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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十一日目3

 修行が終わった。

 地図の作成二日目である。

 フロシュエルは手書きの地図を片手に周囲を見る。


「この辺は初めて来ますねぇ。おぉ、こんな所に学校があったのですね!」


「あれー、ふろーしゅ?」


「ほへ?」


 学校の前を歩いていたフロシュエルは、直ぐ近くから聞こえた自分を呼ぶ声に視線を向ける。

 ふよふよと飛びながらピクシニーがフロシュエルの元へとやってきた。


「あれ? ピクシニーさん家に帰ったんじゃないんですか?」


「なにをおっしゃるふろーしゅさん。ここがわたしのいえなのだよ」


 と、指差す先にあったのは学校から眼と鼻の先だった。


「はへぇ、こんな場所に住んでたんですねぇ」


「まぁねぇ。でもふろーしゅがここまでこれるとはねぇ。せいちょうしたねぇ」


 しみじみと呟くピクシニーにむっと頬をふくらますフロシュエル。


「私だって成長するんです。明日から修行もパワーアップして塔に集合って言われたんですよ。何するか知りませんけど」


「いや、それきいてたからね。ふふん。ふろーしゅなんかにあのとうがこうりゃくできるかなぁ」


 攻略? と疑問に思ったが、なるほど、あの塔の内部を攻略すればいいのならば問題はない。

 パワーアップしたフロシュエルの実力を見せてやる。燃えるフロシュエルは、むんっと力を入れる。


「おもしろそうだからわたしもいっしょにいったげるねー。なにもしないけど」


 隣に来てくれるだけでも有難いです。そう思いながらピクシニーと別れる。

 公園からどんどん離れていく。

 その分地図が埋められていく。

 縮尺があいまいなせいで歪になってはいるが、その分書いて消してを繰り返し少しづつ街並みが出来ていく。


 世界が広がっていく。

 何も知らなかった自分の無知が理解出来る。

 世界はこんなにも広い。

 ただ歩くだけでも見知らぬ世界はそこにあり、歩けば歩くほどに未知は既知へとなっていく。


 清水さんの家に辿りつく。

 久々に嗅いだフロシュエルの臭いに釣られ、けん太が顔を出す。

 しかし、挑んで来る気配ではないと気付いたようですぐさま引っ込んでいった。


「ふむ。こうして見るとけん太さんも所構わず襲って来る訳じゃないのですね」


 帰って行くけん太の後ろ姿を見る。

 ふりふりしているお尻がちょっと可愛いと思ってしまうフロシュエルだった。

 クスリと笑みを浮かべてさらに地図を広げる。

 洋館が広過ぎて地図にするのが難しかったが、なんとかそこまで書き終え本日終了。

 コンビニへと向かう事にする。


「また居る……」


 コンビニに来たフロシュエルが見たのは、立ち読みを続ける魔王ブエル。

 その横にはちょっと暗そうな前髪の長い男が一人。

 隣にいる魔王様には気にもせず、ちょっと怪しげな本を立ち読みしている。

 制服を着ていることからして学生なのだろうけれど、これはいただけない。注意すべきだろうかとフロシュエルは考える。


 フロシュエルがブエルの元へ行こうとすると、背後の扉が開き、新たな客が入ってくる。

 全身甲冑に身を包んだ男。どう見てもコスプレにしか見えない騎士風の男だ。

 その男はフロシュエルを一瞥しただけで横を通り過ぎ、ブエルの元へ、否、その横にいる男の元へやってきた。


「ロスト様、そろそろお時間です」


「ああ、うん。もうちょっと、三澤ちゃんのセクシーショットが次のページに……」


「ロスト様……」


「ふむ。魔統王よ折角現界しておいてこのような場所で暇を潰す生活はどうなのだ」


「お前に言われたくないよブエル」


 ……あれ? 会話がおかしいな。

 フロシュエルは違和感を持った。よくよく吟味して考える。

 ブエルが親しげに話しかけている人間。

 否、人間と思しき生命体は魔統王。

 魔統王、魔王を統べし魔界の統一者……


「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」


 その日、店内で一番盛大な声が轟いた。


「ん? おお、天使見習いではないか。そうか、もうそんな時間か」


 能天気に雑誌をしまう魔王ブエル。

 しかし、フロシュエルはそれどころではない。

 目の前にいるのだ、魔統王、天使が血眼になって探している魔界最悪の魔王にして地上へと出てきているという噂の存在が。


「んん、ブエルの知り合いか?」


「うむ。今居る場所に居る条件として魔法を教えるようにいわれてな」


「ふーん、天使を魔王が育成か。面白いね」


 じゃあね。と缶コーヒーを買って出ていく魔統王ロストとその側近。

 入れ違いに小影が入ってくる。


「お、フローシュいるじゃない。ブエルそろそろ帰ろうかぁ~」


「こ、小影さん後ろ、後ろぉぉぉっ!?」


「は? 後ろ? おー、チェクトも居たんだ」


「ちが、違います、まと、まとままままままっ」


 フロシュエルが壊れた。

 小影は小首を傾げ、ブエルは気にせずホットコーンポタージュをレジに持っていく。

 彼らはいつものようにマイペースだった。

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