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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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五日目4

「……え?」


 思わず龍華を見る。

 満足げに頷いている龍華がどうした? と首を捻る。

 もう一度目の前を見る。木は完全に消失している。

 どう見ても森林破壊だ。


 龍華を見る。こてんと首を傾げられた。

 どうやら彼女にとっては当然の出来事だったらしい。

 それでも、フロシュエルは信じられないようにえ? え? と木があった場所と龍華の顔を見比べていた。


「えええええええええええええええええええええええええええ!!?」


 フロシュエルの放った神聖技はホーリーアロー。天使が行う最下級神聖技である。

 自分が放ったホーリーアローの威力の違いに、思わず自分の手を見つめていた。

 ただ、魔力を多めに引き出しただけ。それだけで、ここまで威力が違っている。


 今までと殆ど変らない。ただ、わだかまった自分の中にあった何かを多めに引き出しただけだ。

 それだけで、フロシュエルの扱ったホーリーアローの威力は爆発的な上昇を見せた。


「魔力とは聖力というらしいな天使は。だが、私は以後も魔力と呼ばせて貰おう。で、だ。この魔力は寝ている間に回復することができるらしいのだが、無意識で周囲の魔力を取り入れ回復しているらしい。これを自力で行って貰う。つまり、常時魔力回復を行えるようになって貰うぞ」


「ええええええっ!?」


 無茶振りもいいところだ。

 フロシュエルにとっては雲の高みのように予想すら付かない。

 常時魔力回復。そんな事が出来るようになれば、なってしまったら、自分は見習い天使など即卒業である。高等技術をそんな簡単に使えるようになるとは想像できなかった。

 呆然としていると、龍華はさらに言葉を繋げる。


「あと、魔力は停滞させるよりも流した方が良い。全身にまんべんなく流れるように常に意識しておけ。慣れてくれば全身強化を教える。明日からは狂戦士兵法を叩き込む。それから……」


「ちょ、ちょっと待ってください、え? 私、今の、私がやったんですか!?」


 これからやることを告げてくれるのはいい。

 だがフロシュエルは未だ先程の衝撃で頭が一杯一杯だ。

 まずはあの威力が自分から引き出されたものか、その納得すらも出来ていないのだ。


「自分でやっておいて自分なのかとはどういうつもりだ? お前は痴呆だったのか?」


「違いますッ!?」


 痴呆などではなかったはずだ。

 フロシュエルは泣きそうになりながら叫ぶ。

 納得を、自分で納得が出来るまでちょっと待ってください。

 そんな思いを抱くフロシュエルだったが、龍華は気にせず告げた。


「さて、回復ももう一度やっておけ、それなりに動けるようになったら次に行くぞ」


「ま、まだやるんですか!?」


「当然だ。時間は有限、二ヶ月もないのだろう。詰め込むぞ」


「いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」


 その日フロシュエルは、少しだけ大人になった。そんな気がした。




「うぅ、鬼だ。鬼がいます……」


「バカを言うな。私程優しい教官は滅多にいないぞ。ただ優しいだけなら能力は伸びん。厳しいだけならそのうち折れる。部下を有能に鍛え上げるにはその者に合った育成方法を掴み取り、折れるギリギリのラインを見極めねばならんのだ。その点お前は折れるまでのラインが広いから多少の無茶が出来て教える方も楽だがな」


「ふえぇ。悪魔がいますよぉ小影さぁん」


「人を悪魔呼ばわりするな全く。今日覚えたことはしっかりと復習しておけ。こういうことは反復練習がモノを言う。息をするように自然と出来るまでは暇な時に何度も行うようにしておけ」


 確かに、龍華の教えは分かりやすかった。

 フロシュエルも素直に行ったからか、魔力の感知も周囲からの取り込みも、全身強化の神聖技をも身に付けた。

 それでも、キツイ。

 今の身体は無理矢理何度も回復を行って強制的に強化した状態だ。


 多分、回復魔法を行わなければ最初の方でダウンしていただろう。

 つい先ほどまで使えなかった回復魔法を覚えただけで、連闘も可能になったのだ。

 今回覚えた能力だけでも、おそらく青銅甲冑のステージは攻略可能だろう。


「フローシュ。一つ伝えておこう」


「なんですか?」


「私がいいというまでは、しばらく借金返済を行おうとするな」


「はえっ!?」


 折角やる気になっていたフロシュエルだったが、機先を制された形だった。


「徐々に攻略していくよりも私のカリキュラムを終えてから一気に行ってしまった方がいい。約束だ。できるか?」


「で、では、今日から小影さんの家とこことの往復だけって、ことですか?」


「不満か?」


「い、いえ。でも、不安です。借金返済しないといけないのに、大丈夫なのですか?」


「問題はない。私を信じろ」


 そう言って手を差し出して来る龍華。フロシュエルはそんな彼女を眩しいモノを見るように目を細め、嬉しそうに手を取った。


「はい。お願いしますっ」

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