表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
25/177

五日目1

 朝が来た。

 今日はちょっとアンニュイだ。

 フロシュエルは窓から差し込む朝日を眺める。


 天界には無かった地上の景色。

 見知らぬ場所なのにたった四日でなんだか居心地のいい世界に思えていたのだと気付いた。

 ただ、今の心境とは合致しない。


 綺麗な景色のはずなのに、どこかちぐはぐに思えてしまう。

 はぁっと息を吐きだし、頬を叩く。

 気合いを入れ直し、昨日見た本に視線を向けた。


「先生……バスケしたいです、かぁ」


 バスケット漫画。なんで小影さんの家にあるのか? と疑問を覚えるフロシュエルだが、不思議と様々なジャンルの漫画が揃っているので、一日一種類を目安に読んで行くことにしたのだ。

 今回のバスケネタはちょっとバスケがしたくなったフロシュエル。その技術で入手したいと思うスキルはなかった。ドリブルが出来ても悪魔は倒せないのだ。完全に読む漫画を間違えたのだが、内容は夢中に成る程だった。御蔭で目が痛い。そして空がまぶしい。

 夜遅くまで起きていたので身体の感覚がおかしい気もする。


「龍華さんの修行、明日からとかダメですかね……いえ、やると決めたんですから、今日行きましょう。うん。がんばるぞーっ!」


 朝食を取りに一階へと向う。

 丁度小影が学生鞄を片手に駆けていくのとすれ違う。


「あ、おはようございます小影さん」


「はよ~。じゃあ今日も頑張って~」


 気の無い返事を行いながら急いで靴を履き去っていく小影。

 どうも時間ぎりぎりらしい。いつもと違って急いでいるように思える。

 どうしたのでしょう? 疑問を浮かべて小首を傾げるフロシュエル。とりあえず小影の母が用意した食事を食べて家を出ることにした。


 本日も予定通りに小出さんの家へと向かう。結局何度鳴らしたところで小出さんが出て来ないのは分かり切ったことだった。

 仕方無いので現状、彼は放置してバロックさんのもとへ。

 まずは逃走経路を把握しよう。


 チャイムを押して即座にアパートの上へと退避する。

 走り出したバロックさんは今日は側面から後ろに向っているらしい。

 屋根伝いに飛行しながら彼の後を追う。

 人に見られると色々と問題になるので翼を使うのは最小限に。

 随分と走るバロックさんは右へ左へ、賽の目のように広がる街中を走り抜け、やがて……


「い、家に戻ってきた……」


 小一時間ぶっ通しで走り続けたバロックさんはアパート紅葉へと戻り、周囲を警戒しながら家へと入ってしまった。

 今まで逃走を追っていたのがバカらしくなるほどに、実はここで帰り待ってた方が捕まえやすくない? といった状況である。

 さすがにフロシュエルも呆れてしまう。


「こ、こんな事になっていたとは……なるほど、相手の行動把握というのは随分大切ですねぇ……」


 苦笑いしながら屋根から降りる。

 さぁ、明日こそはバロックさんを捕まえよう。

 そう決意して、フロシュエルはアパートを後にした。

 もう一度チャイムを鳴らす。などということは欠片すら思いつきもしなかった。


 井手口さんの家は相変わらずラストダンジョンのような雰囲気を醸し出している。

 なんの修行もしていない今の状態で挑むのは無謀という他ない。

 なのでピンポンダッシュで夫が出て来るのを期待して待つ。

 当然、出てきたのは奥さんだった。

 フロシュエルは物陰に隠れた。


 フロシュエルの隠れた辺りをうろつく悪鬼のような奥さん。十分ほどその場で周囲を見回し、ようやく家に帰って行った。

 フロシュエルが物影から出ようとした瞬間、再びドアを開いて来たので慌てて物影に再隠する。

 抜け目ない奥さんだったが、フロシュエルを見付けることはできなかったようだ。


 舌打ちを残して家の中に引っ込んでいく。

 心臓は気味が悪い程高なっていた。

 そのまま張り裂けて死ぬんじゃないだろうかと心配になる程に心音が高い。


 大きく息を吸って二度の深呼吸。

 心音が収まるまでその場から一歩も動かず落ち付くフロシュエル。

 やはりあの大魔神と闘う気にはなれそうになかった。


 一縷の望みを託し、龍華の待つ公園へと向かう。

 けれど、龍華に会う前にやらなきゃいけないことがある。

 会わなければならない人がいる。


 その人は、やはりいつものように噴水前のベンチに腰掛けていた。

 柔和な笑顔で菓子パンを千切り、地面を歩くハトへと投げている。

 ぽっぽクルッポ。

 独特の鳴き声を上げつつ奇妙に首を振りながら歩くハト。

 その姿は愛嬌のある平和の象徴のはずなのだが、フロシュエルにはなぜだか不気味に見えた。

 天界で習った魔王の姿に鳥型が多かったせいもあるのかもしれない。


 ともかく、目的の人物。田辺さんはフロシュエルに気付くと、おや。と表情をさらに崩した。

 気の良い友人に会うような嬉しそうな笑みに、ともすれば、昨日の事は夢か幻だったのでは? とフローシュに錯覚を起こさせる。


 しかし、それはない。と被りを振るい。甘えた考えを押しやる。

 さぁ、対面しよう。裏切った悪逆田辺さんに、五百円を返して貰うために。これが……試練だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ