十三日目4
「うぅ、酷い。酷すぎます……」
気絶から立ち直ったフロシュエルはすまなそうにしているノームを見付けるなり食って掛かる。
謝ってくるノームだが、一応これは彼の仕事でもあるのだ。
謝り終えたノームは地面に潜り、再び攻撃を再開して来た。
今度は気を配ったフロシュエルも即座に対応して地中から襲いかかる連撃を避けて行く。
龍華の連撃を避けていたせいか出現する土壁の速度が遅くなっているように感じてしまう。
出現の位置もよく見れば事前にもこりと動いているし、何処にどの角度で出現するかが理解できた。
技の出だしが分かってしまえば避けるのは容易い。
龍華の連撃に比べればあまりに鈍いノームの連撃など、飛んで避けるまでも無い程だ。
流石に地上に降りると視界の関係上真下がおろそかになるモノの、避けるだけならそれでも出来る。
といっても魔力関知による捜索で攻撃予測が出来ればいいのだが、目視でしか今のところ避けられないのが難点だ。魔力関知が出来れば地上で避ける事も出来るのに。
フロシュエルは羽を羽ばたかせ旋回しながら土の柱を避けて行く。
土の中に混じったノームの姿も既に確認済み。
あまり時間を掛けるのもアレなのでフロシュエルはホーリーアローをノームの手前に打ち込む。
「にぎゃぁぁぁっ!?」
「降参してください、次は外しません」
ノームは即座に土から迫り出しホールドアップ。
すでに一回勝利しているのだから普通に闘いになればこうなるのは当然だ。
ノームを下したフロシュエルは次の階へとさっさと向う。
一度クリアした場所なのだからここで躓いている訳にはいかないのだ。
サラマンダーの居る階層を飛翔で一気に踏破。待っていたサラマンダーに障壁ごと体当たりで拭き散らす。
「ぎょあぁっ!? ちょ、俺の扱い酷……」
「ふろーしゅはやすぎっ」
サラマンダーが攻撃する暇すら与えず降参させる。断じてノームの先制攻撃でやられた腹いせではない。
遅れてやって来たピクシニーが追い付くのを待って、フロシュエルは次の階層へと向かう。
一応、ここに水を流す事をサラマンダーへと告げておいたが、彼は全く理解しきれていないようで、お、おう? と返事をしていた。
おそらくしばらくしたら突然部屋に侵入して来る水に驚いていることだろう。
そうなるだろうと思ったフロシュエルだったが、詳しく説明する気はなかった。
サラマンダーが理解するのには一時間、二時間の無駄な時間が必要になるだろうからだ。
なのでさっさとシルフィードのいる上階へと向かう。
次階へと昇ると、物凄い風圧で再びピクシニーが吹っ飛ばされた。
今回は万全の対策を行っているためフロシュエルは普通に暴風の中を歩いて行く。
自身の手前に斜めの障壁を二枚作り、風を左右に吹き散らす。
土魔法で足を土で固めて足場を作り、吹き飛ばされない土台も作る。
さらに熱を奪われないように炎熱魔法で自身を温めておく。
「来たな天使見習いっ! 今回は前みたいに捕獲なんかされないわよ!」
「ほいさ!」
御免なさい。といいながらフロシュエルは魔法の部屋を作りだす。
そこへ、丁度風に乗って移動したシルフィードが現れた。
「ってぇ!? えええ!? なんでぇ!?」
と言っているようなのだが、外に音すら漏れない魔法障壁の壁なのでシルフィードの声は聞こえない。
簡単に言えば魔力探査でシルフィードの位置を特定し、龍華との戦いで培った予測行動の御蔭で捕獲したのだが、フロシュエルは説明するのも面倒だったので苦笑いで返しておく。
しかし、こうして戦闘を行うと嫌でも完全と龍華によって自分の戦闘力が引き上げられていることを認識させられる。
慢心だけはし過ぎないように力を存分に使おう。
自分よりも強い存在は五万といる、それは忘れてはならない。
「ふひー。ようやくおいついたー」
「ピクシニーさんお疲れ様です。ここからが勝負ですよ」
「ちょっと、私じゃ勝負にならないってこと!?」
「あ、いえ、そう言う訳ではなくですね」
魔法障壁を解除されて脱出したシルフィードが耳聡く聞きつけ反論して来る。
彼女をなだめるのに結局30分のロスが出るフロシュエル達だった。
マシンガントークにしどろもどろに言い訳しつつ、最後には強引に上階へと昇ったフロシュエル。明日またこの塔に挑むことになれば面倒そうだと苦笑する。
これで本日でウンディーネを倒し認めさせる必要性が増えてしまった。
もう風の精霊様には出会わないよう気を付けなければならない。
ウンディーネのいる階層にやってくると、通路が全て水に覆われた世界へと変貌していた。
空気が全く無いので下の階層の空気を魔力結界で閉じ込め酸素ボンベ代わりに使う事にする。
さぁ、再戦だ。フロシュエルは気合いを新たにウンディーネの待つ部屋へと向かうのだった。




