表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
55/177

十一日目4

「は? 魔統王がいた?」


 聖家に帰りついたフロシュエルは当然小影に先程の事を興奮気味に告げていた。

 小影が用意したお茶を縁側で頂く小影とブエル。

 意味不明な存在と可愛げのある少女が同時にふはぁっと幸せそうな笑みを浮かべた。


「って、なんでそんな落ち着いてるんですかァっ!」


「いやいや、魔統王よ? なんでこんな身近なところに居るってのよ。魔王がコンビニで立ち読みとか笑えるでしょ」


「我も魔王だが?」


「え? ブエルって魔王だっけ? 魔王(笑)じゃなかったの?」


「小影よ。さすがにそれは酷いのではないか。確かに我が魔王らしく振る舞っていないのが原因なのだろうが、我としては人間の営みを壊すのには反対なのだ。貴様等は勝手に堕落しているからな。魔王が手を加えずとも自然天使共から離れていくさ。下手につつく方が天使の介入と魔王の存在が明るみになるので危険だと言っているのだが、他の魔王は聞かぬでな。耳を傾けてくださったのが魔統王のみというのがなんとも悲しい話ではないか?」


「はーん。どうでもいい話だねぇ」


「どうでもよくないですっ!! 魔統王ですよ魔統王っ! これは絶対にハニエル様に報告しますからね!」


 流石に発見して無視するわけにはいかない。これで試験がご破算になって天使と悪魔の最終決戦が始まるかもしれないが、居場所を見つけてしまった以上報告しない訳にはいかないのだ。

 しばらく二人がお茶を嗜むのを横で見ていると、ハニエルが帰って来た。


「ふぃーつっかれたぁ。まったくガブリエルちゃんも人使いが荒いわぁ」


「ハニエル様! 大変です。コンビニに魔統王がでました!」


「あん? あー。よく居るわよねアイツ」


「はい?」


「ロストちゃんでしょぉ。よくコンビニで立ち読みしてるわよ」


 意味が分からずフロシュエルは呆然と立ちすくんだ。


「ふっ。ほれ、歌にもあるだろう、これが談合社会というものだ」


「ぶ、ブエルさん、あの、えっと、どういうことで……?」


「ようするに魔王と大天使共には幾つか暗黙の了解というものがあるのだよ。よく考えてみたまえ。魔王が地上に出たら討伐すべしと天使全員に通達が言っているのだろう? だが魔王が誰か一匹でも撃退されたというのはまず聞かないはずだ。魔王の一部は普通に地上に来ているのにだ。このまえカイムなどはカードゲーム大会なるものに出ていたぞ?」


「え? それ私も初耳なんだけど?」


「天使としては規律を守って堕天しなければ問題は無いのだ。わざわざ命を掛けて魔王を討伐して仲間を死なせるよりは話の分かる魔王と交渉して敵対させない、人間を襲わせない状態にしておく。これだけでも充分役割を果たしているということさ。もちろん。魔統王と天使長たちは密約を交わしている。ソレを知らない下っ端天使共だけが血眼になってすでに居場所の分かっている魔統王を探している訳だ」


 何ソレ酷い。そう思ったフロシュエルはハニエルに視線を向ける。


「あはは。大天使クラスにならないとその辺りは教えちゃダメなんだけど、フローシュは知っちゃったから特別よん」


 天使が、天使が魔王と話し合いをしている?

 教えられていた天使としてのあり方が根本から崩された気分だった。

 頭が混乱して考えが纏まらない。


「ふむ。小物には少々荷が重いらしいな。見習いよ。考えるのは明日にでも回して今は魔法の練習に意識を向けろ。どうせお前一人が抗おうとしたところでシステムを変えることなど不可能だ」


 反論しようと口を開き、でも何も言葉が浮かばなかった。

 しばし逡巡し、フロシュエルはひとまず思考を放棄する。

 考えるのは後にしよう。今は頭をからっぽにしてブエルの魔法講習を受けるべきだ。

 相手は魔王機嫌を損ねると殺されかねない。


「では本日は少しステップアップだ。融合魔法の練習をする」


「融合、魔法?」


「うむ。例えば風と炎を合わせて熱風にするとかだな。基本属性が使えれば割りと簡単にできる。やって見せるのでしっかりと見て覚えよ」


「お、メ○ローアだ、メド○ーアやるんっしょ!」


「なんだそれは? 比較的ここでやっても周囲にダメージのない土と水で行うのがベストだが、我は水が得意ではない。よって……」


 炎の弾と土の弾を作り出し、身体の前に集め、混ぜ合わすように融合させる。


「おお、中国系の陰陽みたいな感じに混ざってる。何これちょっと、これ使いたいんだけど!? 練習しよっと」


 と、立ち上がった小影がフロシュエルの横に来て練習を始める。

 二人揃って新人だ。

 ……なのだが、小影は直ぐにコツを掴んだようでおお、混ざる混ざると実演して見せていた。

 一方、考え事で頭が働かないフロシュエルは苦労していた。


 やり方自体はフロシュエルでも楽にできるのはわかるのだ。

 しかしイマイチ集中出来ない。

 こんな状況で魔法の授業などやっぱり出来る訳が無いのだ。

 結局……身が入らなかったフロシュエルが融合魔法を成功させることは出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ