六日目2
気付いたら……日曜日が過ぎていた orz
もう少し練習しよう。
そう思って森の中へと向かった。
公園脇の木々が生い茂った場所である。
子供の立ち入りを禁止する立て札はあったが、龍華と何度か踏み越えているので問題はないだろうと森の奥へと向かう。
龍華に教えられた通り、地形を把握し、地の利を考え、龍華ならどう動く、自分はどう動けばいい?
様々なシュミレーションを開始する。
自分が勝てるような都合のいいシュミレーションは考えた次の瞬間に弾き飛ばす。
今の実力で龍華に打ち勝つとか不可能なので、都合いい解釈はやるべきじゃない。
負けるのは分かってるけど善戦出来るようにシュミレートしていく。
頭がパンクしそうだ。
そういえば、あの漫画の中に光の技を放つ場面があったな。とフロシュエルは思い出す。
アレを自分の必殺にしてみようか?
でもまんまパクッたのでは小影がニヤつきながら何か言ってきそうだ。
なので、途中までは練習して、次第自分に使いやすい神聖技として新技にしてしまおうと思う。
「よし、このへんでいいですかね」
程良く公園から離れ、まず周囲に人影が無くなった場所。
ここならば神聖技を使っても誰も気付かないはずだ。
漫画の動きを思い出しながら腰を落として両手を合わせ、腰元へと持っていく。
「えっと、両手に魔力を集める感覚で、は~っで吐きだすように前方に押だす。ですよね」
まずは溜めこむ。
「か~め~」
よくよく考えて見れば声を出すのちょっと恥ずかしい気がする。
何しろあの漫画はかなりの人が見ているのだ、その技の名前を叫んでいる少女が言えれば思わずニヤつかれてしまうのだろう。
そんな想像をしてしまい思わず真っ赤になるフロシュエル。
あれ? これ飛んで行く光はホーリーアローを大きくしただけじゃ? 新技にしたかったフロシュエルだが、これではダメだと即座に気付く。
もっと、もっと自分に合った使いやすいスキルに昇華させないと
それでも目の前に木に向い、魔力を放出する。とりあえずまずは模倣でもやってみなければ次に進めない。そんな思いで撃ち放とうとした瞬間だった。
「うわ、だすの? だしちゃうの? かめはめだしちゃうの? うっは、てんしがまんがのまねとかわらえるー。やっばーい、はずかしー。あははははは」
女の子の声が聞こえて思わず恥ずかしさに魔力を霧散させていた。
咄嗟に周囲に視線を向けるが、声の主は見当たらない。
「ますたー、きてきて~。ここにはずかしいてんしさんがいますよーって、いまはぐれてたんだった」
また声が聞こえた。
注意して見てみると、直ぐ横の叢から顔を出しているピンクの髪を持つ小人が一匹。
その小人は翅を羽ばたかせると叢から飛び出し、フロシュエルの回りを飛び交う。
「はずかしー、はずかしー、てんしのくせにかめはめってるー、はっずかしぃー」
「や、やめてくださいっ、ちが、違うんです。私はっ!」
「えー、なにがちがうのー? まねしてたんでしょー、でるっておもったんでしょ。いまなら、わたしにもだせるかもしれないとか、おもっちゃったんでしょー。できるもんねー、てんしだからしんせいぎでできるもんねー?」
恥ずかしい。フロシュエルはニヤついた顔で飛びまわる妖精が語りかける程に羞恥心が大幅に膨れ上がり、耳まで真っ赤にしてその場にしゃがみ込む。
来るんじゃなかった。今日は源蔵さんの暴走見に行っとけばよかった。
顔を隠すようにして縮こまるフロシュエルに、妖精はさらに容赦なく顔を覗き込むようにニヤついた顔を近づけて来る。
「ねぇねぇしないの? ちゅーにびょーわざ、やっちゃわないのー? ふういんされしまがんがー、とかおれのみぎうでのあんこくりゅうのふういんをとかせてもらう。とかやらないのー?」
「やらない、やりませんっ! どっかいってください!」
「あははははは。いいのかなー、いいのかなー。わたしまものだよー? きゅうまだよー。てんしなのにあくまみのがしちゃうのかなー?」
その言葉で、気付く。
そうなのだ。彼女が言う通り、妖精は悪魔に類する存在だ。弱い存在だし、天使として討伐する必要も無い有象無象の存在ではあるが、天使からは悪魔の一種とされている。
討伐するかどうかは天使自身にゆだねられるが、倒す事を許されている存在でもある。
「て、てぇいっ!」
とっさに拳を振り抜き妖精を狙う。
が、即座に飛び上がった妖精はきゃはは。と笑いながらフロシュエルの直ぐ目の前を横切った。
「おっにさっんこっちらぁ~」
「ま、待ちなさい妖精さんっ。さっき侮辱したこと、許しませんよぉっ! ホーリーアローっ!」
「ぬっふっふ、あまーい。ラ・グ!」
「ぴぎゃぁ!?」
ホーリーアローを腕に為、光の弓を引き絞った瞬間だった。
全身を走る電撃で、神聖技はキャンセルされ、電気ショックで麻痺状態に陥るフロシュエルがそこに居た。




