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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十二日目6

 シルフィードを捕獲したフロシュエルとピクシニーは彼女を開放する。

 一応これで合格ということなのでサインを貰って送り出された。

 捕獲された事が納得できないと喚いていたけど、一応合格という事らしい。


 シルフィードは怒りながらもフロシュエルを送り出す。

 風の精霊たちがフロシュエルを代わりに持て成すように周囲を回っている。

 フロシュエル自身は気付いていないが、次の階層へと向かうまで、風の精霊たちが応援しながら送り出すのだった。


 次階層は青いタイル張りの水のせせらぎが聞こえる通路だった。

 入り組んだ迷路のような階層を、ピクシニーと歩くフロシュエル。

 警戒はしているのだが、敵と思しき影も、攻撃も来ていない。


「のーむ、さらまんだー、しるふぃーど。とくればのこりはわかっちゃうよねー」


「えーっと、水に関する精霊さんですよね。えーっと、えーと……うんなんとかですよね? えーっと、うん○ーね?」


「ふろーしゅ、それはいろいろまずいとおもう」


「ウンディーネですっ。殺しますよクソ天使見習い」


 ピクシニーとの会話をしていたはずのフロシュエルに第三の声が掛かった。慌てて周囲を見回せば、目の前の床からせり上がるように水が人型を取り出現する。


「初めまして。この階層で貴女の実力を見る精霊、ウンディーネです。此度はよわっちぃ天使見習いの実力を見ながらけちょんけちょんにしてあげなさいと言われているのですが、すごいですね、他の三大精霊にはもう認められているのでしょう? 本気ではないお遊びであるとはいえ、随分とまァ甘いですわね」


 水で出来た女性、ウンディーネがゆらゆらと揺れながらフロシュエルを値踏みする。

 瞳を細め、ニヤリと笑みを浮かべた。


「わたくしを、他の方々と一緒にしてはなりませんよ雑魚天使見習いさん。さぁ、わたくしを認めさせてもらいましょうか」


 とぷんっと地面に消えるように人型が崩れる。

 刹那、どどどどっと何かの音が響いて来た。


「ありゃー、これなんかいやなよかん」


「ど、どうしましょう!?」


「とりあえずまりょくつかってみずをふせぐか、すいちゅうでもくうきがすえるようにするかだね」


 と、言いつつ魔力を練り上げたピクシニーが何かを行った。

 遅れて、強烈な勢いの水が通路一杯に押し寄せてくる。


「き、きぃやぁああああああああああああああああ!?」


 咄嗟に防壁を張って防ぐが、水流の圧力は馬鹿に出来なかった。

 即座に押し流されて階段付近まで濁流に呑まれ、階段下に転がり落とされる。

 すると風の精霊たちにより水が吹き上げられ、階下まで水が来なくなった。


 頭を振って水気を飛ばしていると、水中から現れるピクシニー。

 全く濡れてないので魔法か何かで自分の安全だけ確保したのだろう。

 ずぶ濡れのフロシュエルを見てけたけたと笑っていた。


「うぅ、酷い目に遭いました」


「あはは。でもしぜんのきょういってすごいから、いつなにがあってもたいしょできるようにしないと」


 確かに、いきなり水攻めを経験しないとも限らない。

 今回は事前に何かが起こる予兆もあったし、魔法を練り上げる時間もあった。

 呆然としていて何も出来ていなかったフロシュエルの失態だ。


「うぅ、やはりまだまだですね私。でも、負けませんっ」


 ピクシニーを見てなんとかやり方を思いついたので、魔法で自分の周囲に膜を作り、空気袋を背中に背負う形で作って水中へと飛び込む。


「どうですかピクシニーさん。これなら移動も会話もできますよ」


 と、告げて気付いた。

 確かに喋ることはできる。

 でも水で区切られたピクシニーに声を届ける術などなかった。


「うーん、まだまだ抜けてるところが多いですね。日々精進です」


 溜息を吐きながら二人で迷路を探索する。

 空気の残量を気にしつつ歩いていると、ようやくウンディーネらしき存在を見付けた。

 少し大きめの部屋で、水中に揺らめくウンディーネ。


 闘うにしても水中戦である今の状態でフロシュエルに勝ち目などなさそうだ。

 羽も使えないし、素早い動きも出来はしない。

 どうしたものかと考え、弱点を突いて行く事を考える。


 本来、ゲーム的な要素ならば水には炎が効果的。しかしサラマンダーに水は意味が無かった。

 ならば、水の精霊であるウンディーネも同じ可能性がある。

 となれば、風か土での攻撃が良いのだけれど……


 フロシュエルは考える。その間ウンディーネは揺らめくだけだ。どうやらこちらが何かをするまで待っているつもりらしい。

 いくら試験といえども手を抜き過ぎではないだろうか? それよりも、フロシュエルでは傷すら付けられないと鷹を括っているいるだけかもしれない。

 ならばその鼻を明かす意味でも、ここで征圧されるわけにはいかないのだ。

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