十二日目7
「はぁ、どうしましょう?」
小影の家に戻り、食卓を囲みながら、フロシュエルは嘆くように告げた。
当然、目の前の小影に告げるためである。
ご飯にぱくついていた小影は無視しようかとしていたが、じぃっと感じるブエルからの視線で頭を掻きながら面倒臭そうにフロシュエルに視線を向けた。
「どったの?」
「あ? その……ウンディーネさんを攻略できません」
「なんだそりゃ」
ウンディーネ相手に炎、水、風、土。四大元素魔法に加えて雷撃や光、闇を使ってみたが一つたりとて効果が見られなかった。結局今の自分では攻略できないと、こうして帰って来たのである。
その事を小影とブエルに告げてみると、二人して視線を見合わせ合う。
「ウンディーネ対策か。もうそんな高尚な事考えだしてる頃なのねぇ」
「ふむ。ウンディーネは水の精霊だったな。はて、何が有効であったか……」
考え出した二人は同時に顔を上げた。
「アレだな。別に魔法で何とかしようとする必要が無いのではないか?」
「私なら壁に穴開けて水抜くかなぁ。戦うことなくさようならっすわ」
根本的な解決策は一つも出て来なかった。
食事を済ませた彼らは庭にでてミックス・マジックの練習を始める。
光と雷撃を混ぜて強い光で目を眩ませる雷撃魔法やら、水と土を混ぜたゲイルバスター、風と炎を混ぜたフレアトーネードなど、幾つかの魔法を教えられ、実際に最小魔力で作ってみるフロシュエル。
一度やり方を覚えたせいか、混合魔法も高確率で成功し始める。
次に身体強化魔法と攻撃魔法を同時使用したりなど、幾つもの魔法を覚えさせられたが、ウンディーネ対策は一つも無かった。
今のところ彼女をどうにかする方法はフロシュエルに無いとさえ思える。
ピクシニーにシルフ閉じ込めたような方法はどう? と言われはしたものの、その方法も、水を自由に移動するウンディーネの動きを封じないことには意味が無い。
「参りました」
自室に戻り、フロシュエルは息を吐く。
日課になったマンガを読みながらしばらく。
はっと驚いた顔をして、フロシュエルは目の前にあるマンガにがぶり寄る。
「こ、これだぁっ!!」
そこにあったのはまさに適任と思える手法だった。
ウンディーネ攻略の技法が詰まっている。
これを魔法で再現する。
フロシュエルは必死に考えを纏める。
まずは試さなければならない。魔法を想像し、創造するのだ。
相手は流れる水。ならば小影のいうように、穴を開けて流し込めばいい。
一つ所に留めてしまえば、逃げ場などない。
その容器はブラックホールのようなモノでいい。むしろ別の所に転移するようにしてしまえば容量は気にならないだろう。
サラマンダーの辺りに水が流れ込んで勝手に蒸発するように仕込んでしまおう。
となると、転移魔法を覚える必要がある。
風魔法で水を集める必要もあるし、ウンディーネだけを分離させるフィルターも必要だ。
混合魔法を覚えれてよかった。これなら充分魔法装置が作れそうな気がする。
まずは転移魔法の練習だ。
というわけで、まずは自室に存在する消しゴムを手に取り、机に穴を作り出す。
ここに投げ込むと別の場所に行くように、今回は少し離れた場所にホワイトホールを作り出す。
創造魔法なので上手く行くかは不安ではあるが、一応発動はしたのでフロシュエルは思い切って消しゴムをブラックホールに投げ入れた。
キュウゥン。
変な音がして消しゴムが穴へと消える。
少しして出現するホワイトホールから現れた消しゴムと思しき物体。
最初は外装のMOROのロゴが入ったケースに入っていた消しゴムは、真っ白な普通の消しゴムとしてホワイトホールから出現した。
ケースどこ行った?
消しゴムを手にしたフロシュエルは消えたケースが見つからずに首を捻るのだった。
「ふむ。とりあえず成功ですね。次は鉛筆で試してみましょう」
鉛筆をブラックホールに入れる。
かなりちびった鉛筆で、消しゴムと同じ長さしかない小影のお下がりだ。
それが……ホワイトホールから出現する。
真っ黒な外側のネジ曲がった鉛筆だったものが。
内部の芯が全て外側に来ており、外側にあった緑色の塗布物は全て内側に。中心から裏返したような意味不明な形状変化で戻って来たのである。意味が分からない。
もしかして……と消しゴムを半分で割ってみると、内部からケースが表裏逆になって出現した。
「うわぁ、謎の変化が……これは内部に生物入れたら恐ろしい事になりそうですね。無機物限定にしときましょう。もしくはウンディーネ対策のみの封印指定で」
フロシュエルは作りだしてはいけない魔法を作ってしまったことに気付いて溜息を吐く。
神々からしても驚きの魔法は、しかし人知れず生まれて封印されるのだった。




