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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十一日目2

 世界が広がった。

 まるで草が、木が、森がフロシュエルに協力しているかのように、声が聞こえる。彼らの見ている景色が分かる気がする。

 魔力を薄く広げることでその空間に入った生物の動きがなんとなくわかる。


 龍華が入り込む。境界の中に入って来た龍華の動きが手に取るように分かる。分かるといは言え反応できる速度じゃないけれど。

 動きはあまりにも速い。だけど、見える。彼女の動きのたった一瞬。確かに隙ができていた。

 注意深く観察して、彼女をしっかりと見定めて、それでも稀に気付けるだけの小さな隙。でも確実にフロシュエルがソレを攻撃できるように作られた決定的な隙だ。


 弱点が見つかれば後はそこを付くだけだ。

 魔法を練り上げる。

 ただ攻撃しただけでは避けられる。

 受けられる、切り払われる。


 考えろ。設置型の風魔法では無理だった。

 ならどうする? ホーミング? 意思を乗せることまでは可能になったがそちらの動きに思考が割かれて逃げ切れなくなる。

 ではどうする? その答えは既に思考の中にある。


「行きます龍華さん! 青き炎の散弾!」


 空中で前宙するように身体を丸めて上下逆さになる。

 ため込んだ魔力を形にして、龍華に撃ち出す。

 そのまま回転の続きを終えて元の位置に戻ると羽ばたきを再開させて距離を取る。


 生み出された魔力は青き炎の弾丸となり龍華に襲いかかった。

 当然、鎌の一撃で薙ぎ散らされる。

 と、思わせて、


「なっ!?」


 切り払われた瞬間、青い炎が散開する。

 無数の小型弾丸へと変化した炎の連弾が龍華に襲いかかった。

 驚く龍華がなんとか防ぐが、数弾取りこぼし被弾した。


 たった数個の小さな青い炎。しかし、直撃した瞬間に龍華の身体を激しく燃やす。

 ソレに気付いたフロシュエルが慌てて逃げるのを止めて龍華を助けに向う。が、龍華は鎌の柄を地面に突き刺し頭を掻いていた。

 全く気にした風には見えないが、今も青い焔に焼かれている。


「りゅ、龍華さんっ、い、今消しますからっ」


「構わん。これは私の失態が招いたことだ。燃え終わるまでこのままでいい。それより、替えの衣類を用意せねばな。完全、すまんが買ってきてくれ」


「私がパシリ? まぁいいけど」


 何処に潜んでいたのか完全の声が聞こえて気配が去っていく。

 え? 居たんですか? 思わず声の出た方角を探すフロシュエル。

 陰行状態の完全は、魔力を巡らせて周囲の動きを探っていてすら関知出来なかった。

 折角新技を覚えたのに。とフロシュエルはがっくりと項垂れる。


 だが、それなりに使えることは確認した。

 あとはもっと使い易くすることを突きつめていけばいいだろう。

 目標は隠れた完全すらも見つけられることだ。

 目標が定まったので今後の課題にして、龍華に視線を戻す。


「まだ十一日しか経っていないのだろう。随分と目覚ましい変化じゃないか」


「あ、えと、その、ありがとうございます。自分でも、なんだか自分が変わってるってわかるといいますか、凄く嬉しいんです毎日が。日々新しい自分に生まれ変わってるみたいで」


「良い傾向だ。このままを維持しろ。お前ならさらに強くなれるだろう」


「は、はい!」


 炎が収まり龍華の服が焼け落ちた。

 全裸の龍華に思わず目を背けたフロシュエルだったが、次の瞬間、龍華が服を着ていた。

 隣に完全が戻って来て立っている。


 あれ? ついさっき裸に? 思わず目を擦るフロシュエルだったが、先程見た光景が幻覚だったかのように龍華が今時の少女のような服を着ている。

 龍華らしくはないけれど、結構似合っていた。むしろ可愛らしくなった気がする。


「むぅ、これは動きにくいぞ完全」


「いいじゃない。可愛いわよ。貴女の特徴を伝えたら店員が勝手に見つくろってくれたのよ。それで我慢しなさい。あと金は後で徴収するわよ」


「なんとシビアな……」


 顰め面をする龍華。

 はーふぅっと息を整えフロシュエルに視線を向けた。


「そろそろ次の段階に進むべきだろうな。フロシュエル。明日からは場所を移動する。この近くにある塔に集合だ」


 塔? 首を捻りかけて思い出す。昨日の散策でそういえば塔を一つ発見していた。

 おそらく、その塔のことを言っているのだろう。


「で、でも、いきなり見知らぬ場所に集合なんて……」


「ちゃんと来れるかどうかも試験のうちだ」


「と、言ってるけど彼女も大概だからね。一応ピクシニーに塔の前に居てもらうよう伝えておくわ。私達は遅れるかもしれないから。主に龍華のせいで」


「だから私は方向音痴ではないと言っているだろう」


 憮然とした態度で苦言を告げる龍華だが、完全は完全に疑惑の目だ。

 それ程に龍華は信用されてないようだ。

 龍華は方向音痴。確信してもいいかもしれない。

 フロシュエルは仲間意識を感じてしまいにまーっと頬が緩むのを止められなかった。

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