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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十二日目2

「きゃあぁぁぁぁっ!?」


 錐揉み回転しながらフロシュエルが床に激突する。

 天井に羽があたり落下する事数回、壁に擦って墜落すること十数回。

 空中機動などあまりに無謀な室内戦はフロシュエルの動きを完全に阻害していた。


 魔法の威力も抑え過ぎたり、強め過ぎたりとなかなか制御が難しい。

 威力を込め過ぎるとピクシニーからヤジが飛び、生半可な攻撃は完全の反撃により手痛いしっぺ返しになる。

 完全との組手が終わった後は龍華との実践。


 これもまた今までのようにはいかない。何しろ広い森とは違い逃げ場がない。

 なのに龍華の攻撃は今まで同様部屋の半分くらいを巻き込む台風だ。

 アレが迫ってくるさまは筆舌しがたい恐怖と言える。


 しかし、今まで散々龍華に追い回されたフロシュエルは迫る彼女の攻撃にそこまでの恐怖はなかった。

 迫る敵の攻撃として認識し、どうやって回避すべきかに思考をフル回転させる。

 もともと余り使ってなかった思考回路が総動員されたおかげか、幾つかの回避ルートが見つかる。

 それを短い間で精査する。


 例えば、後方に下がる。今は逃げられるがしばらくすれば迫り来る龍華の刃に巻き込まれさんざんに切り裂かれるだろう。

 回復は出来るがわざわざ痛い思いはしたくない。

 ならばこの選択肢はムリだ。


 他に行けるのは右側の斜め上だろう。

 しかしあの辺りはおそらくブラフ。きっと通ろうとした瞬間やられるだろう。

 あと幾つか行けそうなところもあるが、それらもきっと隙に見せたブラフ。

 本当の隙は……きっとあの猛攻の中を抜けた先にある。


 方法は……あれ、ちょっと待てよ。

 フロシュエルはふと思いつく。

 自分の能力を使った方法。


 例えば、生身では確かに切り裂かれるだろうけど、全身を硬くすれば? あるいは土の防具を身にまとえば? 幾つも幾つも考えては没にしていく。

 龍華に対する最善の一手。

 今できる至高の一手。


 周囲に魔力を張り巡らし、相手の動きを読みやすくする。

 迫る龍華の剣撃の隙間を観察、やはり飛び込むだけの余地は残してくれている。

 これが隙をわざと作ってくれていなければ完全に詰んでいるだろうが、今回は隙を見付けて龍華に攻撃を加えるための修行。


 風の魔法を唱え設置、火炎の魔法をさらにプラス。

 土魔法で衝撃吸収。水魔法で周囲を防御。雷魔法で帯電。氷魔法で水の表面を固めて防壁に。

 光魔法で突撃を示唆、闇魔法で幻惑。

 今まで習った魔法を全て使いたった一度の突撃に全てを掛けて、吶喊。


 風と炎の推進力でロケットダッシュしたフロシュエル。

 飛び込んできた彼女に龍華は咄嗟に鎌を合わせる。

 しかし、鎌が切り裂いたのは光の屈折で作られたフロシュエルの幻影。


 振り切られた隙を付いて闇に隠れていたフロシュエルの一撃が龍華に掠る。

 やった、また当てられた。

 日々強くなっていく感覚に思わずガッツポーズ。


 むぅっと面白く無さそうな顔をする龍華だが、彼女が敗北したのは事実だった。

 といってもさらに段階が上がるだけでまだまだ龍華自身の実力には遠く及ばないのであるが。

 フロシュエルはそれでも龍華に一撃入れられたことで嬉しげに笑う。


 完全も満足そうに頷くが、龍華はさらに不機嫌になる。

 やはり完全にはまだ一撃入れられていないのに自分に一撃入れた事が不満らしい。

 そう言われても困る。フロシュエルはその時出来る事を行っているだけなのだから。


「ふむ。それなりに良い感じだな。これならこの塔も攻略出来そうだ」


「納得いかんが今日からはここの攻略をやってもらう。ピクシニーが一緒に行きたいと言っているから二人で行くと良い。予定日数は5日かな?」


「一階層一日の計算ね。それくらいでいいんじゃない?」


「そこまで広くないですけど、そんなに掛かりますかね?」


「まぁ、妥当だろう。それに階層を越えていかねばならん以上、最上階まで上がる時間も考慮に入れねばならんだろう? 上手く行けば1日かからないだろうがな」


 何があるのか分からないので楽勝だとは言えないが、たった六階の塔。5日もかかって攻略できないとはいいきれない。

 余程面倒なギミックでもあるのだろうか。

 この二人の事だからあるのだろう。

 嫌な予感を若干覚えつつ、フロシュエルはピクシニーを見る。


「えーっと、それじゃあ行きますか?」


「うんうん。いっちまいましょう。がんばれふろーしゅ」


 ピクシニーの気の無い返事にコクリと頷きフロシュエルは階段へと向かう。

 龍華と完全に見送られながら二階へと上がって行った。

 そして……


「なんっですかこれぇぇぇ――――っ!?」


 土で出来た迷宮を前に、彼女はありったけの声を上げて叫んでいた。

 地天使の塔二階。そこは魔物や地天使などの共同制作により半ば異界化し、土で出来たダンジョンと化していた。

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