 もう一度インターホンを押す。バロックさんは出てきてはくれなかった。

 そればかりか室内から何かを蹴倒すような音が幾度か響き、がらりと横の窓が開く音がする。

 不思議に思ってそちらに向かうと、バロックさんの走り去る後ろ姿が見えた。


「え? ええーーーーっ!?」


 もはや戸惑うばかりで追うことすら念頭にないフロシュエルはただただ見送り、バロックさんの姿が消えてしばらく、途方に暮れるだけだった。

 そして彼が消え去った道を見ながら気付く。借金、取り返せなかったな。と。

 既に二度失敗してしまっているのだ。これ以上失態は繰り返せない。


「よ、よし! 今度こそ!!」


 動揺したままの精神をなんとか正常に戻し、決意を胸にして三つ目の家へと向かうのだった。

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