八日目3
「さて、今日はこのくらいで終わるとするか」
「ありがとうございました」
プスプスと頭から煙が出ている気がする。
フロシュエルはなんとか頭を振って頬を張った。
本日の修行も終わりである。
かなり慣れて来たのかやり方も覚えて最初の時程の疲れは無い。
でも、内容の密度はかなり上がってしまっている。
そしてこれからも修行内容は過密になっていくのだ。
それもこれも皆フロシュエルのためだと思うと、フロシュエルも気合いが入るししっかり付いて行こうと思えるのだ。
龍華とピクシニーが去っていくのを見送り、フロシュエルはこれからの時間を考える。
選択肢C3:
→ 森の中で復習しよう。
今日は帰って源蔵さんのところに行く。
ふっふっふ。
当然ながら復習です。
私はまだまだ見習い天使ですから。
と、燃えるフロシュエルは森を掻きわけ奥まった場所へと向って行く。
しばらく叢を揺らしていると、ガサリと何かが揺れた。
慌てて立ち止まり身を低くする。
揺れは収まらない。
フロシュエル向って何かがやってくる。
ブエルさん? と思いはしたが、コボルトの例もあるので誰が出てきてもいいようにホーリーアローをいつでも放てる状態にして相手の出現を待つ。
叢を揺らし現れたのは……デブった二足歩行の豚だった。
なぜこんな人間世界に出現しているのか理解できなかったが、迷うことなく矢を打ち放つ。
こちらを獲物と判断した豚、むしろオークと呼ぶ魔物が殺意を持って近づいて来る。
そして打ち出された矢に突っ込み爆散した。
「じ、自爆……?」
彼が持っていたらしい大きめの手斧だけがその場に残った。
恐る恐るドロップアイテムへと近づき、近くに落ちていた木の枝でつんつんと突いてみる。
どうやら普通の斧らしい。
フロシュエルは斧を手に入れた!
重かったので斧を引きずりながら歩く。
また叢が揺れた。
斧をその場に放置してホーリーアローを番える。
現れたのはスライムだ。姿を見るなりホーリーアローを放つ。
相手はフロシュエルに気付くことなく光に飲まれて消え去った。
「よし、私でもこの辺りなら倒せるみたいですね」
それから五体ほどコボルト達が襲いかかって来た。
初見の敵が居なかったのでなんとか撃破できたっぽい。
ふふん。と思わず得意になる。
自分は魔物相手でも戦えるのだ。これなら戦闘力は天使として充分やっていける実力だろう。
にしても……
「なんだか魔物が沢山ですねぇ」
森の中は魔物が沢山いらっしゃった。
正直あり得ない量である。
今のところブエルの姿も見かけないので、森を探索しながら魔物を駆除していくことにしたフロシュエル。
魔物を倒せば倒す程、なんだか経験値のようなものが溜まっていく気がする。
「来ましたね! とりゃー!」
調子に乗って掌合わせて押し出す形でホーリーアローモドキを打ち出す。
かめなんとかは。とかいう発動方法を真似たのだけど、案外心地いい。
この技好きかも。と思いつつスライムを撃破し、コボルトとゴブリンを撃破する。
やがて、ぽっかりと空いたスペースが見えた。
茂みの奥から顔だけ出すと、妖しいフード姿の男が一人、本を片手にブツブツと呟いている。
彼の目の前には巨大な魔法陣。本に目を向けている男はどう見ても呪文を詠唱しているようにしか見えない。
意識を集中させて見てみると、あの書物、魔道書だと気付く。
「魔王様、バンザーイ!!」
悪魔崇拝者だ。
フロシュエルはゴクリを唾を飲み込む。
悪魔崇拝者はどうやら魔王召喚を行っているらしい。
そうか、と気付く。きっと彼がブエルを召喚したのだ。
それに、この森に溢れる魔物達もまた、彼に召喚されたのだろう。
なんとかしなきゃ。そう思うがフロシュエルの実力では彼を止めきれるかわからない。
龍華師匠に援軍を。
思った瞬間、魔法陣が光り輝く。
次の瞬間、魔法陣からせり上がるように現れるオーク。
「ちっ。オークかよ。魔王様じゃないなら邪魔だ。失せろ」
召喚されたオークが行動するより早く、フードの男はドロップキックでオークを蹴り飛ばす。
さらに結界を張ってオークが近寄れないようにすると、オークが諦め森の奥に消えるのを待って再び詠唱を始める。
時間経過だろう、結界が消え去った。
そして次の召喚者が現れる。
うん、アレはスライムだ。
スライムもお気に召さない男はスライムが嫌がる液体を吹きかけスライムが魔法陣から逃げ出すのを見送ると、次の召喚を始めていた。
フロシュエルは掌を見つめる。
自分でなんとかできるだろうか? でも、やらないよりは、やって後悔するべきだ。
けれど自分じゃどうにもならないかもしれない緊急事態、上司に伝えるのも天使の役目じゃないだろうか?
選択肢D:
悪魔崇拝者を倒す。
→ 龍華に報告に行く。




