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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十三日目8

「リフレクトシールド!」


 テナー・ピタがギリギリで魔法を回避。

 テナーの悲鳴じみた激昂を聞いて、フロシュエルは慌てて魔法を紡ぐ。

 魔法弾の先に作り出した魔法の盾でマクスウェル・バスターが跳ねかえった。フロシュエルに。


「のあぁぁぁぁっ!?」


 必死に避けながら再びリフレクトシールドで壁に当る直前跳ね返す。

 まさにピンボール。

 跳ねまわるマクスウェル・バスターにフロシュエルとテナーは必死に避けまくった。

 もはや闘いとしての様相をなしていない二人は、フロシュエルが同じ魔法をぶつけて対消滅させるまでずっと逃げ回ることに徹するのだった。


「ひ、酷い事になりました……」


「後先考えないから……闘うのはいいし、全力を出すのもいい。でもここは塔の内部だということを念頭に置かないと、崩壊して自分が死ぬ場合もあるわよ」


「き、気を付けます」


 体勢を立て直す二人。

 フロシュエルは大きく息を吸って吐き出し、気持ちを切り替えた。

 確かに、今の一撃は失敗だった。

 だが、今の失敗は次の糧となった。


「では改めて……ホーリーアロー×30」


「リフレクトシールド!」


 明後日の方向に魔法の盾を作りだし、避けるフロシュエル。


「私の後方に?」


「リフレクトシールド!」


「また? 次は左?」


 連続する魔法弾を避けながら、空間の何処に配置するかを決めつつリフレクトシールドを幾つも作り出すフロシュエル。

 一部ホーリーアローが魔法盾にはぶつかり跳ね返っているが、明後日の方向に向かっているので双方のダメージはまだない。


「そろそろ、上げるわよ! ホーリーアロー×50」


「うえぇ!? ひゃぁぁっ」


 さらに20本増えたホーリーアローの連撃を泣き叫びながら避けるフロシュエル。

 時折振り返ってはリフレクトシールドで跳ね返す。


「跳ね返して私を狙うつもりでしょうけど、丸わかりよフローシュ」


「試合なのですから、いろいろ試させて貰います!」


 何度目かのリフレクトシールドを作りだし、フロシュエルは目的の位置へと向かう。


「ホーリーアロー……スプレッド!」


 それはたった一発のホーリーアローだった。

 しかし、避けたテナーの背後にあったリフレクトシールドに突撃した瞬間、無数の光の矢となって広がる。


「これは!?」


 無数に別れた光の矢が、多数のリフレクトシールドにぶち当たり、テナーを中心にホーリーアローの矢がランダムに駆け巡る。

 もはやどれがどこに向かっているのか把握すら難しい。

 焦るテナーが魔法を使うが、それもまたリフレクトシールドに跳ね返し自分を脅かす跳弾へと変化する。


 フロシュエルはと言うと、逃げ回るように見せかけて作っていたリフレクトシールドで作られた安全地帯へと入り込み、丁度正面をリフレクトシールドで塞いだところだった。

 魔法ではもうフロシュエルにダメージを与えられない。ばかりか自分へと跳ね返ってくる。

 接近戦で戦うしかないのだが、フロシュエルの居る場所まで行くには跳ねまわっている魔法の群れを掻い潜らなければならない。


「考えたわね。狭い室内ならではの方法だわ。でも……やはり小手先」


 テナーが呪文を唱える。無数に跳ねる魔法の一部がテナーへと迫る。


「ディメンションソード」


 先程フロシュエルが作りだしたのと同じような魔法剣がテナーの左右に六本ずつ展開される。

 その手前の二振りを手にしたテナーは片方で迫る魔法を切り裂く。

 次元すらも切り裂く勢いで斬られた魔法は剣と共に消失。

 続く一撃が振るわれた。注視していたフロシュエルは何故何も無い場所で振るうのだろうと疑問に思った次の瞬間だった。

 身体に痛みが走った。


 え? 気付いた時には身体が袈裟掛けに切り裂かれており、体表から血が吹き出る。

 あれ? 認識した次の瞬間には自分が崩れ落ちている事に気付いた。

 何が起こったのか理解できない。

 思考停止に陥ったフロシュエルに、跳弾を消し去り終えたテナーが近づいて来る。


「はい。ここまで。さっさと回復しなさい。深くは切ってないから直ぐに塞がるし後は残らないはずよ」


 一瞬、言われた意味が分からなかった。でも、回復という言葉に身体が反応し、回復魔法を唱える。

 回復魔法を使い全身の傷を消し去ったフロシュエルは身体の傷を確認しながらゆっくりと起き上がった。

 既にテナーから敵意は消えているが、自分が負けたという事だけはきっちりと理解できた。


「い、今のは?」


「天使でも滅多に使える人は居ないんだけどね。離れた相手を直接切り裂く魔法剣よ。相手が動きまわってるとなかなか当たらないんだけどね。普通なら今の戦法で勝利できたでしょうけど、離れていても物理攻撃を行える方法はあるのよ。安全地帯を作ったからって安心してはいけないってことね」


 ふふん。っと笑みを浮かべるテナー。実際彼女も一杯一杯だったが、先輩天使としての優位さを見せつけるためにあえて余裕ある表情を作っていることに、フロシュエルは気付くことはなかった。

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