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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十四日目4

「くそっ、再戦だ天使見習い!」


「……と、言っているが?」


 エジプト語のワルの言葉を直訳するブエル。

 流石に疲れ気味なフロシュエルとしてはこれ以上の連戦はキツイ。

 魔力もそれなりに使ったし、すでに五戦行った後だ。

 戦績は3勝2敗。最初に奇策でフロシュエルが勝利し、次の闘いでワルがこれに対処を見せて返り討ちにするという感じだ。


 つまり、今回の奇策に対する対処法を編み出したので見せたいのだろう。

 フロシュエルの魔力がそろそろ尽きそうなのでここで本日止めたいのが本音だ。


「ふむ。今回はここまでだね。堕天使相手に良く戦った方だよ。ワルが魔力を温存しているのに君はアホみたいに使っていたしね」


「へ? ワルさんアレだけ凄い魔法放っていながら温存してたんですか!?」


「いや、ワルが魔法使ったのは最初の闘いでも4回くらいだろ。他も大体それくらいだったし、空中停止して殆ど動いてなかっただろう」


 言われてみれば、殆どの戦闘でフロシュエルだけがちょこまか動き回って魔法を打ち込み対処するためにシールドや結界を張り巡らせ、魔力の大盤振る舞いである。


「多分ワルと君の使用魔力を比べると10倍くらいの差があるんじゃないか?」


「そ、そんなに使ってました?」


「最初の闘いでもシールドや結界を何度使っていた? 攻撃用の魔法に移動用の魔法。身体強化も使っていたならさらに魔力を使っているだろ」


 確かに、言われてみればワルと自分の魔力使用率は圧倒的だ。


「次からは魔力を極力使わずワルと闘う事をお勧めするよ。一戦一戦全力で闘うのもいいけど、魔族と闘う時は団体戦や一対多数の場合があるからね。温存しながら闘うのは必須だと思うよ。まぁその辺りはおいおいだね」


「精進します」


 確かに龍華や完全との戦いで個人戦にはそれなりに自信が出てきたフロシュエルだが、団体戦と聞くと流石に不安になってしまう。

 今は起こっていないが、魔物と天使の戦争が起こってしまえば自分が闘うのは堕天使一体だけではなくなる。まさに大軍団が相手になるのだ。ワルのような堕天使や魔王がわんさかフロシュエルを襲って来る。一人一人に全力で戦えば、今のように五人も倒せれば魔力枯渇で殺されるだろう。


「まぁ、折角乗りかかった船だ。次は団体戦も視野に入れてみるか」


「ウコバクたちでも呼ぶので?」


「最初だからな、確か勝手に増える魔物が何体か居ただろ。制御できるのは……まぁコボルトあたりからかな?」


「ゴブリンやオークではなく?」


「あいつら女と見ると暴走するじゃん。コボルトは忠犬だから僕の命令守るでしょ」


「なるほど、では、ああ、ノッカーなどもいかがです」


「ふむ。ノッカーか、コロポックルなども使えるかな? 堕天使数人召喚するか。イニアエス辺りの数人ぶつけるのもありだよな。指揮官にワルを据えるか」


 なんだか物凄い危険な闘いが繰り広げられそうな気がする。フロシュエルは戦慄しながらも新たな闘いに気合いを入れ直す。


「あ、でも明日は私試験の試験をするつもりです」


「ん? じゃあ明後日かな? まぁいつでもコンビニにいるから付き合ってほしい時には来ると良いよ。それまでにワルもいろいろ対策やら新技考えるだろうし」


「うわーお」


 自分の修行のはずだが、ワルまで強くなるとなると、まるでフロシュエルがワルの修行に付き合っているような気がしてくる。堕天使を強くしてどうすると言うのか、フロシュエルは困りながらも自身の強化のため、今は気付かなかったことにした。


「なんだ、今日はもう終わりか?」


「ワル。悪いんだけど今日は終わりだよ。フロシュエルさんも魔力が無くなって来たようだ」


「そうか。随分と動きまわっていたからな。仕方無い。だが天使見習い、次は勝ち越しなどさせんからな。貴様は俺に敗北するしかないと気付かせてやる!」


 何を言っているのかは理解できなかったのだが、態度から罵倒ではなくライバル宣言みたいなものだと理解したフロシュエルは神妙な顔で頷く。


「私は負けるつもりはありません。次だって絶対に勝っちゃいますから」


 バチバチと火花を散らす程に睨みあい、ワルとフロシュエルは互いに分かれる。

 次だって勝ってやる。フロシュエルは心に誓い、ブエルと共に家へと向かった。

 彼女の実力が既に天使の中でもパワークラスに匹敵していることなど知らぬままに。


「ふぅ、末恐ろしいなぁ」


「どうした魔統王?」


「いや、気付いてたかいワル? 彼女、君と最初に戦った時と今回の最後の闘いの動き方が違ってたよ」


「そうだったか?」


「ああ。実戦を積んだことでさらに急成長してる。アレが天使として動き出したらと思うと本当に末恐ろしいよ。どっかで堕天しないかな? 僕の側近に迎えるのに」


「確かに、奴は凄いな。俺が天使見習いだった頃、今の俺と闘えと言われても絶対に即死していたぞ? 今の実力ならパワーはおろかドミニオン共でも戦えると思うのだが、天使見習いに負けたのはかなりショックだったな」


 ワルの言葉にロストは顎をさする。あのような天使見習いを一度落とした天界と、拾いあげたハニエルを思う。ハニエルを堕天させれば原石の天使見習いを勧誘して来てくれないだろうか? ふとそんな考えも湧き上がったが、それこそ天使との最終戦争が起きそうなので心のゴミ箱に投げ捨てるのだった。

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